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お店ラジオ 2022/09/28 2024/03/14

1軒のお店が街を変える。地域や地方のお店に活気を取り戻すために

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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。

今回のゲストは、一般社団法人エリアイノベーションアライアンス代表理事で、内閣府地域活性化伝道師である木下斉さんです。高校生のときから地方の街づくりに携わってきた木下さんの型破りな戦略を、豊富な事例と共にお届けします。

第1回は、立ち上げ期の木下さんの苦悩について、第2回はこれまで行ってきた地方の街づくりの事例と、それに関する洞察についてのお話でした。

最終回は、お店を出す前にできる準備や、特産品や道の駅など地方ビジネスへの意見についてご紹介します。

 

この記事の目次

  1. できる人を探すには面接ではなく、実際に商売をしてもらうしかない
  2. 予想外の大ヒット「オリーブオイル専門店」
  3. 簡単にお店を出すことはできない時代に原点回帰
  4. 特産品を仕入れて売るのはナンセンス
  5. 独自の技術・スキルを掛け合わせ、地域ビジネスを成功させる
  6. 道の駅が陥る補助金ビジネスというモデルの恐ろしさ
  7. 行政にうまく手伝ってもらうためには
  8. 行政よりも1軒のお店が街を変える

 

できる人を探すには面接ではなく、実際に商売をしてもらうしかない

地方でお店を出して失敗してしまうのは、お客さんを持っていないパターンです。だから、自分達の物件にどのようなお店を入れるかを考えるとき、ちゃんとお客さんを持ってくることができるかを判断するステップを踏みます。通り沿いや河川敷にマーケットを開き、そこで実際に商売をやってもらうのです。

すると結果は一目瞭然で、できる人は毎月固定客が増えていき、できない人は全く売上が増えません。マーケットをやって半年後、売上がうまく増えていないような人には、我々のプロジェクトではまだやらない方がいいですよ、というお話をします。

 

予想外の大ヒット「オリーブオイル専門店」

このやり方だと、こちらが「厳しいのではないか…」と判断してしまうような内容だけど実際には需要がある、というビジネスも取りこぼさずに済みます

特に度肝を抜かれたのは、会社員の方が持ち込んできたオリーブオイル専門店という企画です。ただでさえニッチなのに、さらに全く人気のない商店街でやりたいという話で、流石に難しいと考えていたのですが、これが予想外に大当たりしました。オリーブオイルのヘビーユーザーたちが聞きつけて、たくさん集まってきたのです。

「毎月別の国からオリーブオイルを仕入れるから、それまでに使い切ってくれ」というスタイルのお店だったこともあり、毎月お客さんが買いにきていました。1本3000円から4000円くらいするのですが、お客さんは平均して3,4本ほど買っていくので、10時から4時の間に40万円ほどの売上があるという大繁盛ぶりです。

ここまでのレベルなら、古いビルをリノベーションして、毎月5,6万の家賃を払いながら商売をやっていっても、難なく成立するわけです。今でも大繁盛で、すでに3店舗に拡大しています。

 

簡単にお店を出すことはできない時代に原点回帰

本来お店を出すことは、簡単にはできなかったんです。明治・昭和のころは丁稚奉公したり、路面販売をしてちょっと成功した人がようやく自分のお店を持つことができました。

高度経済成長時代、“何でも売れる”という時代になったため、その過程を飛ばして出店する人がたくさん登場しましたが、それはもう通用しません。そのため、いきなり店を出す前に事前に試すべきだ、というのは、ある意味、原点回帰しているのかもしれません。

 

特産品を仕入れて売るのはナンセンス

地方といえば特産品を売るというやり方がありますが、これも儲かっているお店には特徴があります。それは「垂直統合性がある」ということです。つまり仕入れた商品を売るのではなく、オリジナルの商品を自分達で作って販売しているのです。

なぜ仕入れた商品がダメのかというと、空港やホテルや駅、その辺のお店で売っているものが、たまたまそこで売られていても、「そこで買う必要性」を感じず、誰も買わないからです。

その点、オリジナルの製品なら「ここで買わないと、もう手に入らないかもしれない」と思わせることができます。旅行先では、そこまでにかけた交通費などのサンクコスト(取り返せないコスト)もあり、財布の紐は緩んでいるため多少割高でも買われやすいです。さらに自分達で製造していることで利益率も高くなります。

例えばリゾラテラス天草というリゾート施設では社長が元々お土産を開発する会社に勤めていた経験を活かして、ほとんどの商品がオリジナルとなっています。天草名物の海産物である海苔や、それを活かした炊き込みご飯の素など、突飛な商品を売っているわけでもないものの、ものすごく儲かっています。地元の素材を加工して付加価値をつけていく業態には多くの可能性が眠っていると思います。

 

独自の技術・スキルを掛け合わせ、地域ビジネスを成功させる

しかし、このような勝ち筋にのるお店をゼロから作っていくのは、簡単なことではありません。必要なのは、自分なりの何かしらのスキルを掛け合わせることです。誰でもできるものは、フランチャイズチェーンがすでに展開しています。そういうもの以外で勝負するとなると、小さい業態で特殊性を出さなくてはいけません。例えばデザインができるからパッケージングをやったり、食品製造の経験があるからそれをやってみたり、蕎麦が打てるなら蕎麦屋さんを山奥で出したりできるかもしれません。

自分なりの技術の核があれば、地方では不動産も安いし競合も緩いので、魅力も伝わりやすいと思います。逆に、自分なりの技術がないのになんとなく勝てそうだから、と安易に地方に来てしまうと悲惨なことになります。人手不足なので下請けのような仕事はたくさんあって生き延びることはできるのですが、自分の事業を成功させることはそこまで簡単ではありません。

 

道の駅が陥る補助金ビジネスというモデルの恐ろしさ

地方といえば道の駅なんかも有名です。実はあれはかなり特殊なビジネスモデルで、普通のお店とは違います。道の駅の建物は税金で建てられていて、そこで営業するときにお金を払う必要もありません。つまり家賃が全くかからないのです。委託金と言ってお金をもらって営業するパターンもあるほどです。

こんな状況で商品を売っているのですから、よほど絶望的な経営センスでなければ儲かると言っていいです。しかし、これは全く健全な状態ではありません。言うならば補助金ビジネスであり、かなり脆弱で再現性もありません。そして、そのうち補助金無しでは考えられない脳みそになってしまいます。

地元のジャガイモやほうれん草を売ることは全く構わないのですが、そこからの粗利を考えるとコンクリートの立派な建物を作ってもペイするはずがありません。このようなお金の掛け方をしなくてはジャガイモ1個売るお店さえ設計できなくなっているというのが、地方の経済が抱える絶望的な問題です。

こんな状態で「ジャガイモ1袋で100円なんてお得ですね」などと言っても、その値段は税金によって支えられていると言うことを消費者も意識するべきだと思います。

 

行政にうまく手伝ってもらうためには

行政との付き合い方として大事なのは「なるべく行政にはたらきかけない」ということです。向こうから来てもらうまで待つのです。役所の人たちは「勝ち馬に乗りたい」と思っているので、「助けてくださいよ〜」というスタンスの人には心を閉ざしてしまいます。

役所でもアクティブな人はすごくリサーチをしていて、こちらが補助金を貰わずによさそうなお店を2,3軒やっていればすぐにやってくるので、まずは自分の事業を伸ばすことに集中しましょう。

行政よりも1軒のお店が街を変える

お店とは「街を変える大きな力」です。実は行政が街を変えるような可能性よりも、1軒のお店が街を変える可能性の方がはるかに高いです。お店ができたことでその周辺がガラッと変わっていくことはたくさんあります。今では何かの組織に属して役割を果たして給料をもらう人が大半なので距離が遠いように感じると思いますが、1955年では7割が個人事業主とその家族でした。「なんとか屋さん」がいっぱいあったんです。

だからもっとお店は身近な存在であっていいと思いますし、お店をやっている人も「小さなお店だから…」「始めたばかりだから…」と考える必要はありません。お店がなくなると、街が変わる機運もなくなって、「住む場所としてどうか」くらいの見方しかなくなってしまいます。しかし、「街を変える」という視点もあっていいはずです。商売をやっている人たちはまた地元に戻ってくることも多いので、そういう人たちが核となって、街を変えていくのだと思います。

 

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執筆 真鍋 誠人

スマレジにて主にイベントマーケティング・コミュニティマーケティング・SNSマーケティング担当。スマレジユーザーのコミュニティ「アキナイラボ」の統括責任者をしており、店舗運営にまつわるヒント・コツを共有し相互発展していけるよう環境作りに日夜奮闘中。

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