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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。
今回のゲストは、カレーハウスCoCo壱番屋の創業者、宗次德二さんです。インドをはじめとする海外にも多数出店し、店舗数世界一のカレーチェーンとしてギネスにも認定されているココイチ。そんなココイチを作り上げた宗次さんがどのような考えで経営を行って来たのかを掘り下げていきます。
宗次さんのお話を紹介する第1回は、ココイチをオープンするまでの経緯でした。
2回目は、社員のれん分けシステムや、「一日に1,000通のアンケートハガキに目を通す」という宗次さんの狂気的なこだわりについてです。
この記事の目次
オープンの時は、目立たない方が良い
喫茶店を二つやっている私たちがカレー屋を出すということで、お客さんもたくさんみえたんですが、最初はアルバイトもパートも慣れていなくて、なかなかうまく行きません。
ご飯が足りなくて喫茶店から運んできたり、ぬるい状態のままカレーを提供してしまったりとたくさん失敗をしてしまい、平常営業に戻ると数字はガタッと落ち込んでしまいました。
だからオープンして最初に話題を作ったりしてお客さんを呼び込むのは得策ではないんだなと学び、そこからは目立たずオープンしようと考えるようになりました。
接客さえよければリピーターはつく!値下げや話題作りはしない
そんなうまくいかない状況でも、自信だけはありました。カレーの味もそうですが、やはり接客に相当力を入れていたので、何とかなると思っていました。
接客がいいからあのお店に行こう、となる人はそうそういませんが、カレーが美味しいと聞いて行ったら接客の良さに驚く、という人は多いです。
こうなると少しずつリピーターがついていき、じわじわと売上も上がっていきました。
話題作りをしたり、安く売るようにしたり、デカ盛りにしたり、インスタ映えを狙ったり…それはそれでいいのでしょうけど、そうではなく接客がいいと思って欲しかったのです。私としてはこのような着実に拡大できるようなシンプルな考え方が合っていました。
フランチャイズをスタート!社員の独立を促す「ブルームシステム」
直営4店舗のとき、社員独立制度も作りました。
休憩室で社員と話したりしていると「将来喫茶店をやりたいんです」「父の和食屋を継ぎたいんです」とみんな独立意欲が旺盛であることに気がつきました。ならばフランチャイズで一般の加盟店を募集するのも良いですが、社員に独立してもらう方式もいいなと考えるようになります。
和英辞典を開き、bloomという単語が「開花する」という意味だと知って、このシステムをブルームシステムと名付けました。
当時はすでに居酒屋さんや弁当屋さんなど、フランチャイズはたくさんあったのですが、その仕組みをそのまま転用するようなことはしませんでした。
私は今まで、ココイチもそうですが他の事業でも一度もコンサルタントをつけたことはなく、全て現場でヒントを拾い上げてきました。現場に成功の鍵があると考える、徹底した現場主義です。
ロイヤリティはなし。加盟店にも成長してほしい!
ココイチのフランチャイズにはロイヤリティがありません。その代わりにセントラルキッチンで大量調理されたものを購入してもらうことで利益を得ています。他社さんのフランチャイズを見ていると3%くらいのロイヤリティをいただけるような価値はあるという自信はあったのですが、あえて二重に利益をいただかず加盟店にも成長してもらった方が良いと考えていました。
オーナーに相応しいかを見極める難しさ…リスクを下げるために障壁を用意する
フランチャイズの人選びはすごく難しいです。契約まではみなさんいい人なのですが、始まってみると「そのやり方をするのなら認めなかったよ」ということも多いです。
だからしっかりした人を選ぶ確率を高めるために、一般の人は基本的にお断りして社員のみを対象にしています。
5年ほど働きながら等級を上げていってもらうのですが、その過程で人間性もじっくりみることができるので、ここから判断すればよほど悪い人はいなくなります。
ただ、自分に甘い人はいます。今日は雨だから早く閉めようとか、ライスがなくなったから閉めようなどの契約の条項に関わるような違反をしているお店には厳重注意をします。
お客様からご意見のハガキをいただいたら、私は閉店1時間前くらいに店の前に行ってチェックをして、注意をしても聞かないようなら契約解除をしたりします。ただ、ここまで行ったのは数例だけです。
社長自らアンケートハガキを読む。なんと一日平均1,000通!!
ココイチのカウンターの前にはハガキがあって、そこにアンケートやご意見などをご記載いただいて送れるようになっています。このお客様からのアンケートハガキは100%私がチェックするようにしていました。毎日平均で1,000通ほどをチェックしていたので、毎日3時間ちょっとかかっていました。
厳しいご指摘をいただくとすごく嬉しくて、待ってましたとばかりにワープロ打ちして全店にケーススタディを行ってもらいます。
何年何月何日の何時にどこの店舗で、と店名も上げて「こういうご意見をいただいている」と共有をしていました。
大変な手間で、毎月何十枚ものコピーをとることになっていましたし、一枚70円の負担なので毎月200万円以上もかかるという大変なコストを払っていましたが、それほどの価値があると思っていましたし、今でも続いています。
なぜハガキなのかというと、店内にアンケートを出してもらうと、悪い意見は店長が真っ先に取り除いてしまう可能性があるからです。ハガキならば私に直接届くので間違いありません。
このように、社員は厳しめの目線で見ています。お客様第一に考えると、どうしてもそうなってしまうのです。
お店もたくさん巡回していました。その都度カレーを食べていたので、一日5、6食は平気で食べていたので、日本一カレーを食べた人ではないかと思っています。
お店を訪れると、何分何秒でサラダが出てきたとか、保温がしっかりなされているかとか、フロアや厨房の動きがどうなっているかなど、チェックできるところがいくらでもあります。
いい店を作ろうと思えば、休んでいるヒマなんてない
こういうことにこだわろうと思うと、もう休んでなんかいられません。
他の飲食店経営者の方を見ていていると、食事会などで集まっていたりもしますが、私からするとそんなに呑気でいいのだろうか、と思います。私はほとんどそういう会には参加しませんし、友人もおりません。現場が一番の先生ですので、他の経営者から学ばなくても良いと思っています。
一度驚いたのは、あるときに知り合った飲食経営者で、一度も自分のお店に顔を出したことがないという方がいたことです。業績が上がらないと福利厚生を良くしてあげられませんから、その状態で顔を出すと社員も「何しに来たんですか」ということになります。それで行きづらくなっているのかもしれません。
増収増益さえ続けていれば全部改善し続けられますから、社員もやる気が出ますしお店も良くなり、全てが好循環になります。
いい店を作るのは難しいです。同業他社さんよりマシなくらいのお店くらいなら、少しの努力でできますが、ずば抜けていいお店を作ろうと思うと並大抵のことではできません。
評価を店舗ごとにAからEまでつけていて、Bランクだと「お客さんからお金をもらうなら当たり前」くらいのレベルでAランクは「これは素晴らしい、モデルにしたい」というレベルなのですが、Aランクのお店はなかなかできませんでした。
ちなみにAランクのお店は何がいいのかというと、パートさんです。パートさんがまとまってリーダーもいて、社員がいなくても問題ないというところはすごくいいです。
このようなお店が生み出される条件はいくつかあるのですが、特にお店の雰囲気はすごく大事だと思います。お客様に喜ばれていて楽しいんだ、自分も幸せなんだ、という空気は伝播していき、パートさんにも影響を与えます。
それは日々継続してやらないといけないことで、そうそう上手くはいかないですね。
今回はここまでです。次回は特徴的なトッピングシステムや、社長としての心構えなどについてです。