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「お店ラジオ2」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFM・FM大阪で毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ2」で放送された内容を再編集したものです。
今回のゲストは、四季を通じて楽しめる滋賀県「グランスノー奥伊吹」を運営する奥伊吹観光株式会社の代表取締役 草野丈太さんです。天候に左右されないスキー場を目指し、設備投資や新たな事業展開に挑戦。リゾート価格の見直しや年間を通じた集客、そして再生可能エネルギーの活用など、独自の経営戦略についてお話を伺います。
冬は「グランスノー奥伊吹」として関西最大級のスキー場を、夏はアクティビティ豊かなグリーンパークやグランピング施設として展開。倒産危機を乗り越え、気候変動や経営課題に挑みながら、“天候に左右されないスキー場”と“持続可能な観光地”の実現に挑む奥伊吹観光株式会社の歩みと、地域・社員とともに描く未来への取り組みについて、3回に分けてお送りします。
第1回は、スキー場経営の原点と再建への挑戦、人工造雪機の導入など天候に左右されない体制づくりについてお送りします。
この記事の目次
四季を通じて楽しめる「グランスノー奥伊吹」
私たち奥伊吹観光株式会社は、滋賀県米原市で、四季を通じて楽しめる多彩なレジャー施設を運営しています。冬は「グランスノー奥伊吹」として、関西最大級の規模を誇るスキー場を展開し、豊富な積雪と多彩なコースで、多くのスキーヤーやスノーボーダーの方々にご来場いただいています。
また、スキー場だけでなく、グランピング施設やキャンプ場、道の駅などを運営しており、家族連れを中心に幅広い層のお客様に自然の中でのアクティビティを楽しんでいただける環境を整えています。また、水力発電も行っており、国内初となる使用電力の実質自給化を行っています。
その中で、スキー場はシーズン来場者数が25万人を超え、国内のスキー場でもトップ10に入る規模となりました。スキー場の立地は、滋賀県と岐阜県の県境付近に位置しており、京都からはおよそ1時間20分、名古屋市内からも1時間程度と、アクセスの良さも大きな強みの一つです。
天候に左右されないスキー場へ
奥伊吹スキー場は、1970年に祖父が開業しました。私は幼い頃からスキー場を身近に感じ、“スキー場の子”として育ちました。
しかし経営は決して安定していたわけではありません。雪の少ない年には何度も倒産の危機に直面しました。当時は天候に頼るしかなく、子どもの頃は神棚や仏壇の前で「雪が降りますように」と願っていたのを覚えています。私は、大学卒業後に一度一般企業へ就職しましたが、家業を継ぐ決意を固めました。
家業を継いでからは、安定営業のため人工降雪機の導入に踏み切りました。従来の人工降雪機は、気温がマイナス2度以下でなければ稼働できませんでしたが、先シーズン導入した最新型の人工造雪機は、冷凍庫で氷を削る方式のため、気温30度でも雪を作れます。世界でも最大級の設備です。
この設備は1台あたり1~2億円と高額で、昨シーズンは8台を導入。配管や電源設備を含めて約2,500万円が必要で、最終的には、スキー場全体をカバーするために総額10億円規模の設備投資を行いました。
終わらせない覚悟
スキー場の運営には、大規模な設備投資が欠かせませんが、これまで踏み切れなかったのは、財務面の制約が大きな理由でした。
私が代表に就任した2011年当時、個人の連帯保証債務は約14.5億円。年商は4〜5億円程度で、業績も年間マイナス5,000万円からプラス1億円の間を上下する不安定な状況でした。
それでも事業を継ぐ決断をしたのは、地域からスキー場がなくなれば、周辺産業自体が消えてしまうという強い危機感があったからです。私は、「たとえうまくいかなくても、終わらせ方は自分で決める」と腹を括って家業に戻りました。
そして、父とともに経営に取り組む中で、数字を正しく把握し、マネジメントを徹底すれば、再生は十分可能だと実感するようになりました。
まず手をつけたのは、雪不足による不安定な収支構造の改善です。数年に一度の億単位の赤字を回避するため、人工降雪機の導入を進めました。同時に、スキー・スノーボードというレジャーの価値そのものを高めるため、レストランやトイレ、パウダールームなどの施設も整備しました。
リゾート価格を見直す挑戦
レストランについては、店舗ごとに明確なターゲットを設定し、それに合わせたデザインやメニュー構成にしました。
たとえば、昔はスキー場で1,000円以上もするのに「二度と食べたくない」ようなカレーが出てくることもありました。当時は観光地だから高くて当然という空気があり、そうした運営が多かったように思います。
しかし、私たちはそうした考え方を見直し、「リゾート価格の撤廃」を掲げました。たとえば、カレーライスは800円、カツカレーは1,100円に設定し、この価格帯を維持しています。自動販売機のジュースも、缶飲料はすべて100円です。それも、スキー場を楽しんでいただきたいという想いからです。
食事や飲み物などの付帯サービスについては、過度な利益を求めず、「また来たい」と思っていただける価格設定を大切にしています。
ただし、リフト料金については別です。リフトはお客様を安全に運ぶ輸送装置であり、適切な安全対策やメンテナンスへの投資が欠かせません。そのため、ここでは適正な対価をいただいています。
繁閑の差を乗り越える仕組みづくり
観光地型ビジネスには、繁忙期と閑散期の差が大きいという課題があり、繁忙期に十分な収益を確保できなければ、閑散期の運営が厳しくなります。
そのため、繁忙期である冬の売上をさらに伸ばす工夫が求められる一方で、私たちは年間を通じて安定した経営ができるよう、夏の事業にも力を入れてきました。現在では、冬のスキーシーズンだけでも十分な収益を確保できる体制が整いつつありますが、並行して夏の事業でも新たな収益の柱を育てています。
たとえば、2017年にはグランピング施設を開設しました。また、琵琶湖の景観を楽しめるリフトを整備し、冬に使われる山の資源を、夏の観光資源として活用する工夫を進めています。
こうした取り組みにより、年間を通じた雇用の確保が可能となり、繁閑差の平準化が少しずつ実現しています。
さらに、夏場は使われていなかった約2,800台収容のスキー場駐車場も、「モーターパーク」として活用し、ドリフトやジムカーナなどの競技イベントを開催するなど、夏の新たな集客コンテンツになっています。
弱みを強みに変えた「モーターパーク」
モーターパークが生まれたのは、ある偶然からでした。
かつてスキー場の駐車場には、夜中に集まって無断でドリフト走行をする人たちを、父や祖父が重機で追い払うこともありました。私は当時、彼らに対して“やんちゃな人たち”という印象だけを持っていました。
ある日、友人から「その人たちが『お金を払ってでも走りたい』と言っていた」と聞き、試しに「1日5万円でどうですか?」と提案したところ、予想以上の反響があり、モーターパークがスタートすることになりました。
それが現在では年間5,000万円を超える利益を生む事業に成長。原価率はわずか1%で、非常に収益性が高いビジネスとなりました。
スキー場周辺は温泉地などの観光資源がないことが弱みだったのですが、逆に周囲に温泉地や民家がないことが、騒音を気にせず運営できるという強み変わりました。今ではスキー場と並ぶ中核事業となっており、弱みを強みに変えられた成功例だと思います。
自分がやりたくないことを手放す
私は毎年2〜3件の新規事業を立ち上げていますが、その際は「自分がやりたくないことを手放す」という逆方向の発想を大切にしています。
以前、行政所有のゴルフ場を預かって運営していました。しかし、私はゴルフが得意ではなく、主催大会で丸一日拘束されるのが大変で、やがて「やめるにはどうすればいいか」と考えるようになりました。
あるとき、敷地内の池を見て「カヌーを浮かべたらどうだろう」と思い立ち、試してみると非常に楽しかったのです。帰宅後にカヌー30艇を貸し出す収益を試算すると、ゴルフ場の利益と大差ないことがわかりました。そこからバーベキュー場、テント設営と構想が広がり、最終的にたどり着いたのが“グランピング”でした。
今では、年間売上1,200万円だったショートコースのゴルフ場が、年商3.5億円のグランピング施設へと生まれ変わっています。

“数分”にこだわる工夫
新たな取り組みを始める際、借入や設備投資が重なる中で、資金や人手の不足は大きな課題でした。
人工降雪機の導入は経営安定に直結すると評価され、条件付きで融資を受けることができましたが、それ以外では自分たちで費用をかけずに作業する必要がありました。
その一つが、アクセス時間の見直しです。NEXCOの情報を参考に、最寄りインターからの実走時間を再計測し、ホームページやパンフレットに記載するなどして、所要時間の表示を見直しました。それにより、「3分短縮」といった細かな調整を積み重ねました。
都市近郊型のスキー場では、この“数分の短縮”が大きな意味を持ちます。たとえば「名古屋高速・一宮ICから55分」と表記すれば、「1時間を切るアクセス」という印象を与えることができ、都市部のお客様にとっての来場ハードルがぐっと下がるのです。
第1回は、スキー場経営の原点と再建への挑戦、人工造雪機の導入など天候に左右されない体制づくりについてお送りしました。
第2回は、自分で動く大切さやお客さん目線での改善、好きで繋ぐ採用とミッションとバリューについてお送りします。






