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お店ラジオ 2025/08/22 2025/08/22

自分たちの手で未来をつくる


about

「お店ラジオ2」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFM・FM大阪で毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ2」で放送された内容を再編集したものです。

今回のゲストは、四季を通じて楽しめる滋賀県「グランスノー奥伊吹」を運営する奥伊吹観光株式会社の代表取締役 草野丈太さんです。天候に左右されないスキー場を目指し、設備投資や新たな事業展開に挑戦。リゾート価格の見直しや年間を通じた集客、そして再生可能エネルギーの活用など、独自の経営戦略についてお話を伺います。

冬は「グランスノー奥伊吹」として関西最大級のスキー場を、夏はアクティビティ豊かなグリーンパークやグランピング施設として展開。倒産危機を乗り越え、気候変動や経営課題に挑みながら、“天候に左右されないスキー場”と“持続可能な観光地”の実現に挑む奥伊吹観光株式会社の歩みと、地域・社員とともに描く未来への取り組みについて、3回に分けてお送りします。

 

第1回は、スキー場経営の原点と再建への挑戦、人工造雪機の導入など天候に左右されない体制づくりについてお送りします。

第2回は、自分で動く大切さやお客さん目線での改善、好きで繋ぐ採用とミッションとバリューについてお送りしました。

第3回は、再生可能エネルギー活用や持続可能な観光地づくり、ミッション・ビジョンを軸とした未来への挑戦についてお送りします。

 

この記事の目次

会社にミッションやバリューは必要か?

「会社にミッションやバリューは本当に必要なのか?」と考え始めたのは、コロナ禍の少し前のことでした。ある日ふと、「私たちは何のためにこの事業を続けているのだろう」と、自問するようになったのがきっかけです。

SDGsの目標年である2030年は、スキー場経営の視点から見ると、あまりにも短く感じられます。導入する設備は基本的に30~40年使い続けることを前提としており、温暖化などの課題にも1~2年で結果を求めるのは現実的ではありません。

もっと長期的な視点が必要だと感じていた中で、自然と「2070年」という年が浮かびました。この年を目標として掲げ、地域とともに未来を築いていこうという思いから、ミッション・ビジョン・バリューの策定に取り組み始めました。

従業員一人ひとりにはそれぞれの想いや価値観がありますが、会社としての方針を明確にすることで、共有や意思疎通がしやすくなり、少しずつではありますが、組織としての軸が定まりつつあるという手応えも感じています。

人が増えれば、価値観の違いが生まれるのは当然のことです。だからこそ、会社としての「軸」がぶれないことが、これからの組織づくりにおいて何よりも重要だと強く実感しています。

 

自分たちの手で未来のエネルギーを

スキー場の運営に加えて、「小水力発電」にも取り組んでいます。場内の両側に川が流れており、「この水で電気をつくれないか」と考えていたところ、関西電力さんとのご縁があり、思いが一致。合同会社を設立し、共同で水力発電のプロジェクトが動き出しました。

本格的に動き出したのは2019年ですが、翌年にはコロナ禍が直撃し、観光業全体が一時停止しました。当時のスタッフは30人ほど。私は「このまま立ち止まっていても仕方がない」と考え、「みんなで発電所をつくろう」と声をかけました。

測量からコンクリート打ちまで、すべて自分たちの手で行い、毎日少しずつ作業を進めました。その結果、コロナが明ける頃には2つの発電所が完成し、自分たちの手で未来をつくったという実感を得ることができました。

このプロジェクトは、関西電力さんとの合同会社を通じて進めており、数億円を投資し、回収までに10年以上を見込んでいます。ただ、私たちの目的は短期的な収益ではありません。あくまで長期的な視点に立って、この取り組みを進めています。

もちろん、社員30〜40人の小さな会社にできることには限りがあります。それでも、本気で取り組めばゼロエミッションは実現できる。その姿勢が誰かの背中を押すきっかけになれば、この発電所の取り組みには大きな意味があると信じています。

 

スキー場だからこそできる再エネ活用

水力発電は、他のスキー場でも十分に可能性があると考えています。発電は「水量」と「高低差」の掛け合わせで成り立っており、水の流れが少なくても高低差があれば成り立ちますし、その逆でも同様です。

スキー場はもともと傾斜地にあり、積雪地域であれば春先の雪解け水も活用できます。こうした自然条件を活かせば、全国各地に適した場所はまだまだ多く存在すると考えています。

さらに、小水力発電は収益性も見込めます。海外のお客様は環境意識が高く、再生可能エネルギーで運営されているスキー場は大きな魅力になります。そのため、私たちがビジネスとして展開するよりも、それぞれのスキー場が主体となって取り組むことが、最も良い形だと考えています。

私たちのスキー場は、世界で初めて再生可能エネルギー100%で運営されるスキー場となりました。現在、スキー場には2つの小水力発電所が稼働しており、グランピング施設を含むすべての電力をこの発電所だけでまかなっています。これは地域の未来に貢献したいという私たちの理念を象徴する取り組みになっています。

 

“移動”まで含めた持続可能なスキー場へ

構想段階から、「発電量」や「収益性」、「CO₂削減量」などの数値を丁寧に検証してきました。その過程で、スキー場の電力消費だけでなく、お客様の移動による排出量までカバーできるのではないかと考えるようになりました。

実際に試算してみたところ、施設内での電力消費よりも、お客様が車で来場される際のCO₂排出量の方がはるかに多いことが分かりました。そこで「バス無料の日」を設け、新幹線や電車と連携した無料シャトルバスの仕組みを導入。公共交通機関の利用を促すことで、移動に伴うCO₂排出量を約6分の1にまで削減できるようになりました。

今年は試験的に「バス無料の日」を年間17回実施し、少しでも多くの方に公共交通を選んでもらえるよう取り組んでいます。「スキー場=車で行くもの」という固定観念を見直していただくことも、私たちの大切な使命の一つです。

再生可能エネルギーによる運営だけでなく、移動も含めて環境負荷を最小限に抑える“持続可能なスキー場”の実現。それこそが、今まさに私たちが取り組んでいる挑戦です。

 

誰もが気軽に訪れやすいスキー場へ

車でスキー場に来られる理由の一つに、「荷物の多さ」があります。ただ近年では、スキー板やスノーボードを現地でレンタルするスタイルが一般化してきました。街遊びの服装のままスキー場に到着し、その場で装備を整える若い世代も増えています。

また、若年層の中には車の免許を持たない方も多く、公共交通機関で気軽にアクセスできる環境を整えることは、レジャー施設にとって非常に重要な要素だと考えています。

そうした背景を踏まえ、今年はレンタルハウスの建て替えを計画しています。衛生面や使い勝手にも配慮し、より快適な利用環境を整えることで、お子さまや女性、初心者などの“エントリー層”にも安心して楽しんでいただけるスキー場を目指していきます。

 

“雪が降らない”苦しみ

2011年に代表を引き継いで以来、最も苦しかったのは、やはり雪が降らない時期でした。気温が下がらなければ、人工降雪機があっても雪を作ることができません。年末年始に営業できないとなれば、その時点で損益分岐点を下回ることが、ほぼ確定してしまうのです。

実際に、年末年始に雪マークが出ず、気温も下がらない日が続いた年がありました。一方で、人事担当からは「そろそろアルバイトを呼ばないと、他に行ってしまいます」と言われ、迷いながらもアルバイトを雇用する決断をしました。ところが結果的に、その年の年末年始は一日も営業できずに終わったのです。

私自身も夜通し人工雪を作り続けましたが、営業できる状態には至らず、ただただ苦しい時間を過ごすばかりでした。特に記憶に残っているのは、2020年のシーズンです。コロナ禍直前の冬で、オープンは1月7日という異例の遅さでした。「暖冬でしたね」では済まされない、本当に“雪が降らなかった年”だったのです。

 

“グランスノー奥伊吹”は次のステージへ

厳しい状況の中でも、自分で人工降雪機を動かしていたことが、ある意味で「気晴らし」になっていました。収入がない中でも、「この方法に賭けてみよう」と思える対象があったことは、精神的に大きな支えになっていたと思います。もしそれがなければ、もっと追い込まれていたかもしれません。

ただ神頼みで天候を待つしかないという状況は、精神的にも非常に厳しいものがあります。だからこそ、現実的な“解決策”を自分たちの手で持つことの大切さを、身をもって実感しました。

そうした経験を踏まえ、現在では「人工造雪機」という新型設備を多数導入しています。その結果、昨シーズンは11月22日に営業を開始し、最終日は4月13日。過去最長の営業期間を実現することができました。

気温が高くても安定して営業できる環境が整い、お客様に安心して楽しんでいただける体制が築けてきたことは、私たちにとって大きな前進です。そして今、ようやく“次のステージ”へ進む準備が整ってきたと感じています。

今後は、設備投資を行っているスキー場と、そうでないスキー場との間で、その差がますます明確になっていくはずです。実際、すでにその差は広がりつつあると感じています。

執筆 アキナイラボ 編集部

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