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今回のゲストは、1992年に八百屋「アキダイ」を23歳で創業し、仕入れと販売にこだわる現場主義で店舗を増やし、現在は、ロピアグループの一員として活躍、“生鮮の目利き”としても注目される株式会社アキダイ 代表 秋葉弘道さんです。
八百屋「アキダイ」を創業した経緯、仕入れ・販売への徹底したこだわりと現場主義によって顧客の信頼を獲得し、店舗拡大のプロセス、そして“ファンがつく八百屋”としての販売哲学と仕入れの目利き力について、3回に分けてお送りします。
第1回は、「アキダイ」創業の背景や店名に込めた想い、開業当初の苦悩と転機などについてお送りします。
第2回は、多店舗展開の葛藤や商品の魅力を伝える大切さ、出店で重視する閃きなどについてお送りします。
この記事の目次
多店舗展開の壁と人間関係の葛藤
一店舗目の売上が徐々に伸びたことで、二店舗目を出店することになりました。私自身はその二店舗目の運営に入ることになりましたが、それをきっかけに、一店舗目で一緒に働いていた仲間との間に、少しずつ距離が生まれてしまいました。会話の機会が減り、意思の疎通もうまくいかなくなっていったのです。
三店舗目、四店舗目と展開が進む中で、お店のスタッフが「自分はちゃんと見てもらえているのか」といった不安を感じていたことに、私は少し遅れて気づきました。
私自身にも、反省すべき点がありました。会える時間が限られていたとはいえ、「ありがとう」「助かったよ」といった感謝の言葉を、きちんと伝えられていなかったのです。
商売の根底にあるのは、“人と人との関係”です。今振り返ると、本当に苦しかったのは、売上や業績のこと以上に、人間関係だったのかもしれません。
規模が大きくなるほど増すプレッシャー
八百屋というと、「お客さんがつけば安定する」と思われがちですが、実際はそう簡単ではありません。事業規模が大きくなればなるほど、リスクも大きくなります。
私たちは野菜だけでなく、食料品全般を扱っています。どんなに苦しい時期でも年商は約12億円。お金の動きが大きい分、在庫の規模も大きくなり、その分リスクも増します。
売上が伸びるのは喜ばしいことですが、在庫管理や人件費、仕入れの判断など、少しのミスが大きな損失に直結してしまうのです。
いくら良いものを仕入れても、「売る力」がなければ意味がありません。そして「売る」とは、単に安く提供することではないのです。
たとえば、質の良い野菜を安く仕入れて売ったとしても、それだけでは「安く売る人」に過ぎません。大切なのは、「なぜ安く売れるのか」「その商品にどんな価値があるのか」をきちんと伝えること。利益をきちんと乗せた上で、「この品質なら安い」とお客様に納得してもらうことが重要なのです。
しっかりと価値を伝え、納得して買ってもらうこと。そして、お客様にファンになっていただくことが、商売を長く続けるための最大の秘訣だと、私は考えています。
商品の魅力を伝えることの大切さ
たとえば「今日はブロッコリーを売ろう」と決めても、お客様の数が急に増えるわけではありません。だからこそ、来店されたお客様のうち、どれだけの方に買っていただけるかが勝負になります。たとえ1,500人の来店があっても、2,000個売るのは簡単ではありません。私たちの業界では、10人に1人が買ってくれれば「大当たり」と言える水準なのです。
そして、「売れた」ではなく「売った」と実感できるのは、「今日はこれ、お得ですよ」と声をかけ、お客様が「じゃあ買おうかな」と反応してくれたときです。2個まとめて買ってくださる方もいて、そんなときは「ありがとうございます、2個ですね!」と声をかけます。すると、その場にいる他のお客様にも「これは買い時かも」と伝わります。
この流れが生まれると、「今買わなきゃ損」と感じたお客様が急ぎ出し、スタッフも「追加取ってきます!」と走り出します。そうやって現場が一体となって動く光景を見るたび、「売る」ことは現場の力の結集なのだと実感します。
青果は工業製品とは異なり、実際に食べてみなければ本当の良さはわかりません。だからこそ、「商品の魅力」や「食べたときの体験」をどう伝えるかが、何より大切なのです。

値上げの見極めと生鮮品の背景
現在、物価高の影響で多くの品目が値上がりしていますが、いつ落ち着くかは見通しにくく、「どこで値上げを判断するか」は難しい問題です。
生鮮品を扱う私たちにとっては価格変動が非常に分かりやすく、テレビ局などから取材を受ける機会も多くあります。「なぜ高騰したのか?」といった質問には、私が産地の状況を説明します。
私のもとには、生産者や市場の売り子さんから毎日のように現場の情報が届きます。それを正しく消費者に伝えることが、自分の役割だと考えています。
たとえば、雹や病害で被害を受けた作物について、生産者は泣き寝入りするしかないのが現実です。そうした「声にならない声」を代弁することが、私たちの役割です。
「この地域では雹の影響で傷がついているが、味には問題ない」と説明し、理解していただくことで、そうした“訳あり商品”が、むしろ消費者の共感を呼び、人気につながることもあります。
気象と価格変動の関係
近年は「ウェザーニュース」などでも毎月「野菜予報」が発表されるようになり、天候が価格に与える影響が注目されています。
たとえば、最近のキャベツの高騰は、多くの方が実感されたと思いますが、その主な原因は天候不順でした。年末から1月にかけて約40日間、雨が一度も降らないという異常気象が続き、冬としては歴史的にも非常に珍しい状況でした。
野菜の価格や供給は、品目によって予測のしやすさが異なります。たとえば、施設栽培の野菜や「かいわれ大根」「もやし」などは、栽培環境が一定しているため予測しやすく、価格変動も小さい傾向があります。
また、関東が主産地の作物も予測がしやすいといえます。私自身が関東にいることで、気温や天候の変化を体感できるのは大きな強みです。
こうした現場感覚に基づいた情報を伝えられることが、多くのメディアから取材を受ける理由だと感じています。
重視するのは“閃き“
私たちのような小型店が成り立つためには、まず「人がいること」が前提です。人口が少ないエリアでは、どれだけ工夫しても厳しいのが現実です。特に私たちのような業態では「日常に入り込む」ことが不可欠で、大型スーパーのように「週1回のまとめ買い」ではなく、私たちは「日々通ってもらう場所」を目指しています。
たとえば、大型店では買い物に30分かかるところを、私たちの店なら5分で済みます。しかもその5分で、“中身のある買い物”ができる。これこそが小型店の強みです。気軽に立ち寄れて、すぐに必要なものが手に入る。それが、日常に根づくための大きなポイントです。
もちろん、人がいるだけではなく、ニーズがあるかどうか、競合状況はどうかも重要です。すでに繁盛している強い店があれば、無理に出店すれば共倒れになるリスクもあります。
とはいえ、最終的に私が最も重視するのは「閃き」です。実際に現地を歩き、直感的に「ここだ」と思えるかどうか。理屈ではなく、感覚的に「ここでやりたい」と思えた場所は、たいてい良い結果につながっています。
出店の決め手は「感覚」と「現場の声」
出店を考える際にまず大切なのは、「ここでやりたい」と思える直感ですが、感覚だけで判断するのではなく、その裏付けとして商圏調査も行います。周辺の人に「どこで買い物をしているか」「おすすめの店はどこか」といった声を聞いていくと、地域の買い物動線が見えてきます。
A店、B店、C店と競合が明らかになってきたら、実際に現地へ足を運び、自分の目で各店舗を確認します。そして、自分の店がこの立地にあった場合、どれくらいの集客が見込めるかを想像します。条件が良くても、家賃が高ければ利益は出ません。そこで、「この家賃なら何人来れば採算が合うか」を試算します。
とはいえ、すべてが思い通りにいくわけではありません。スタッフに任せた店舗がうまくいかず、結果として撤退したケースもありました。それでも、最終判断の軸は常に「青果で勝てるかどうか」です。青果で負けた時点で、その勝負は終わっているのです。
第2回は、多店舗展開の葛藤や商品の魅力を伝える大切さ、出店で重視する閃きなどについてお送りしました。
第3回は、八百屋は商売の基本やロピアとの連携、PB開発への挑戦、そして“人と人との商売”の未来についてお送りします。






