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お店ラジオ 2023/06/22 2024/03/14

だしカレーで日本のカレーを面白くする

about

「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。

今回のゲストは、会社員をしながらカレー屋をプロデュースし、「カレーだしっ!」の運営に関わっているカレーマンさんです。
会社員をしながら店舗運営に関わるようになった経緯や、店舗経営をしてわかったことなどを2回に分けてお送りします。

第1回は、だしカレー誕生のきっかけから出店までについてお送りしました。

第2回は、「カレーだしっ!」のフランチャイズ戦略についてお送りします。

 

この記事の目次

券売機導入の失敗とその理由

私自身でお店を出す前は、多くの飲食店を訪れて食事を楽しんだり、お店を観察したりしてきました。ですが、実際に自分でお店を経営してみて初めて気づくこともたくさんありました。

例えば、券売機に関する失敗があります。
将来フランチャイズ展開する際、オペレーションコストを抑えられるよう、機械化を進めておきたいと思っていました。お客さんが券売機でメニューを選び、その情報がキッチンに自動で伝わって、カレーが提供されるという流れを作りたかったのです。

これによって、1人、多くても2人いれば店舗を運営できるようになるのではないかと考えていました。しかし、実際に導入して運用してみると、お客さんが商品を選べないという問題が生じたのです。

おそらく、ラーメンなら醤油ラーメンや塩ラーメンなど、一般的に認知されている商品であるため、お客様もメニューを見れば簡単にイメージが湧くと思います。しかし、だしカレーは元々認知されておらず、理解しづらいものですので、説明が必要になります。

さらに、メニューも1種類ではありません。例えば、洋風のカレーと和風のカレーの2種類を用意していて、「和風カレーが鶏ガラとサバ節の魚介だしカレーである」と説明しても、初めての方には理解しづらいと思います。

そのため、券売機の前で選択を迫られてもお客様は簡単には選べないでしょう。さらに、トッピングなどがメニューに並んでいる場合は、より難しくなると思います。結局、券売機の横にスタッフを配置することになってしまったのです。

 

カレーライスを日本の「お出汁」で面白くする

だしカレーを食べると、ふわっと香るお出汁の香味と旨味、そしてどこかほっとする感覚を同時に体験できます。

カレーにはインドカレーや欧風カレーなどさまざまなジャンルがありますが、その中でも最もポピュラーなのは日本のカレーライスです。日本のカレーライスというのは「カレーライスといえばこれ」というイメージが永く定着しています。

そこで、このカレーライスにお出汁のニュアンスを加えて少し新しくしてみたら面白いのではないかと考えました。

それが日本の食文化のお出汁を使用した「だしカレー」の誕生です。たくさん食べて満足感を得られ、美味しいと感じる一方で、非常に軽い仕上がりのカレーです。旨味が味に深みを与えるため、油や塩は控えめにしています。

 

夜のカレー屋戦略

カレーの価格は、洋風が650円から、和風が800円からに設定しています。基本的には、ライスが200gに対してスパイスは何g使っているかなど、全ての原材料の費用を細かく積算して価格を決めています。

最初はドリンクで利益を確保したいと考えていましたが、実際には、お客様はカレー屋でドリンクをあまり頼みません。それから改めて原価調整したりトッピングを考え直したりと、試行錯誤を重ねました。

また、カレー屋の課題としては、夜の時間帯にお客様が入らないということがあると思います。カレーはランチとして食べられることが多く、夜にカレーを食べに行くことは少ないでしょう。

私のお店も同様で、昼には多くのお客様が訪れますが、夜はあまり来店していただけません。この課題は、経営者としていち早く気付かなければいけなかったことでした。そのため、最近は夜にはスパイスおつまみとワインを提供し軽く飲めるお店に変えようと考えています。

それに合わせて、この店では軽く飲むこともできるということを池上エリアの皆さんに認知してもらうためのマーケティング活動も必要だと考えています。

 

経営に関わるようになってから飲食店の批判が許せなくなった!

実際に自身がお店の経営に携わるようになってからは、他のお店に行っても単に食事をするだけではなく、原価などにも気にするようになりました。

凝ったカレーを提供してくださるお店に行っても、価格や回転などを見ながら、「売上は今いくらくらいだろう、ちゃんと回っているのだろうか」と想像するようになりました。

そのように、これまでとは異なる視点が生まれ、経営の大変さを理解するようにもなり、飲食店に対する批判的な意見を言う人たちを許せないという気持ちまで湧いてきました。

 

学ぶことが多い飲食店の経営

将来的にはフランチャイズ展開を考えており、近所にファミリーレストランや牛丼チェーン、他のカレー店などの飲食店がある中で、「今日はカレーが食べたいな」と思った時に来てもらえるようなポジショニングを目指したいと考えています。

そのためには、誰でも簡単に運営できるようなオペレーションの仕組みを整える必要があります。フランチャイズ加盟を希望される方には、池上で行っているオペレーションをパッケージ化し、1、2ヶ月で開業できるようなサポートを提供したいと考えています。

そういった意味では、私たちの仕事は、池上での経験、ノウハウを共有し、展開していくことです。

たまに地方へ出張する機会もありますが、地方ではお店の選択肢が少ない印象を受けます。

特にロードサイド店しかないような車社会の地域では、大手チェーン店以外にもカレー専門店があれば面白いのではないかと思っており、そのようなエリアにお店を展開していくことを考えています。

現在も私は会社員として店舗の運営に携わっています。自身が店舗運営に関わるようになってからは、投資の回収性や営業利益の確保など、これまでは会社で単にこなすだけだったような業務に対しても経営的な視点から考えるようになりました。

また、会社員として働いているだけだと「売上」と「粗利」にしか注目しないことが多かったのですが、それ以外の要素やビジネスの展望にも興味を持つようになりました。

特に飲食店は、マーケティングや売上、スタッフ、財務など、ビジネス全般の要素が絡み合っていますので、学ぶべき点が多いと感じています。

 

お店は自己実現の場

私にとってのお店は、自己実現の場です。

私は大学を卒業してから約20年間、会社員として、自分が進むべき道がある程度定まっている環境で働いてきたと感じています。

しかし、今では自分がこれまでに取り組んできたことや趣味の範囲を超えて、ビジネスとしてリスクを負いながら社会に貢献できるかどうかにチャレンジしています。

「これまでに自分がやってきたことや、本当にやりたかったこと」が社会から受け入れられるかどうかという意味で、お店が自己実現の場となっていると感じています。

 

執筆 横山 聡

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