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お店ラジオ 2022/02/20 2023/10/19

“100食限定”が生み出す価値とは?想像できないほどの社内外双方のメリットがあった。

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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFM・FM大阪で毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。

今回のゲストは、毎日完売が続く人気の定食屋「佰食屋」のオーナー、中村朱美さんです。
佰食屋は100食限定で、毎日の営業時間はなんと3時間半。中村さんはどんな考えでこんなユニークな経営をしているのでしょうか。詳しくお聞きしました。

中村さんのお話を紹介する第1回は、佰食屋が昼のみの営業にこだわる理由でした。そこには中村さんの働き方へのこだわりと、佰食屋の集客の秘訣がありました。

2回目は、「佰食屋の目指すもの」についてです。フードロス削減、SDGs、働き方改革。中村さんのお話からは、現代社会の課題になっているワードが次々と飛び出してきました。

この回には、お店ラジオ初回のゲストで人気焼き肉店「肉山」の創業者、光山英明さんもコメンテーターとしてご参加いただきました。

 

この記事の目次

  1. 「100食限定」がもたらす効果はフードロス削減だけじゃない
  2. やさしさで生まれた利益は従業員に還元
  3. 飲食店では異例。佰食屋には残業の概念がない
  4. 従業員は有給休暇完全消化がアタリマエ
  5. 何をするかは全部従業員が自分で決める
  6. 実際に働いているのはごく普通の人
  7. 原価率50%なのに儲けを出せる理由

 

「100食限定」がもたらす効果はフードロス削減だけじゃない

(中村)
佰食屋は100食限定ですから毎日100食分の食材を仕入れていて、100人のお客さんに100食提供できたら、冷蔵庫には何もないくらいの状態になります。
そうすると当然フードロス削減になりますし、それだけでなく従業員の労働時間も減らせます。従業員が冷蔵庫に何が残っているかを確認して、翌日何をどれくらい発注するかを考えて手配する仕事が全部なくなるからです。

食材は定期便でオッケーです。地元の食材業者さんとしても、同じものを同じ量だけ納品すればいいとわかっているのでやり取りもしやすいですし、一年の中で波もないので、安定した利益が見込めます。そうやって地域とともに、安定して長く続く経営をしたいと思っています。

(光山)
どんな食材が残っていて何をどれだけ手配するかは結構手間がかかる仕事なので、それがないのは従業員にとっては楽でしょう。

 

やさしさで生まれた利益は従業員に還元

(中村)
「101人目以降のお客さんを惜しいと思わないか」とよく聞かれますが、不思議とそういう気持ちは湧いてきません。101人目以降の数を増やしたら、結局仕込みの量も増えるし、発注の数も合わなくなるし、いろいろと困るのです。

でも例外があります。それは従業員が「やさしさを発揮したいとき」です。どういうことかというと、たとえば外国から来た観光客が、大きなスーツケースを持ってお店の前の完売のお知らせに「がーん」とショックを受けているときです。わざわざ海外から、京都の辺鄙な住宅街まで来てくれたのに食べられないなんて気の毒だと従業員が思えば、食材が残っている限り従業員の采配でこっそりご案内してもいいことになっています。

そんなふうに、従業員のやさしさで毎日101食、103食とズレた分については1ヶ月単位でそれらを全部足して、やさしさで生まれた利益として従業員全員にボーナスとして還元しています。

 

飲食店では異例。佰食屋には残業の概念がない

(中村)
うちのお店には残業の概念がありません。そもそも従業員に残業を可能にする36協定を結んでいません。うちは絶対に残業ゼロで、従業員のみんなは定時でタイムカードを押すために仕事の終わり時間の1分前に並んでいるくらい、ちゃんと帰ります。

採用面接でも「うちは残業代で稼げません」と伝えていて、それを承知した人しか採用しません。残業もいとわずどんどん稼ぎたい人は、うちには向いていません。

営業時間は3時間半ですが、正社員は9時から夕方17時45分までが勤務時間、休憩45分の8時間勤務となっています。アルバイトは、自分の決めた好きな時間で働けます。正社員でも短時間勤務をしたいなら可能です。いまは正社員が4人、アルバイトが8人の12人体制です。

こんなお店で従業員はどのくらい稼げるかというと、百貨店のレストラン街などに入っている大手のチェーン店で10年くらい働いていた40代の男性がうちに転職してきたとき、うちの初めてのお給料が前職の店での最後の給料とほぼ同じだったそうです。具体的な金額は控えますが、そのくらいのイメージで少ないという声はありません。

 

従業員は有給休暇完全消化がアタリマエ

(中村)
従業員には有給休暇を完全消化してもらっています。どうやってそれを可能にしているかというと、実は従業員任せです。有給休暇取得を私に事前に申告する必要はありません。取りたいときに自己申告で取れるようになっています。

なぜそれでお店が回るかというと、理由は2つあります。1つは人が足りなかったら現場がどうなるかは従業員自身が一番わかっているので、有給休暇がかぶらないように、従業員同士で相談しながらうまくバランスをとってくれるからです。誰かが有給休暇を取っているから人手が足りないという日はありません。

でも、突然熱が出たり子どもが風邪になったなど、突発的なことは起きます。うちのお店では常時5人必要ですが、突発的な理由で4人しか出勤できない日はあり得ます。そんな日はどうしているか。実は、お客さんにはあえて言うことはありませんが、4人の日は、1人分に相当する20食を減らして、80食で完売することにしているのです。それが、お店が回る理由の2つ目です。

働き手が4人、提供する数が80食なら、1人分の負担は普段と変わりません。だから従業員としても、「あいつが休んだせいで忙しい」ということにはなりません。

たしかにその日の売上は減ります。ですが、従業員に与えられた有給休暇の日数は規定で決まっていますから、全員が完全取得をしたとしても年間の売上想定に大きな影響はありません。

(光山)
飲食業界では、有給休暇はほとんど取れません。人が足らないからです。誰かが休んだら穴が開いてしまうような状況ですから、従業員としては有給休暇を取りたいなんて言えませんし、取らせないところがほとんどです。

残業も多いですし、残業代を払ってないケースも多いです。東京では、大手になればなるほど状況はひどくなって、なかには最低賃金より低いお金で働かせているところもあります。そんな飲食業界において、佰食屋の労働環境は理想的です。

 

何をするかは全部従業員が自分で決める

(中村)
うちは、普通の会社がやるような社員研修はやっていません。それどころか、朝礼や終礼もやりません。その代わり私がやっているのは、従業員に自己決定権を渡すことです。
全部自分で考えて、自分で決めて、行動してもらっています。

そういう形で働いていると、従業員は、このお店は自分のお店だという気持ちになってきて、当事者意識も湧いてきます。そもそも朝礼や終礼はみんなの出退勤時間がバラバラなので難しいのですが、そんなことをしなくても、従業員のみんなは毎日100食売るというたった1つの目標に向かう部活のような感じで働いてくれています。

 

実際に働いているのはごく普通の人

(中村)
自分の裁量権が多い職場だというと優秀な人が多いのではと思われるかもしれませんが、うちはハローワークでしか採用していませんし、うちに来る人が特別優秀ということはないと思います。面接が苦手だという人も来ますし、みんな普通の人です。

うちの店はやることがシンプルです。メニューは3つしかありませんし、それを100食売ることを毎日繰り返すだけです。なので、誰でも1週間くらいで仕事には慣れます。

ただ、うちのお店で意識してやっていることといえば仕事をできるだけ細分化することです。すべての仕事は絶対に3人以上ができるようにしています。たとえば、お肉をさばく作業です。うちは、国産牛のウチヒラ(=うちもも、うしろ脚の付け根部分に位置する部位)という部位を使いますが、ウチヒラの10~15キロくらいのブロックをさばく作業は、かなり難しいです。

でも、そんな仕事でも同じことを何十回と続ければいずれ慣れて、誰でもできるようになります。だから肉をさばく仕事も、うちでは誰にでも任せられる仕事になっています。仕事を細分化して作業に落とし込み、ひたすら同じことを繰り返せば再現性は高まるのです。

 

原価率50%なのに儲けを出せる理由

(中村)
今、うちの店の原価率は50%くらいです。飲食店の原価率はだいたい30%前後といわれていますから、それよりは高くなっています。

では、どこで利益を出しているかというと、ほかのお店でかかっている費用がうちではかからないところです。

たとえば、採用です。うちの採用はすべてハローワークを通じての採用なので、お金は1円もかかっていません。

それから宣伝広告費です。うちは宣伝に1円もかけていません。
それでどうやって集客しているかというと、たくさんのお客さんがSNSを通じてやってくれています。佰食屋に来て「おいしい」と思ってくれたお客さんは、自分で写真を撮り、ハッシュタグをつけて、どんどんシェアしてくれます。うちは何もしていませんが、その効果がものすごいです。

このような形で、広告宣伝費、採用費にお金を使わない分だけ、食事の原価率を上げてもうちは利益が出るようになっているのです。

 

今回のお話はここまでです。順風満帆に見える佰食屋ですが、コロナによる影響は大きなものでした。中村さんのプランも変更を余儀なくされましたが、そこは中村さんですから、またユニークな未来を描き始めています。次回はそんなお話です。

 

 

 

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お店ラジオについて

執筆 横山 聡

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