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お店ラジオ 2022/06/29 2024/03/14

多くの飲食店のビジネスモデルはすでに崩壊?外食産業の理想的なビジネスモデルとは

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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。

今回のゲストは、大人気チェーンである大阪王将を中心に展開する株式会社イートアンドホールティングスの代表取締役CEOの文野直樹さんです。父から受け継いだ大阪王将をここまで拡大させてきた秘密はなんなのか。

「飲食店のビジネスモデルはすでに崩壊している」と断言するその真意とはなにか。これから飲食店を出す人に向けてのアドバイスやこれからの経営戦略まで、かなり掘り下げた内容をお届けします。

第一回は大阪王将の創業から現在に至るまでの経緯についてご紹介しました。
第二回は文野さんの経営戦略についてご紹介します。

この記事の目次

  1. 外食ブランドでポートフォリオを組み、安定性を上げた
  2. さらなる安定性と成長を求め、外食以外にも進出
  3. 繁華街の営業をやめたことによって見つけた「宝の山」とは
  4. コロナによって炙り出された固定観念
  5. 多くの飲食店のビジネスモデルは崩壊している
  6. 出店しなくても伸びるモデルを考えなくては成り立たない
  7. 単価を上げるためには「胃袋直撃型」のメニューを打ち出す
  8. 「大阪王将大学」での独自の職人育成方法とは

外食ブランドでポートフォリオを組み、安定性を上げた

僕が父の会社を継いでまず始めたのは、実は大阪王将の店舗を増やしていくことではなく、モスバーガーのフランチャイズに加盟することです。当時、外食産業の呪縛みたいなもので「店舗数を増やさなくてはいけない」という考えはあったのですが、同じようなお店を増やしても仕方がないな、と思っていました。

僕は外食ブランドでポートフォリオを組みたかったのです。若くてクリエイティブな経営者もどんどんと出てくるでしょうし、こちらも衰えていきます。そんな中一つのブランドに頼ることは、リスクが大きいです。今はうまくいっているブランドでも、時代の流れによって廃れていくものはたくさんありますし、何か事件が起きたら関連するブランドに打撃があるかもしれません。

だからたくさんのブランドを展開することによって安定性を上げていこうと考えました。寿司屋や焼肉屋、焼き鳥屋など、たくさんの種類のお店を作ることに僕は奔走し、実際これによって企業にも力がついていったなと感じています。

 

さらなる安定性と成長を求め、外食以外にも進出

しかし、これはかなり大変で、若いからできたことだと思っています。とても何十年も続けられることではないと考えた僕は、外食以外にもマーケットを開拓していこうと考えました。

そこで始めたのが工場で作った餃子を生協に卸すことです。やってみると、機械の投資にお金はかかるけど、外食産業の時のような従業員がたくさん増えることによるトラブルがないことに気がつき、メーカー的なやり方に魅力を感じるようになりました。中でも冷凍食品に勝ち筋があると思ったので、そちらの方向にも本格的に力を割いていくことにしました。

とはいえ、外食産業をおろそかにするわけではありません。両方に全力で取り組んでいくことで、どちらかの産業がダメージを受けたときでも安定して経営することができるのです。実際、今回のコロナで外食産業がピンチになっても、冷凍食品がすごく伸びたのでダメージは少なく済みました。僕らの場合はテイクアウトがメインのところが多いので、そもそも大した影響がない店舗も多かったんですけどね。

 

繁華街の営業をやめたことによって見つけた「宝の山」とは

しかし、繁華街にある店舗は全て凄まじい打撃を受けました。繁華街の家賃が高いのは「営業時間を長くできる」ということも根拠の一つだったりします。これがコロナで吹き飛んでしまったので、繁華街での営業はかなり厳しくなってしまいました。

これはマズいと思い、コロナが流行り出した次の月には全て撤収して住宅地に移したんです。すると、住宅地の店舗経営が宝の山だということに気がつきましたまず、家賃が150万や200万かかってたのが50万以下になるので、深夜営業をする必要がなくなります。さらに、テイクアウトの比率がすごく増えたのです。近所の住民がテイクアウトして家で食べるからです。従業員が健全な働き方をしつつ、坪あたりの利益がすごく高いという状況を実現できました。

 

コロナによって炙り出された固定観念

これには驚きました。僕は、池袋や新宿のように賑わっている場所にどんどん出店していくのが正しい姿だと馬鹿みたいに思い込んでいましたし、多くの外食業界の人もそうだと思います。

最寄駅も乗降客数が多いところばかりに目が向いていて、各停しかとまらないよく知らない駅は無視していました。しかし、東京ではお金を持っていて電車を使わない人も多いので、各停の駅でも十分に商売として成り立つんです。

聞いたこともないような駅にも出店できるとなると、あと200店舗くらい出店の余地があることも分かりました。コロナによって被害もありましたけど、新たな発見もあってよかったです。むしろ今では「繁華街では二度と営業しない」とまで考えています。もはや繁華街での営業にはかなり無理があります。

 

多くの飲食店のビジネスモデルは崩壊している

そもそも、飲食店のビジネスモデルって崩壊してきていたんです。コロナで顕在化しただけの話だと思っています。僕がお店を始めた当時は、どれだけずさんな経営をしても人件費と材料費を合わせて55%でした。それで家賃が5%程度とすると、最低でも20%は利益が出ていました。

これが飲食店が儲かる理由でした。だから店舗もたくさん増えていきました。しかし、この30年間、飲食店メニューの単価はほとんど上がっていないんです。300円くらいで普通に弁当が売っていたりします。牛丼チェーンの値段が限界ギリギリに張り付いているものだから、他の飲食店も値段を上げることができなかったんです。それでも材料費や家賃はどんどん上がっていきます。それなのに単価が上がらなければ、利益は次第に圧迫されていき、今では利益率は3%ほどです。

 

出店しなくても伸びるモデルを考えなくては成り立たない

ほとんど出ない利益をかき集めてでも、利益の絶対額を増やさなくてはいけないと、上場企業はこぞって出店をして来ました。「目指せ1000店舗」のような目標を掲げているところもたくさんあります。これにずっと違和感があったんです。

「出店が唯一の成長ドライバー(企業が成長する原動力)」というビジネスモデルは、もはや成り立っていないと思います。だから僕は、出店をしなくても伸びるようなモデルをひたすら考えてきました。例えば、一つの外食ブランドを「冷凍食品」「お惣菜」「ドライ商品」「中国」と四方向に活用することです。これは出店とは違ったアプローチになり、これを進めて現に大阪王将はあまり出店せずとも順調に経営ができています。

 

単価を上げるためには「胃袋直撃型」のメニューを打ち出す

とはいえ単価を上げる努力もしなくてはいけません。僕たちは「胃袋直撃型」と呼んでいるのですが、「よく分かんないけど食いたくなるな」というものを期間限定メニューなどで打ち出していっています。

例えば「肉だくルースチャーハン」と言われると、よく分からないけど食べたくなります。しずるワード(美味しそうに感じる言葉)をうまく入れ込むことや、ジャンルをミックスして相場をぼかすことがポイントです。

こうして大阪王将では単価が1200円くらいにすることができ、非常にいい経営になっています。期間限定を打ち出すと、普通はコストもかかって大変です。しかし大阪王将では店舗ごとに職人がいるんです。こういう状況なら多少凝ったことをやっても、むしろ職人たちのやる気が上がったりします。

 

「大阪王将大学」での独自の職人育成方法とは

この職人たちは、大阪王将大学というところで育成をしています。普通、フランチャイズでは技術をシンプルにして継承するということをしていきます。しかし僕らは、先ほど話したようなのれんチャイズ(のれんチャイズの説明は#1に)という仕組みを取っていて、大阪王将を出店したい人たちに対して、しっかりと職人を短期で育成するプログラムを組んでいるんです。

うちで働けば、和食以外は全てできるようになりますので、一生料理人として食べていくだけのスキルを身につけることができます。そこを魅力的に感じてくれる人はたくさんいると思います。飲食店が好きだ、という人は恐らくいなくならないですし、調理師学校にも人はいます。そのような人材を集める仕組みがしっかりとあるということです。これはうちの大きな特徴だと言えると思います。

 

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執筆 真鍋 誠人

スマレジにて主にイベントマーケティング・コミュニティマーケティング・SNSマーケティング担当。スマレジユーザーのコミュニティ「アキナイラボ」の統括責任者をしており、店舗運営にまつわるヒント・コツを共有し相互発展していけるよう環境作りに日夜奮闘中。

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