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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。
今回のゲストは、北海道でパン屋をオープンし、現在は全国に「小麦の奴隷」のFCを展開する株式会社 こむぎの の代表取締役社長の橋本玄樹さんです。北海道でパン屋の開業するに至った経緯や、FC展開についての戦略などをお送りします。
第1回は小麦の奴隷の成り立ちや、SNSをうまく利用して地方で成長させてきた体験についてでした。
第2回は、冷凍生地によって可能になった小麦の奴隷独自のビジネスモデルについてや、FC展開する際のSNSの絡め方についてです。
この記事の目次
“冷凍生地”でパン職人不足を解消する!?
「小麦の奴隷」では、冷凍生地というものを一つのコンセプトにしていて、ビジネスモデル自体が面白いと言われます。
小麦粉を粉から混ぜて、こねて、発酵させて寝かせておくという作業が必要な“生地玉を作るまでの工程”は、一番職人技が必要な部分になります。ですがこれは、質や温度などいろいろな条件で日々変わっていく生物との戦いです。それを習得するための技術者は、地方に行けば行くほど不足していきますし、都内でも減っていっています。
そこで、冷凍生地を使うという解決策を考えました。当然冷凍生地でも美味しくないものもありますが、色々な冷凍生地を試して良質なものを発見し、それを使うことにしました。
冷凍生地の使用がパン屋の労働を改革!?「小麦の奴隷」のビジネスモデル。
生地作りは1種類であれば比較的簡単ですが、普通のパン屋さんだと20種類程度作ります。
そこから生地を成形したり、ウインナーを挟んだり、食パンを作ったりしています。その生地を作るのが難しく職人技が必要であるため、「小麦の奴隷」では全て冷凍生地を仕入れており、店舗では生地玉を解凍して発酵させてから成形したり、形ができていているものはそのまま発酵させて焼いたりしています。
味については、冷凍生地を使用していない普通のパン屋さんの方が美味しいんじゃないか?とみなさんは思うのではないでしょうか。私自身も最初はそう思っていましたが、実際にブラインドテストをしてみると、味の違いはほとんど無いように感じました。そして冷凍生地の中でも色々なものを試し、良質なものを見つけて使っています。
冷凍生地を使うことで、作業量も大きく変わります。例えば都内の有名店だと、生地を作る担当がいて夜中の0時から出勤して朝8時まで作業して帰るくらい時間がかかります。
それが、冷凍生地を使うことで味の品質を保ちつつ作業時間を短縮することもできますから、バイトの方だけで回すことができています。
SNSとクラウドファンディングを活用したオープン前のファン集め
現在、全国にFCを展開していますが、店舗を出店するにあたっては30日の研修期間を設定しています。
前半2週間ほどは自由が丘のラボでパン作りなどの研修を行い、後半は実際の店舗での準備段階として講師を派遣してサポートを行っています。
研修では、美味しいパンを作るための指導を行っているのは当然ですが、“SNSとクラウドファンディングを準備しないと試験に合格できない仕組みにしているところ”が小麦の奴隷の特徴的な点です。
美味しいパンを作ればある程度お客さんは来てくれるでしょうが、それだけで選ばれ続けることは難しいです。
オープン当初からファンを獲得し、選ばれ続けていくお店にするために、無料のツールやSNS、クラウドファンディングなどを活用してファンを作る取り組みを行っています。特にクラウドファンディングは、7〜8割に及ぶ店舗が実際に取り組んでいます。
クラウドファンディングはドブ板営業!
我々が行っているクラウドファンディングは、ある意味ドブ板営業に近いと思っています。一般的にSNSやクラウドファンディングというと、それまでやっていなかった方にとっては、かなりハードルが高いように思われます。ですがFCに加盟される方は他にも何か事業をされていて地域の方々とお付き合いがある方が多いため、クラウドファンディングなどは地域にファンを作るための営業ツールとして有効です。
その地域でクラウドファンディングを営業ツールとして活用し、ドブ板営業でファンを獲得します。基準額の30万円を達成すると、クラウドファンディングへの協力者が50人以上にはなります。その人達がオープン時に既に獲得できているファンになります。
継続的なファンの獲得のための、SNSによるファンづくり
そして、さらにお客様を集め継続的にお店に来ていただくために、SNSを徹底的に活用します。まず研修が始まった時点で、クラウドファンディングの他にインスタとtwitterのアカウントを開設し、毎日5つ投稿してもらいます。
普段SNSをやっていない方は慣れないと辛いと思いますが、数を投稿しないとわからない事もあります。リツイート数などを見ることで、反応がいい投稿はどういう投稿なのか、何に興味をもってもらえているのかなど、感覚を養っていただきます。そうした投稿内容などについては、LINEなどでグループを作っていますので、その中でフィードバックをしています。
SNSに大切なものは人間臭さと人間味
毎日の投稿の中で、“いいね“が多い投稿はどんなものかわかりますか?美味しそうなパンの投稿は勿論ですが、もう一つは“ひと”です。
例えば、ふざけたことをやっている店長さんとか人間臭さが出ている投稿は、見てくれているユーザーの反応が良い傾向にあります。
具体的には、名古屋の千種店でオープンの時にスタッフが肩車をして来店を呼びかける投稿をしました。すると、そんな普通のパン屋がやらないような珍しい投稿を見て、“この人たち面白そう、この人たちに会いに行こう、その手段としてパンを買いに行こう”と思っていただけるのです。
人間味のある投稿も大切だと考えています。大樹町の店舗では、蝶ネクタイをして訪問販売に行っている男の子がいるのですが、毎回蝶ネクタイがすこしずれています。その少しずれている蝶ネクタイを、関西弁の私の母親が注意するという動画を投稿しています。
SNSは研修の最初から投稿していて、パンを焦がしてしまったというような失敗例も全てアップしています。
そんなSNSの活用で、お店やパンだけでなく“ひと”を見てもらい、“この面白そうな人たちに会いに行こう、会うためにパンを買おう”と感じてもらいたいと思っています。
こうして“ひと”にフォーカスした投稿を心がけていますが、各店舗のフォロワーの目処は1,000人としています。店舗にもよりますが、早いところだとプレオープンまでに500人くらいになることもあります。
そして、ここぞと言うときには堀江さんにリツイートやリポストしていただけることが、このグループの強みです。そのおかげで、最近では「小麦の奴隷」の認知度も徐々に上がってきて、「小麦の奴隷」が我が街にきた!とフォローしてくださるという好循環も生まれてきているように思います。
オープン時の集客戦略は無料カレーパン
「小麦の奴隷」は店舗オープン時に広告費を使いませんが、地元の新聞やラジオ局などにプレスを出して取り上げていただくほか、アプリ登録していただいた方先着100名にパンをプレゼントする企画なども行っています。
無料プレゼントの効果でだいたい100名程度の登録はあります。オープン時に100人のお客様を確保できていることは店にとって非常にありがたいことですし、1万円ほどで安定顧客につながる地元フォロワーを100人増やせると考えると費用対効果はかなり良いと思います。多いところだと初日で75万円も売り上げた店もあります。
こういったSNSの活用などにより、人口5,500人ほどの町でも月商300万円から350万円を上げることができ、比較的安定した経営ができています。
エンタメパン屋の最高峰が茨城に!?
そして、そういった大樹町の成功モデルをどんどん横にも展開していこうということで、FCを積極的に展開しています。全国の数ある店舗の中でも、特に繁盛しているのは茨城県の笠間にある店舗です。まさにエンタメパン屋を踏襲しています。
店の前にザクザクのカレーパンのモルタル造形を置いていて、お客さんがその写真を取りに来店します。また、ライトアップもしているので夜に車で前を通っても「ここは何だろうか?」と興味を引くような視認性の高い店舗になっています。この店舗は、月商で500万円を超える時期もありました。
今回はここまでです。次回はFC展開・支援の方法や、代表橋本さんの“エンタメパン屋”を通して地方創生に貢献する考えについてです。