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お店ラジオ 2025/08/22 2025/08/22

自分で動けば現場の解像度が上がる


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「お店ラジオ2」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFM・FM大阪で毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ2」で放送された内容を再編集したものです。

今回のゲストは、四季を通じて楽しめる滋賀県「グランスノー奥伊吹」を運営する奥伊吹観光株式会社の代表取締役 草野丈太さんです。天候に左右されないスキー場を目指し、設備投資や新たな事業展開に挑戦。リゾート価格の見直しや年間を通じた集客、そして再生可能エネルギーの活用など、独自の経営戦略についてお話を伺います。

冬は「グランスノー奥伊吹」として関西最大級のスキー場を、夏はアクティビティ豊かなグリーンパークやグランピング施設として展開。倒産危機を乗り越え、気候変動や経営課題に挑みながら、“天候に左右されないスキー場”と“持続可能な観光地”の実現に挑む奥伊吹観光株式会社の歩みと、地域・社員とともに描く未来への取り組みについて、3回に分けてお送りします。

第1回は、スキー場経営の原点と再建への挑戦、人工造雪機の導入など天候に左右されない体制づくりについてお送りしました。

第2回は、自分で動く大切さやお客さん目線での改善、好きで繋ぐ採用とミッションとバリューについてお送りします。

 

この記事の目次

“奥伊吹”から“グランスノー奥伊吹”へ

道路の整備やGoogleマップの活用により、以前よりも到着時間が10〜20%短縮されるようになりました。こうした変化に合わせ、アクセス情報を見直すことで、低コストで効果的な改善が可能になります。

2011年に約14億円あった負債がありましたが、地道な改善の積み重ねにより、2017年には無借金経営にまで回復させることができ、人工降雪機や夏季施設への億単位の設備投資を継続できるようになりました。

しかし、いくら施設を刷新しても、「奥伊吹スキー場? もう何十年も行ってないな」といった声が多く、変化が伝わっていない現実がありました。

名前が変わらない限り、過去の印象が残り続ける。そう感じ、「グランスノー奥伊吹」への名称変更を決断しました。「業績が好調な時に名前を変えるのは珍しい」といった助言もありましたが、覚悟を持って実行に踏み切りました。

名称変更後は、若年層の来場が増加した一方で、従来からのお客様にも親しみを持って受け入れていただいており、“新しさ”と“なじみ”がうまく両立できていると実感しています。

 

自分で動くことで高まる現場での解像度

施設づくりでは、まず「どんな空間にしたいか」を明確に描き、そこから逆算して必要なサービスを考えます。そして、妥協せず、現場に想いを伝えることで、理想の形に近づける。それが、私のものづくりの基本です。

新たな事業を始める際には、まず自分が現場に立つようにしています。「自前主義」が常に最善とは限りませんが、自ら動くことで現場の解像度が格段に高まります。たとえば測量なども、最初から外注してしまうと、後になって「この事業は続けにくい」と感じても、すでに1,000万円規模の投資が動いている場合、簡単には撤退できなくなってしまいます。

一方で、自分で測量から始めていれば、「これはやめておこう」と冷静に判断することができます。だからこそ、「まずは自分でやってみる」姿勢を大切にしています。「最初から完璧を目指さなくていい。うまくいかなければやめればいい」という前提があることで、社員も新しい挑戦に取り組みやすくなります。

観光やレジャー施設では、常に“非日常”の体験が求められます。そのため、施設のリニューアルや新しいサービスの導入など、小さな挑戦を積み重ねていくことが欠かせないと感じています。

 

“日本最速リフト”導入の決断

ある日、4人乗りの低速リフトについて、「1本乗る間に8回も止まった」とお客様がSNSに投稿されているのを目にしました。原因は、乗り降りの難しさにありました。私は「これだけ多くのお客様に利用されているのであれば、他の設備投資は後回しにしてでも、このリフトの改善に全力を注ごう」と決意し、さっそく業者に見積もりを依頼しました。

私は「見積額の一桁目が“3”なら実行、“4”なら断念しよう」と自分なりの基準を設けていました。ところが、実際に届いた見積もりは“5”。正直なところ、大きな落胆を覚えました。

それでも「やるなら中途半端ではなく、日本最速レベルに」と気持ちを切り替え、最終的に見積額以上の投資を決断しました。それにより、かつて日本で最も遅かったリフトは、日本最速の高速リフトに生まれ変わったのです。

その改善の効果もあってか、導入前は年間来場者数が8万人ほどだったのに対し、導入後は20万人を下回ることがなくなりました。新しいリフトの快適性と満足度の向上が、来場者数の増加に直結したと実感しています。

年間売上が約4億円という中で、5億円もの投資は決して容易な判断ではありませんでしたが、「お客様の声に正面から向き合う」という原点に立ち返ったことで、大きな成果につながった貴重な経験となりました。

 

インバウンド戦略の見直し

私たちのスキー場でも、インバウンドの動きが少しずつ見られるようになってきました。特にベトナムからのお客様が多く、京都観光のついでに「雪を見に行こう」と立ち寄られるケースが増えています。ただし、現時点では雪を見て写真を撮るだけの短時間滞在が中心で、私たちが目指す“体験型の滞在”には、まだ十分には結びついていません。

その背景には、旅行会社が設定する滞在時間が非常に短いという事情があります。スキー場での滞在はわずか40分ほどで、雪を見るだけの内容が多く、その限られた時間内でスキーの魅力を伝えるのは難しいと感じています。

こうした課題を踏まえ、現在はインバウンド戦略の見直しを進めています。たとえば、スキースクールの体制強化や多言語対応の接客環境の整備など、より深い体験へとつなげるための取り組みを、今後1~2年かけて進めていく予定です。

 

“また来たい”を生む、最初の体験づくり

初心者がスキーやスノーボードを始めるには、スクールをはじめとした丁寧なサポートが欠かせません。ただし、「スポーツ」というイメージが強いために、どうしても男性中心になりがちです。

最初の体験が「寒い・痛い・怖い」といったものでは、なかなか継続にはつながりません。そこでグランスノー奥伊吹では、そうした初心者層に向けたアプローチとして、全国で初めてSIA(日本プロスキー教師協会)公認の20代女性校長によるスキースクールを開設しました。女性やお子さまでも安心して参加できる体制を整え、「やさしく・楽しく・安心して」始められる環境づくりに力を入れています。

また、初来場の方は荷物が多く、特に小さなお子さま連れのご家族には負担が大きいものです。そこで、おむつやおしりふきを無料配布するサービスを導入し、多くのお客様にご好評をいただいています。

また、初めて来場される方は荷物が多くなりがちで、特に小さなお子さま連れのご家族にとっては大きな負担となります。そこで、おむつやおしりふきの無料配布サービスを導入しました。この取り組みは多くのお客様からご好評をいただいていますが、こうした小さな工夫の積み重ねが、「また来たい」と思ってもらえる体験につながり、将来のスキー人口の底上げに繋がります。

 

“好き”がつなぐ人材との出会い

年間来場者数が25万人を超えるようになると、組織づくりの難しさも増します。私たちの会社は、最寄りの信号機まで18キロも離れた山間部に位置しており、正直なところ「もし自分の子どもがここで働きたいと言ったら、少し戸惑うかもしれない」と感じるような立地です。

採用は通常の方法で行いつつも、「スキーが好きな方」に向けた福利厚生を充実させています。たとえば、世界中のスキー場で使えるリフト券やレンタル料については、本人分だけでなく友人分まで会社が全額負担しています。

スイスでもカナダでも構いません。現地での体験は視野を広げるきっかけになり、新しいサービスを考えるうえで大きなヒントにもなります。私自身も海外のスキー場を視察していますが、同じ目線で語り合える仲間がいることは、非常に心強く感じます。

だからこそ、採用の段階から「スキーが好きな方、大歓迎です」と明確に発信しており、その結果、優秀な人材が自然と集まりやすくなっています。

「地方だから人が集まらない」とは感じていません。現在では40名以上の社員が在籍しており、地元出身者に加え、遠方から移住したり通勤したりしているスタッフも数多く活躍しています。

 

想いを共有し、未来へ進む

会社として新たな挑戦を進めていくうえで、自分の考えや価値観をどう組織全体と共有していくかは、私たちにとって大きな課題でした。まだ発展途上の会社ではありますが、昨年ようやく「ミッション・ビジョン・バリュー」を明文化することができました。

そして数年前から、全社員が集まる会議の場で、「これからどのような施設をつくっていきたいのか」「どんな未来を目指すのか」について、私自身の言葉で繰り返し伝えてきました。

私たちのスローガンは「2070年、地域の子どもたちにスキーを」。これは、50年先を見据え、地域と共に未来を築いていくという想いを込めたものです。

スキー場を運営する立場として、地球温暖化や少子化、地域の過疎化といった社会課題にも正面から向き合っていく必要があります。もちろん、私たちにできることには限りがありますが、その中でも「今できることに全力で取り組む」という姿勢を大切にし、社員一人ひとりと想いを共有しながら、組織全体で前進を続けています。

第2回は、自分で動く大切さやお客さん目線での改善、好きで繋ぐ採用とミッションとバリューについてお送りしました。

第3回は、再生可能エネルギー活用や持続可能な観光地づくり、ミッション・ビジョンを軸とした未来への挑戦についてお送りします。

執筆 アキナイラボ 編集部

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