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お店ラジオ 2022/02/20 2024/03/14

定食屋がおいしい防災食を手掛ける?コロナによる転換と新しい目標

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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。

今回のゲストは、毎日完売が続く人気の定食屋「佰食屋」のオーナー、中村朱美さんです。
佰食屋は100食限定で、毎日の営業時間はなんと3時間半。中村さんはどんな考えでこんなユニークな経営をしているのでしょうか。詳しくお聞きしました。

中村さんのお話を紹介する第1回は、佰食屋が昼のみの営業にこだわる理由でした。そこには中村さんの働き方へのこだわりと、佰食屋の集客の秘訣がありました。
第2回は、「佰食屋の目指すもの」についてです。フードロス削減、SDGs、働き方改革。中村さんのお話からは、現代社会の課題になっているワードが次々と飛び出してきました。
今回で3回目です。ユニークな経営で順調だった佰食屋ですが、コロナによる影響は非常に大きなもので、中村さんのプランも変更を余儀なくされました。しかし、中村さんはこの苦境でもまた、ユニークな未来を描き始めています。

この回には、お店ラジオ初回のゲストで人気焼き肉店「肉山」の創業者、光山英明さんもコメンテーターとしてご参加いただきました。

 

この記事の目次

  1. 安定した経営のために内部留保は必要ない!?
  2. コロナでフランチャイズ計画もとん挫するほど大打撃を受けた
  3. コロナによる苦境の中で見つけた佰食屋の新しい目標
  4. 毎日完売する佰食屋が手掛ける「おいしい非常食」
  5. ほかの店にはない力が創る新しい飲食店の姿
  6. ローリングストックの仕組みで非常食を美味しくいただく
  7. 中村さんの地元愛「京都に貢献したい」
  8. お店は「自分の夢を叶える場所」

 

安定した経営のために内部留保は必要ない!?

(中村)
私のお店は100食限定ですから、お金がどんどん貯まる経営構造にはなっていません。
経営者としては、次の投資に回したり危機に備えたりするために、ある程度の内部留保を確保するのが通常なのかもしれません。

でも、私の知る経済の歴史では、危機に陥った会社で内部留保を使って危機に対処したケースは皆無で、そういう会社がするのはリストラです。そんな歴史ばかり見てきましたから、私は多くの会社が何のために内部留保をしているのか、長年疑問に思ってきました。

会社というのは、きちんと経営していればもし何かがあっても、金融機関や周りの誰かが助けてくれるものです。だから私は、何かあったときのためにといって内部留保を貯めておくのは違うと思っています。

いまのお金を稼いでいるのは、いま働いている人たちです。そのお金をその人たちのために使わず、将来の誰かのために取っておくのは搾取であり、いま働いている人にとってはいったい何のために働いているのかわからなくなる行為です。

だから私は、何かあったときのためにといって内部留保を貯めることはしません。従業員には、何かがあったときは私が全力で対応すると説明しています。私自身は内部留保を貯めることよりも、金融機関と良好な関係を築くことや、周りから応援される企業であり続けることが一番のリスクヘッジになると考えています。

 

コロナでフランチャイズ計画もとん挫するほど大打撃を受けた

(中村)
コロナが始まる直前の2020年3月、実は佰食屋は4店舗体制でした。コロナが始まるまでは、店舗を少しずつ増やして収益を拡大させていこうと考えていたのです。

しかしコロナによるパンデミックが起きました。4店舗のうち2店舗は、京都の一番の繁華街である河原町と錦市場にありましたが、コロナによってインバウンドも国内観光客も壊滅的となり、大きな影響を受けました。

コロナ前はフランチャイズで店舗を出す計画も進めていて、コロナがなければ2020年には実現していたでしょう。フランチャイズは「佰食屋1/2」という店名で、100食の半分の50食を提供する店として、2019年6月から直営で実証実験を進めていました。この実験店がうまくいったらフランチャイズ展開を始めようとしていましたが、コロナによって計画はとん挫しました。

佰食屋1/2は、50食提供で従業員は2人だけ、勤務時間も6時間という短時間でしたが、実験店では損益分岐点を越えたのはもちろん、2人で経営して十分生計が立てられる状態になっていました。稼げるお金はコンビニオーナーと同じくらいのイメージでしたが、その働き方はコンビニオーナーのように長時間働き詰めというものではなく、かなり楽なものでした。

計画ではフランチャイズの加盟金が300万円で、ロイヤリティについては取るか取らないか、未定でした。ただ決めていたのは、300万円の加盟金は私たちが取るのではなく、フランチャイズに挑んでくれる人たちの保証金として役立てようということです。

どういうことかというと、万が一フランチャイズがダメになったとき、加盟金をその人の退職金代わりに戻ってくるお金にするということです。経営した年数によって返還率が変わり、たとえば最初の3年で辞めた場合の返還率は0%ですが、5年続けたら返還率50%で150万円、手元に戻ってくるというイメージです。

お店の経営者というのは失業保険もなければ退職金もありません。フランチャイズに挑戦する人のセーフティネットとして、そういう仕組みを作ろうと計画していました。しかし、それもコロナによって世に出ることはありませんでした。

 

コロナによる苦境の中で見つけた佰食屋の新しい目標

(中村)
コロナの影響はまだしばらく続き、お客さんに来てもらうお店や施設は、あと2年くらいは完全に戻らないと思います。とりわけ京都は観光客で持っている町ですから、その影響は大きいです。インバウンドが完全復活するのも、まだまだ時間がかかるでしょう。

こんな状況ですから、私は新たなお店や集客施設を作るのはリスクだと思うようになりました。フランチャイズ計画はとん挫しましたし、今後その計画が復活することはないでしょう。

私はそもそも、飲食店というのは「おいしさ」というすごくいい価値を提供できるものなのに、それを広げるには店舗を作り続けるしかないというのがもったいないとずっと思っていました。
たしかに佰食屋のいまの形は、売上が右肩上がりになるものではありませんから、新しい店舗を出さない限り売上は拡大できないように見えます。でもコロナをきっかけに、私は飲食店の成長は、店舗展開だけではないと考えるようになりました。

コロナの流行が起きて飲食店経営の限界が見えたようなこの世の中に、一石を投じたいと思っています。飲食店の持つ「おいしさ」という価値を、店舗展開ではない別のどこで生かせるか。それを考え続けて見つけたのが、「防災」という領域です。

 

毎日完売する佰食屋が手掛ける「おいしい非常食」

(中村)
飲食店ではたくさんの人が働いていて、その人たちが作るたくさんのおいしいものが提供されています。でもそんな世の中なのに、なぜか「おいしい非常食」は少ないです。

日本は災害大国です。最近は震度5レベルの地震が頻発していて、南海トラフを震源とする地震もいつ起きるかわかりません。台風も超大型のものが目立つようになっています。そんな災害大国の日本なのに、非常食となるとおにぎり、パン、カップラーメンなど、どうしても炭水化物に偏りがちで、それもおいしいとはいえません。

私は災害の多い日本だからこそ、みんなが安心して食べられておいしいと思える非常食が必要であり、そんな非常食を提供する役割を、日本にたくさんある飲食店が担うことができるのではないかと考えるようになりました。

そう考えて、賞味期限が長く持ち、常温でもおいしい「非常食」を開発しています。2022年の夏頃にはお披露目できると思っています。

 

ほかの店にはない力が創る新しい飲食店の姿

(中村)
私は10坪ほどの小さなお店の経営者ですが、店は小さくとも、ほかの店にはない力のあるお店が作れたと思っています。そんな私がいま開発している非常食は、店舗展開ではなくおいしさを別の形で提供する、飲食店の新しいやり方です。

非常食は物販で売っていく計画です。それを実現できれば、私と同じような小さな店をやっている人でも可能になります。店舗を増やすことで成長を目指すのではなく、どこかの工場と提携して自分のお店のおいしさを届ける商品を作るという形の、これまでとは違う、飲食店経営の新しい姿です。

 

ローリングストックの仕組みで非常食を美味しくいただく

(中村)
いまのところ考えているのは、非常食は通販で販売するのではなく、京都にふるさと納税をしてもらうことで納税者に半年に一度自動的に非常食が届く、いわゆるローリングストックという形でやりたいと考えています。

非常食を個人で管理すると、賞味期限が切れてしまうことがよくあります。でも自動的に半年に一度届くようにしておけば、個人ではなく企業や行政が管理するようになります。新しい非常食が届いたとき、前回のものが残っていたらその半年間は災害がなかったということです。そのことをお祝いしながら前回分の非常食を食べるようにすれば、賞味期限も管理できますし、非常食を食べ慣れることもできます。

日本は、9月1日が防災の日で、3月11日が東日本大震災のあった日です。この9月と3月に非常食をお届けする仕組みにすれば、半年に一度、災害意識を高めることにもなるでしょう。

 

中村さんの地元愛「京都に貢献したい」

(中村)
ふるさと納税による仕組みづくりを考えているのは、私の京都愛からです。私自身も京都に納税するため、お店を絶対に京都から外に出すつもりはありません。私が作ったお店に関わる税金は京都で納めたいし、お店に全国から人を集めて、お店を含め京都中にお金を落としてくれるようにしたい。佰食屋がそんなところになればいいと思っています。

(光山)
僕は地元に納税するという意識はあまりないですが、自分の店に関する仕入先はすべて地元の武蔵野市にある業者を使っています。それに関わるお金がどのくらい地元に落ちているかはわかりませんが、そういう意味での地元愛は似ているかもしれません。

中村さんの佰食屋はほかの店と比べて突き抜けた力があるので、僕としてはもっと売上を伸ばす形を取った方がいいと、どうしても思います。そうやってもっと突き抜けてもっと名前が知られるようになれば、非常食のような、店舗経営ではないところに手を広げるのもやりやすくなるでしょう。

 

お店は「自分の夢を叶える場所」

(中村)
私にとってお店とは、「自分の夢を叶える場所」です。

私は、自分のお店で多くの人においしいものを食べてもらうという夢を叶え、さらにお店の提供する価値をいろんなものに派生させるという夢を描いています。みんなにもその夢を見てもらいたいと思っています。私にとって佰食屋というお店は、そんなことを可能にする、ダイヤモンドの原石のようなものです。

自分のお店の価値を派生させるための商品は、まさにいま開発中です。「こんな商品、これまでなかったよね」「これが家庭に入ってきたら、どんな生活ができるんだろう」とワクワクしてもらえるような、そんな商品になる予定です。

京都の小さな定食屋が考えた新しい商品が、みんなの未来を少し変えられるのではないかと、そんな夢を描いて頑張っています。

 

 

 

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お店ラジオについて

執筆 アキナイラボ 編集部

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