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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。
今回のゲストは、日高屋や来来軒などの業態で、関東の駅前を中心に約400店舗もの飲食店を展開する株式会社ハイデイ日高 代表取締役社長 青野敬成さんです。
日高屋にアルバイトとして勤め始めてからの青野社長とハイデイ日高との関わりや創業者である神田正氏の「駅前」へのこだわり、さらに「美味しいけれども美味し過ぎない味」へのこだわりと今でも続く390円の日高屋のラーメンに込められた思いなどを3回にわたりお伝えします。
第1回は、アルバイトでの日高屋との出会いから現在の日高屋までの変遷についてお送りしました。
第2回は、スタッフの育成から回転率の向上、そして日高屋独自の出店戦略についてお送りします。
この記事の目次
店舗の差別化は、コミュニケーションを通じたスタッフの育成
私はアルバイトから正社員になり、そして店長になりました。
店長として最も重視したことは、当然ながら、その店舗で他店よりも優れた実績を出すことでした。しかし、私たちのお店はチェーン店であり、セントラルキッチンでラーメンや炒飯を作り、お酒を提供すれば良いわけですから、料理の品質は店舗間で大きく変わることはありません。
そこで、差別化できるのは「スタッフの力」しかないと考えていました。
アルバイトスタッフの育成が重要だと考え、労働力や作業速度、お客様への笑顔など、評価すべきポイントはたくさんありますので、すべての要素についてフェアに評価し、指導を行っていきました。
例えば、店舗に30人のアルバイトスタッフがいる場合、月に1回は必ずコーヒーを飲みながら個別ミーティングを行い、指導しました。このミーティングでは、そのスタッフの良い点や改善すべき点等について、一つずつ丁寧に話し合っていきます。また、各評価ポイントにおいては、誰に対してでも適切な理由をしっかりと説明できるレベルまで公平に、1人1人のスタッフを評価していました。
セントラルキッチンのメリット・デメリットとは
私たちは700円前後の客単価を目安としており、その客単価で商売を成立させるためには、セントラルキッチンが欠かせません。
普通のラーメン店では、麺などは外部の業者から仕入れることが一般的ですが、私たちは麺も自社で製造しています。もし、外部の業者から仕入れると、マージンを取られるので、この価格帯での提供は難しいと思います。また、麺の他にも調味料や餃子なども自社で製造しているため、コストを抑えることができています。
加えて、いつでも味付けや商品を自由に調整・改善できるのが、セントラルキッチンの最大のメリットです。例えば、「この麺を打ちたい」や「餃子の餡の味を改良したい」といった改善を即座に実行できます。他社に依頼している場合は、これらの改善を反映するまでに時間がかかります。
さらに、味に関しても、店舗にとってセントラルキッチンの役割は重要です。
例えば、チャーシューの煮込みなどの作業を各店舗で行うと、忙しい店舗とそうでない店舗では味に差が生じる可能性があります。忙しい店舗では、チャーシューを十分に漬け込む時間が確保できなかったり、煮る時間が短くなったりする傾向にあります。一方、暇な店舗ではゆっくりと漬け込む時間が確保でき、味に違いが出てしまいます。
しかし、私たちのようなチェーン店では、店舗間での大きな味のばらつきは致命的です。そのため、同じ味の商品を提供するためにセントラルキッチンの役割はとても重要なのです。
一方、セントラルキッチンにはメリットだけでなくデメリットもあります。
私たちの場合、セントラルキッチンが1カ所しかないため、全店舗の食材を管理できるという強みがある反面、セントラルキッチンに何らかの問題が生じて機能が停止してしまうと、その影響が全店舗に及ぶ可能性があります。
また、遠いエリアへの出店が難しくなるというデメリットもあります。セントラルキッチンから遠い場所に店舗を出すと、食材の運搬コストや時間が増大するほか、食材の品質管理も難しくなるためです。
関東にもまだまだ更なる出店余地が?日高屋の出店戦略とは
セントラルキッチンのデメリットの一つとして、遠いエリアへの出店が難しいと述べました。
それは確かに課題ですが、私たちは、現在、関東にもまだまだ出店余地があることが分かっているため、当面は関東圏でのビジネス展開に注力していくつもりです。
というのも、コロナ禍で始めたテイクアウトサービスから、新たな需要が見えてきたためです。コロナ禍では、駅前から人々が消えて厳しい状況が続きましたが、ロードサイドの店舗ではテイクアウトの需要が一定程度あるということに気づいたのです。
これまで関東での出店戦略については、駅前の店舗に関しては乗降客数が5万人を超えなければ出店を検討していませんでしたが、現在では一定の条件を満たしていれば2~3万人の駅にも出店しますし、加えてロードサイドへの出店余地も大いにあるということが分かっています。そのため、今後も1都6県での展開に力を入れていきます。
テイクアウトサービスの導入と戦略とは
テイクアウトサービスの導入に際しては、その新しい取組みへの不安や、ラーメンとアルコールが主力商品の店舗において、テイクアウトの需要が本当にあるのかという議論もありましたが、「コロナ禍で待っているだけではお客様は来ないので攻めていこう」との結論に達し、テイクアウトを開始したことで、売上の増加に繋がったのです。
現在では、コロナが落ち着き、状況が大幅に改善してきたことで、店舗が忙しくなってきました。
そのため、テイクアウトの継続について社内で議論をすることもありますが、そもそも、店内にお客様を迎え入れる場合は、1人につき1席が占められますが、テイクアウトの場合、席の占有なく更なるお客様を迎えることができます。そのため、店舗としては効率よく売上を上げられるのです。
さらに、すでにテイクアウトサービスには一定のお客様がついています。新規のお客様を引き続き獲得しようとしている状況を考慮すれば、テイクアウトを中止し、その売上を手放すという選択肢は考えられません。したがって、現状では、店内飲食とテイクアウトの両方を続けていくことが最善の戦略であると考えています。
第2回は、スタッフの育成から回転率の向上、そして日高屋独自の出店戦略についてお送りしました。
第3回は、日高屋の出店戦略(続)から美味しすぎない味の追求、390円ラーメンへのこだわりについてお送りします。