2023年12月4日、東京のSTUDIO VIZZ EBISUで、株式会社スマレジの主催イベント「飲食業界はブルーオーシャン!? 常識を超える飲食店経営のいま」が開催されました。
第二部では、InterFMのラジオ番組「お店ラジオ supported by スマレジ」の公開収録として、ホリエモンこと堀江貴文さんをスペシャルゲストにお迎えしました。
飲食店経営のきっかけから、メニュー開発の舞台裏、店舗プロデュースまで、固定観念にとらわれない、堀江さんならではの視点からお話をいただきました。
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この記事の目次
飲食をすることで、アイディアを具現化するのが楽しい
飲食店経営は、人目につかない場所を作りたいと思って、カラオケも楽しめるバーを、2006年にオープンしたのが始まりです。本腰を入れ始めたのは、ポップアップ店舗としてスタートした「WAGYUMAFIA」からですね。
当時、ホテル住まいで、料理を作りたくなると、キッチンスタジオを借りて料理を楽しんでいました。WAGYUMAFIA共同経営者の浜田が、和牛の輸出に携わっていたので、一緒に毎月テーマを決めて和牛の会を開くうちに、どんどん新しいレシピが増えていきました。
そんな和牛の会の噂を聞きつけて、当時京都にあった、3年間限定の会員制レストラン「空」のオーナーから、声をかけてもらいました。
そのレストランの客席は7席で、全国のミシュランの星付きのお店からシェフを招いて、一週間料理を提供してもらうというコンセプトでした。シェフを派遣するお店からすると、一週間お店を休業するのは収益的に厳しく、徐々に派遣期間が2〜3日と短くなっていきました。その空いた期間に、オーナーから誘われてフルコースを作ったのが、WAGYUMAFIAの始まりです。
WAGYUMAFIAというユニットは続けたかったんですが、他の店に行きづらくなるのが嫌で、1店舗目には出資しませんでした。そんな中、西麻布に昔バルズバーっていう伝説のバーがあった物件が空いて、『ここでお店やるんだったらいいね』と思い、出資してしまったのが地獄の始まりです(笑)。
僕が飲食を続ける理由は、飲食を通じてアイディアを具現化するのが楽しいからです。コンサルだけをやっているよりも、自分で実行するのが楽しい。また、飲食業界に対して『なぜこれをやらないのだろう』と常に感じているので、それを実際に自分で試してみたいという部分もあります。
数々のコラボがメニュー開発のヒントに
飲食において、価格が安いものを高くするのは難しいんですが、一旦高く設定して安くするのは簡単なんです。プロデュースしている、六本木のラーメン店「MASHI NO MASHI TOKYO」は、今後3,300円のラーメンを主力にしていこうと考えています。
このラーメンは、神戸牛、尾崎牛の牛骨を使った甘いスープに、和牛のブリスケット(肩ばら肉)の薄切りチャーシュー、辛味だれ、きくらげ、ネギをトッピングしています。スープは骨の部分が溶け出さないくらいに髄だけを煮出していて、白濁していません。味は一蘭を目指しています。なぜかというと、一蘭の味はみんな知っているので、スタッフの意識を合わせて目指しやすいからです。
また、お代わりの時は替え玉ではなくて、ご飯を投入出来るようにしようと考えています。福岡では、冷たい小ぶりのおにぎりがショーケースに入っているのが一般的で、それを参考にしています。
今までメニュー作りで悩んだことは一回もないですね、湧き出てきます(笑)。WAGYUMAFIAは、ホーム・アウェイでコラボが豊富なので、その経験も生きていると思います。
コロナ前は世界50都市を回ってコラボツアーをしていました。相手側の勝手が分からないキッチンを使って、和牛と食材を持ち込んで料理を作るので、めちゃくちゃ鍛えられました。逆に、うちに来てもらってコラボする場合は、相手の技も見れるので、メニュー開発に困ることはあまりないですね。
調理器具には、まだイノベーションの余地がある
調理器具に関しては、ダイソンが掃除機を再発明したようなことが、今後起こると思っています。
例えば、ホーロー鍋のバーミキュラは、ホーローの切削加工により付加価値が高まり、業績が大きく回復しました。また、簡単に鍋でご飯が炊けるように、ライスポットという電子調理器も販売しています。
このように、鍋一つとっても進化の余地があるので、調理器具全体では、まだまだイノベーションの余地があるのではないでしょうか。
うちも調理器具を作っていて、オリジナルの焼肉鍋はジンギスカン鍋を改良して作りました。ジンギスカン鍋の魅力は、焼き野菜が美味しいところで、特に滴り落ちてくる牛脂が染み込んだ焼き野菜は絶品で、お客さんに喜んでもらっています。
また、油をキャッチする部分を深めに設計しているので、そこでモツ焼きをして鍋にしたり、火鍋やすき焼きも楽しめます。焼肉ロースターは直火に油が落ちるので、煙が出やすいんですが、ジンギスカン鍋は煙が出ないので、臭いがつく心配がありません。調理器具を作る時は、そういったディテールまで考えるのも、必要じゃないかなと思います。
カルピスウォーターの衝撃をハイボールで再現
うちではプライベートブランド商品にも力を入れていて、オリジナルの日本酒スパークリングや、ハイボールも作っています。
なぜハイボールかというと、カルピスウォーターにヒントを得たからです。
初めてカルピスウォーターを飲んだ時に、『カルピスうまっ!!』と衝撃を受けました。カルピスの最適な割合って分からないじゃないですか、実は黄金比があるんだと。このカルピスウォーターの衝撃をハイボールで再現しようと思ったんです。
トリスハイボールとか、角ハイボールとか出ているんですけど、基本ロックとか、生(き)で飲む用に作られていて、ハイボール用に作られたお酒じゃないので、尖ってないんですよね。
うちの原料のウイスキーはハイボール用に作ったので、ハイボールになった時に美味しくなるように作ってあるんです。だから、モルトウイスキーに拘る必要もなくて、グレーンウイスキーも結構入っていたり、その方がキレが出たりするんです。3万本製造したんですが、瞬く間に売れてしまいました。
このハイボールは氷を入れるのが前提なんですが、うちは氷までオリジナルで作っています。
北関東の山で作られた氷柱を仕入れている氷屋さんに依頼して、全く気泡の入っていない、すごく透明な氷を仕入れています。純度が高いので、きれいに注ぐと氷が見えなくなるんです。
これを「忍者アイス」と名付けて外国の方にも喜んでもらっています。こんなに美味しい氷と、ウイスキーを飲めるのって日本だけなので、とても価値がありますよね。
“いいパン屋さん”であれば地方でも成立する
コロナ前に長崎県の五島列島を訪問した時、おしゃれなパン屋さんがあって、たまたまお店のお手伝いをしている人と知り合ったので、見学に行ったんです。『パン好きはこういう”いいパン屋さん”で買いたいんです』という声を聞いて、「いいパン屋さん」であれば地方でも成立するんだなと関心した経験がありました。
僕はロケットの仕事で、北海道の大樹町によく行くので、『そこでパン屋をやらないか』とオンラインサロンで呼びかけました。すると、たくさんの人が手を上げたんですけど、現役員をやっているメンバーが、早々に大樹町に移住して、店舗も決めて、セルフリノベーションして「小麦の奴隷」をオープンしました。
大樹町にした理由はいくつかあります。まず人口5,000人の街なので、ここで成功できたら、全国どこでも出店できるだろうという部分。また、地方はライバルが少なく競争が楽なんです。
新規オープンするだけで、ニュースに取り上げてくれることが多くて、初日は行列が出来たりするので、オープンしてから1〜2ヶ月は好調なんですよね。その間に移動販売とか、訪問販売網を構築すると、安定した売上を上げられるようになります。
移動販売は、隣町の幼稚園とか、美容室とか、農場とかを回るんですが、しょっちゅう行くと飽きられるので、同じところには月に1、2回しか行かないのがコツですね。
特に冬場は、寒くて外に出たくない方が多いので、訪問するだけで感謝されるんですよ。移動販売と訪問販売がきちんと出来ているところは、ものすごく利益が出ています。
パン屋の常識を覆した冷凍生地との出会い
小麦の奴隷のパンは冷凍生地を使用しているんですが、それは僕が最初に言い出したんです。冷凍生地のアイディアは、WAGYUMAFIAが京都のレストラン「空」で開催したイベントの経験からきています。
当時そこで、和牛の牛脂を使ったクロワッサンを出していました。牛脂を入れると、肉屋さんのコロッケみたいなサクサク感が出て、和牛香もつくし、すごく美味しいんです。
そのイベントに、パティシエ エスコヤマの小山さんが来られていて、牛脂のクロワッサンを出したら『これ美味しいね』と褒めていただきました。
クロワッサンって完全に手作りだと、5時間くらいかかってすごく大変なんです。しかも、生地がバターのミルフィーユになっていて溶けやすいので、専用の機械を使わないと綺麗に作ることが難しいんですよ。
実際、僕が作ったクロワッサンは形が不細工だったので、小山さんが『もっと綺麗に作るよ』と言ってくれて、牛脂を送ったら、冷凍されたクロワッサン生地が送られてきたんです。マニュアルには、冷凍生地を自然解凍して、一時間くらい二次発酵させて、オーブンで焼くように書いてありました。
最初、冷凍生地には懐疑的だったんですけど、作ってみたら、めちゃくちゃ美味いんですよ、感動しちゃって。むしろクロワッサンって、冷凍した方が美味しいんじゃないかと思って、これはいけるわと思ったんです。
それと、普通のパン屋さんだと、50種類のパンがあったら、最低でも10種類以上の生地が使われていて、全部違うブレンドなんです。
例えば、今日カレーパンが売れたからといって、また生地から捏ねていたら、最低3〜4時間はかかって大変なんですよ。その点、冷凍生地であれば、解凍してそのまま焼けるので、簡単なのもメリットですね。
小麦の奴隷のパンには、もう一つ源流があるんです。
僕がライブドアを経営していた頃、投資会社も持っていて、大口の卸から仕入れた商品を地方の小売店にネットを使って卸す、ネット卸の会社に投資していました。
そこの社長から、カナダ産などグレードが高い小麦粉は、仕入れ量が多い大口顧客向けに流通する仕組みが確立されている為、一般消費者は良い粉を手に入れるのが難しいという状況を教えてもらいました。
小麦粉の品質がパンのおいしさに大きく影響するため、地方のお店でもネット卸を利用することで、グレードの高い小麦粉を手に入れやすくなります。
これらのアイディアをハイブリッドして、小麦の奴隷が生まれました。現在は100店舗まで増えていて、冷凍生地を使ったパン屋さんの中では、3番手、4番手になっていると思います。
日本各地の名産を再発明して、進化させていく
僕はこれまで、美味しいと思える沖縄そばの店に巡り会ったことがなかったので、自分が行きたくなるような沖縄そば店をプロデュースしました。
出店は沖縄のみで、20店舗くらいで、ドミナント展開しようと考えています。他にも郷土料理とされている、帯広の豚丼や、山梨のほうとうにも、チャレンジしてみたいですね。
あと、ご当地の名物を使用した「ご当地ラーメン」のアイディアがあって、某ラーメンチェーン店に提案しています。
例えば冬の時期、福井県の東尋坊に行って、本当に美味いズワイガニラーメンとかあったら、僕は8,000円でも食べると思うんですよね。ちゃんと作り込んだものであれば、それを目的に人が来ると思います。他には、下関のふぐラーメンとか、和歌山のクエラーメンとかも人気が出ると思います。
このような、認知度がある各地の名産を再発明して、どんどん進化させていきたいですね。