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お店ラジオ 2023/06/30 2024/03/14

失敗から学んだ教訓。自分で確認、分析することの大切さ

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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。

今回のゲストは、有限会社ゑびや・株式会社EBILAB代表取締役社長 小田島春樹さんと、株式会社EBILAB 最高戦略責任者 常盤木龍治さんです。

三重県の伊勢で150年続く老舗飲食店を再建。徹底したデータ活用により事業拡大を成功に導いた店舗経営戦略について、3回に分けてお送りします。

第1回は、5代目として引き継いだ飲食店の再建から客単価の向上、データの活用方法にについてお聞きしました。

第2回は、新たな飲食店ビジネスモデルの構築、集めたデータで何がわかるのか、そしてデータ共有することの大切さについてお聞きしました。

第3回は、QRコードを活用したアンケート収集方法や失敗から学んだ教訓、ロードサイドのデータ戦略についてをお送りします。

 

この記事の目次

 

QRコードを活用した効率的なアンケート収集方法

私たちのアンケートはQRコードからアクセス可能で、訪問の動機や訪問回数、郵便番号、そして、お店の雰囲気、サービス、接客、盛り付け、味、提供時間といった6つのカテゴリーについて評価していただいています。

お客様が本当に率直に回答してくださるのかと疑問を持たれるかもしれませんが、意外と率直に回答してくださいます。

ただし、何のインセンティブもない状態では来店したお客様の1%か2%しか回答していただけないのが実状です。景品やお菓子などの粗品を提供すると、回答率は5%~10%ほどに上昇し、さらにキャッシュバックを提供することで回答率は30%まで上昇します。

さらに付け加えると、回答率を上げるためには金券を提供する方法が最も効果的であるという結果が出ています。具体的には、100円引き券の効果が絶大でした。つまり、100円でアンケートの回答を得ているということになります。

 

アンケート結果の共有と効果的な業務改善手法

私たちの現場では、アンケート結果はSlackを通じて自動的に共有されます。

アンケートが入力されると、その情報(回答者の年齢、訪問目的、フィードバックなど)がスタッフ全員と共有されます。スタッフはその情報を基に、改善点を特定するなどの対応をしていきます。また、1日のアンケート結果のサマリーも自動的に共有されます。

このサマリーには、円グラフや棒グラフなどの視覚的な表現だけでなく、コメントの形態素解析結果も含まれます。形態素解析を用いてコメントを「良い」「悪い」「ニュートラル」のカテゴリに分け、それぞれの傾向を掴むことができます。

その結果を基に、自店の弱点を特定し、長所をより伸ばすための活用法を模索しています。これが大成功を収めているとは言えませんが、アンケートを業務改善に活用することで一定の成果が出ていると感じています。

 

デジタル化の成果:売上増加と全員参加体制の確立

事業を引き継いだ2012年当時、売上は約1億円で、経常利益は32万円でした。当時は役員報酬を取りながら、売上が黒字か赤字か、ほぼトントン状態を続けていました。

現在、グループ全体の今期売上は約8億円を見込んでいます。店舗ビジネスだけで約5億円で、売上は5~6倍になっています。営業利益は店舗だけで見ると4,000万~5,000万円を見込んでおり、役員報酬も考慮すると利益率は約18%です。

この高い利益率の要因は、デジタル化が成功したことによるものだと思います。特に、バックオフィスの作業をデジタル化することで手が空くようになった点が大きいです。

例えば、経費精算や会計、人事関連の作業が減り、商品開発、看板の開発、メニュー開発といった収益向上に繋がる作業に時間を割くことができるようになりました。また、デジタル化によって全員が活躍できる体制を作れたことも成功の要因だと考えています。

売上の増加は、1人あたりの売上が上がっていることが一因です。かつては1人あたりの売上が約360万円でしたが、現在は1,500万円を超えています。

 

失敗から学んだ教訓。自身で確認し、分析することの重要性

しかし、すべてが順調だったわけではありません。実際には、業績が伸びたことにより自信を持ち過ぎていた時期がありました。

その時期に新店舗の出店の話が来たのですが、自分で現地を確認することなく、提供されたデータだけを基に出店を決定し、結果的に大きな失敗を経験することになりました。

この店舗は都会の中心部にあり、出店先の商業施設から提供された外国人比率や来店者数の情報を見て、成功すると判断して出店しました。しかし、実際に出店してみると、予想とは大きく異なる結果となってしまいました。

理由は、最初に提供された情報と、現地の実際のデータに大きな差異があったことでした。提供していただいたデータは施設全体の数字で、A館、B館、C館と複数の館が存在したにも関わらず、私たちは詳細に調査していませんでした。また、類似したエリアの事前調査もしていなかったのです。

その結果、想定していた業績が出せず、閉店することになりました。

もし私が店舗周辺の通行人数が少ないことを認識しており、自社の業態のコンバージョンレートを考慮に入れていたら、その場所での出店を選択しなかったと思います。一次情報をしっかりと取得することと、まとめられた情報だけを盲信しないという重要な教訓を得ることになったできごとでした。

データは過去の結果を示しているものであり、特別な状況でなければそのデータに基づいて行動することが最善と言えますが、同時に、データの根拠が間違っていたり曖昧であった場合には、大きく判断を誤る原因になるのです。

 

ロードサイド店舗におけるデータ戦略

ロードサイドの店舗においても、データを活用して効果的な手段を取ることで成功を収めることは可能です。

例えば、郵便番号を利用してお客様がどのエリアから訪れているのかを特定することができます。このデータを基に、そのエリアに対して効率的なチラシの配布や広告の展開が可能になります。

郵便番号などの個人を特定しない範囲でのエリアデータは、お客様からも比較的提供を受けやすい情報です。ターゲットとなるエリアが分かれば、FacebookやInstagramの広告、あるいはチラシなどのマーケティング手法を活用することができます。

さらに、特定のエリアからの来店者数が一定数を超える場合、そのエリアに看板を設置するという戦略も考えられます。また、看板を見たかどうかアンケートを通じて確認し、看板を見た人の郵便番号を聞くことで、どのエリアの人が看板を見ているのかを把握することができます。

アンケートよりも高精細なマスターデータを取得することは、ITの観点からは重要なことではありますが、それよりも重要なのは、効果的なデータ項目を選定、限定できるかです。

運営側が必要だと考えるデータの取得に必死になり過ぎると、過剰な情報収集がお客様の印象を悪くする可能性もあります。ですので、データをどう活用するかを逆算して、データ収集の方法や範囲を考えるべきだと思います。

 

私たちにとってのお店とは

私たちは現在、伊勢エリアの店舗の事業継続を引き受けたりもしています。さらに、サービス業界がより豊かになるために、社会人の再教育や大学の授業なども行っています。そういった取り組みを行うことで、自らの経験や知識を活かしていきたいと考えています。

私たちにとってお店とは、「ビジネスとして成長できる可能性に満ちたフロンティア」(小田島氏)であり、「お店は多くの可能性と楽しさが詰まっていて、人生は“どこでお金を稼ぐか”と、“どこでお金を使うか”の選択の集合だと思っています。その視点から考えると、私にとってお店とは、その人の人生そのもののあり方を変える場所」(常盤木氏)だと思っています。

 

執筆 横山 聡

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