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お店ラジオ 2022/02/22 2023/10/19

3時間半で完売するのに“昼のみ営業”にこだわる理由

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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFM・FM大阪で毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。

今回のゲストは、毎日完売が続く人気の定食屋「佰食屋」のオーナー、中村朱美さんです。
佰食屋は100食限定で、毎日の営業時間はなんと3時間半。中村さんはどんな考えでこんなユニークな経営をしているのでしょうか。詳しくお聞きしました。

中村さんのお話を紹介する1回目は、佰食屋が昼のみの営業にこだわる理由です。そこには中村さんの働き方へのこだわりと、佰食屋の集客の秘訣がありました。

この回には、お店ラジオ初回のゲストで人気焼き肉店「肉山」の創業者、光山英明さんもコメンテーターとしてご参加いただきました。

 

この記事の目次

  1. 佰食屋の限定100食という数字「100」は感覚で決めた
  2. 100食限定でも営業時間中はめちゃくちゃ忙しい
  3. 100食限定にした理由は帰りたいから?
  4. 昼夜の二毛作の営業をあえてしない理由がある
  5. 佰食屋には飽きられない仕掛けがある
  6. ランチ1,000円というこだわりはお客さん目線での最適解
  7. 初心を思い出させてくれる曲が今も支えてくれる

 

佰食屋の限定100食という数字「100」は感覚で決めた

(中村)
私のお店「佰食屋」は、名前の通り1日100食限定のお店です。
人べんのついた「佰」の文字を使っているのは、人を大切にするお店にしたいという思いからです。

国産牛ステーキ丼専門店をうたっており、メニューは3つだけ。営業時間はランチ営業のみで、提供するのは3メニュー合計で100食。100食限定にすることで、働き方改革やフードロス削減などいろいろなことが目指せる、そんなコンセプトのお店になっています。

ラーメン屋さんで、「スープがなくなり次第終了」とうたうお店がありますが、そんなお店で本当に営業時間終了前に閉まっていたことって、ほとんどないと思いませんか。でもうちは違います。本当に100食限定で、100人の人が来たら、それがたとえ13時だろうとお店は閉まります。

食数で限定するイメージは最初から持っていました。ただ、私には飲食店の経験はなかったので、これくらいの食数だったらいけるかなというざっくりしたイメージで、50食でも200食でもよかったのですが、日本人のキリのいい数字といったら100かな、という感じで決めました。

(光山)
佰食屋は100食限定なので売上にも限界がある店です。一方、僕の経営方針は「来店客数で勝負する」というもので、来店客数の数字を目指せば、おのずと売上もついてくるという考えです。来店客数を意識しているという意味では似ているなと思っており、佰食屋のことは追いかけていました。

 

100食限定でも営業時間中はめちゃくちゃ忙しい

(中村)
お店は小さくて、10坪、席数は14席です。今はソーシャルディスタンスが必要なので12席になっています。
営業時間は11時オープンで14時半までの3時間半。席は平均10席稼働で、営業時間内に7回転で70食。残り30食がテイクアウトというイメージです。
ランチだけで100食いくのは結構難しくて、営業時間内は従業員の5人が走り回っています。

3種類のメニューは、看板メニューの「ステーキ丼」と、それとまったく同じ材料をおろしポン酢で食べる「おろしステーキ定食」、ステーキほどの大きさにできない小さなお肉をミンチにして作った国産牛100%の「ハンバーグ定食」です。

ステーキ丼とハンバーグ定食は1,000円+消費税で、テイクアウトもできます。ハンバーグ定食は20食限定です。おろしポン酢ステーキ定食は1,100円+消費税で、イートインのみになっています。

 

100食限定にした理由は帰りたいから?

(中村)
なぜ100食限定で営業時間3時間半なのかというと、シンプルに私が帰りたいからです。

創業したての頃は昼だけでは100食売れなかったので、夜も営業をして、昼夜合わせて100食でした。
できたら昼だけの営業にしたいと最初から思っていて、昼だけにできるようになったのが、創業から3ヶ月後くらいです。

ランチで完売を目指したのは、私自身が働くのは昼間だけにしたかったからです。私のように、昼間はしっかり働いて、夜は家に帰りたいと思っている人は多いのではないでしょうか。
体力的にも楽ですし、とくに女性でお子さんがいらっしゃる方はそう思っている人が多いでしょう。そんな働き方ができる飲食店が日本にひとつくらいあってもいいだろうと、取り組み始めました。

(光山)
僕は働き方改革のことはそんなに意識している方ではありませんが、佰食屋の働き方はすごく良いものだと思いますし、それができるのはお店に力があることの証拠です。
ただ、そこまでの力があるなら人を変えれば、昼夜で二毛作、朝昼夜で三毛作も、働き方改革を意識しながら可能だと思います。

 

昼夜の二毛作の営業をあえてしない理由がある

(中村)
私は教育大学出身で、大学のときに学んだ心理学にすごく興味があり、心理学を取り入れた経営をしたいと思っています。お店で二毛作というのは、人を変えたり、メニューを変えたり、業態を変えたりと、やろうと思えばできるでしょう。

でも、人々の心理はお店の電気が夜についていれば、たとえ夜は業態が変わったり全然違うメニューだったりしても「この店は昼間だけじゃないんだ。じゃあ別に昼に行かなくてもいいや」となってしまうものです。

よくあるのが、閉店セールだといいながらずっと閉店しない店です。そんな店の閉店セールに集客効果はまったくありません。お店は、人々に「いつでも行ける」と思われたらなかなか来てもらえなくなります。

ですから、佰食屋にとっては夜にお店の電気が消えていることが大事で、「昼しかやっていない」ことが大きな集客効果を生むのです。京都に観光に来た人も、「佰食屋は昼しかやってない。だから、ランチは佰食屋に行こう」と考えてくれます。昼しかやってないことをみんなのイメージに刻みこむことが集客のポイントなのです。

夜に営業しないのは、お店の電気を消したいことと、もうひとつ理由があります。もし夜に営業をしていて、火事や泥棒などなにかの問題が起きたとき、お店の一番の責任者は私なので、絶対に私が呼び出されるからです。

私は経営者ですがひとりの母親でもあり、夜は子どもとゆっくり過ごしたいと思っています。私生活を脅かすような不安がある状態で夜を過ごしたくないのです。だからお店を夜だけ人に貸すこともしたくありません。

私のように私生活を大事にしたいと思っている人は少なくないはずです。そんな人たちの代弁者として、私は私生活を大事にする働き方を実践し、訴え続けたいと思っています。

 

佰食屋には飽きられない仕掛けがある

(中村)
佰食屋はメニューが変わらないので、「お客さんから飽きられる心配はないか」とよく聞かれます。
でも、焼き肉やお寿司は飽きないし、いつでも食べたいと思いますよね。それはなぜかというと、焼き肉やお寿司はみんなのごちそうだからです。すき焼きも同じです。
そんなごちそうは、毎日食べるものではありませんが、週に1回や月に1回、大事なときに食べたくなるメニューです。

私がお店を作るときのコンセプトが、「ごちそうを身近に」というものでした。私たちの出すステーキはごちそうですし、焼き肉やお寿司と同じで、飽きることはありません。そんなごちそうを1,000円で食べられるのが、うちのお店です。

別にうちに毎日来てくれる必要はありません。月に1回くらい来てくれたらいいのです。でも月に1回のごちそうは、それを1,000円で食べられる佰食屋に行きたいなと思ってほしい。そういうコンセプトでお店を作りました。

 

ランチ1,000円というこだわりはお客さん目線での最適解

(光山)
佰食屋はもう突き抜けた力を持っています。次なる展開として、ナイフとフォークを使ってステーキを出して、たとえば、2,000円の単価で限定50食、倍の値段で人数は半分という店も十分可能だと思います。

(中村)
私は、自分がお客さんであるという顧客目線を忘れないようにしています。私は今、子どもがいるので夜はあまり外食に行けません。外食するならランチですが、私自身ランチに2,000円はなかなか出せません。ランチは1,000円くらいにしたいと考えている人はすごく多いと思います。

最近は物価も上がってきて、1,000円ではそれほどいいランチを食べられなくなっています。でも、そんな状況だからこそ、佰食屋はみんながごちそうだと思えるメニューを1,000円で出し続けたいです。儲けたいというより、私がその価格で食べたい。うちのお店の根本には、そんな私の気持ちがあります。

 

初心を思い出させてくれる曲が今も支えてくれる

(中村)
お店にまつわる思い出に、ブルーノ・マーズの「Just The Way You Are」という曲があります。この曲は、創業から3ヶ月くらいの時期ですが、夜営業もしていたときによくかけていました。

当時はお店でかけるCDを買うお金もなく、お店ではずっとラジオを流していたのですが、お客さんでDJをしているDJ Mellowさんという方が、お店でかけられるようにとCDをくれました。その中に入っていた1曲がこの曲でした。

その時期の佰食屋はまだ流行ってなく、夜にお店を開いても来てくれるのは5人だけという日もありました。まだまだ不安いっぱいだった時期で、この曲を聞くと当時を思い出してとても切なくなります。でもだからこそ、この曲を聞くと初心に帰れるのです。

あのときはつらかったけど、そこで頑張ったから今がある。この曲を聞くと、そんな思いで、胸がきゅんとなります。

 

今回のお話はここまでです。次回はこんなユニークな経営をしている佰食屋はなにを目指しているのかについて、詳しくお聞きしています。

 

 

 

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執筆 麻衣 大西

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