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お店ラジオ 2022/12/14 2024/03/14

細かいことを気にしなくても、増収増益が全てを癒す。ココイチ創業者の型破り経営術

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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。

今回のゲストは、カレーハウスCoCo壱番屋の創業者、宗次德二さんです。インドをはじめとする海外にも多数出店し、店舗数世界一のカレーチェーンとしてギネスにも認定されているココイチ。そんなココイチを作り上げた宗次さんがどのような考えで経営を行って来たのかを掘り下げていきます。

宗次さんのお話を紹介する第1回は、ココイチをオープンするまでの経緯についてでした。
第2回は、社員のれん分けシステムや、「一日に1,000通のアンケートハガキに目を通す」という宗次さんの狂気的なこだわりについてでした。

第3回の今回は、特徴的なトッピングシステムや、社長としての心構えなどについてです。「増収増益が全てを癒す」「撤退は絶対にしない」「社長はどこまで行ってもよそ見はできない」などの名言が飛び出しました。

この記事の目次

  1. メニューが多いスタイルは最初から決まっていた
  2. トッピング制度を導入し客単価アップ!
  3. 増収増益さえできれば、原価率もFL比率もあまり気にしなくていい
  4. 「撤退は絶対にしない」大抵の場所ならなんとかなる
  5. 他のお店のことは気にしたことがない。ひたすら現場を大切にする
  6. 長期の計画を立てても、どうせその通りにならない。その時々を一生懸命やる
  7. 増収増益が全てを癒す。社長はどこまで行ってもよそ見はできない
  8. あれもこれも、という姿勢で成功できる時代ではない

 

メニューが多いスタイルは最初から決まっていた

ココイチはメニューのバリエーションが多いことが一つの特徴ですが、これは初期から方向性は決めていました。当時は何かが乗っているカレーといえばカツカレーくらいのものでしたが、そもそもカレーにはなんでも合うのではないかと思っていたので、チーズやイカの唐揚げ、ハンバーグなどを乗せたメニューを10個ほど考えました。私はどこかのお店を参考にしたということは基本的にないですから、おそらくココイチがこのスタイルの走りだと思います。

次に、ライスの量についてももっと柔軟でいいのではと考え、100g刻みで好きな量を食べていただけるようにしました。ライスの量を調節するだけならほとんど手間もかかりません。

 

トッピング制度を導入し客単価アップ!

初期からメニューは豊富でしたが、実は現在のトッピングのようなものというより、単純にいろんなメニューがあるという状態でした。「カツを2枚乗せて」「カツにプラスでチーズもお願い」などの要望には答えていましたが、知る人ぞ知るというものです。

やっぱり知らない人にも教えるべきだということになり、メニューに写真を載せるようにし、こういう組み合わせもできます、と提案するようになりました。
これにより今のようなスタイルが完成し、結果的に客単価も向上しました。

トッピングにはお客様の声も取り入れます。しかし基本的にお客様はある意味わがままというか、深く考えられていないことも多いので、どのくらい取り入れるかはしっかり考える必要があります。
トッピング以外にもさまざまな声が寄せられますが、同じスタンスです。
「値下げしてください」というご要望などは毎月500通くらい来ていましたが、それらは全て無視していました。

 

増収増益さえできれば、原価率もFL比率もあまり気にしなくていい

メニューのバリエーションが多いと原価の管理が面倒になるのではないかと言われたりもするのですが、そもそもあまり原価率は細かく考えません。もちろん最低限のことはしますが、基本はどんぶり勘定です。値引きをしない分粗利益は一定ですから、売上さえ伸ばせば利益も自然と増えていきます。

だから増収増益さえできていればあまり細かいことは関知しなくても構わないと思います。FL比率(売上全体に占めるFood=食材費、 Labor=人件費 の比率)についてもあまり考えません。

特に食材は全店共通で地域差もなく、生鮮品がなくロスもほとんど出ないのでそんなに意識する必要がない業態なのです。
また、FL比率が不適切だと上手く行かないという話はよく聞きますが、それは手を抜いているからです。一生懸命にやって売上さえ伸ばせば問題ありません。
だから私たちはとにかく毎期の目標を何が何でも必達するということだけを考えています。

 

「撤退は絶対にしない」大抵の場所ならなんとかなる

また、どこにお店を出すかもそんなに気にしていなくて、市場調査をやったこともありません。ほとんど感覚で決めます。それでいて撤退は基本的にしないという方針で、私がいた頃の500店舗のうち撤退したのは完全にダメだった1店舗のみです。

「儲かりそうだからここでお店をやりたい」と言っておきながら「やっぱりダメでした」とお返しするような自分勝手なことは僕にはできません。地域の人にも申し訳ないです。この方針が貫けるということは、大抵の場所なら大丈夫なのです。

売上があまりよくないとしたら、単純に母数が少ないというだけです。ニコニコ キビキビ ハキハキとお客様第一で接客をしていたら徐々に売上は上がっていき、3年ほど経つと普通の店舗くらいの売上になり、5年経つと地域一番のお店くらいにはなれます。
だから、場所は言い訳になりません。

それでもあまり売上が上がらないということであれば、私はそのオーナーに掃除をしなさいとよく言いました。
お店の周りを都市部なら三軒先まで、店長自ら綺麗にするように伝えます。目には見えないけど、その姿勢が変わっていき、少しずつ良くなっていきます。
数%の落ち込みならば、月に1人良い評価をしてくださる人が増えれば年間12人が増えることになり、その人の口コミで何十人かに広がっていくことで十分カバーできます。

 

他のお店のことは気にしたことがない。ひたすら現場を大切にする

他のお店のことは気にしたことがありません。他店が何をしようがどんな売り方をしようがいくらで売ろうが、本当に関心がありませんでした。現場の店長たちも、そんなことを気にしているようには見えませんでした。

ほとんどの人は「次の独立は自分の番だ」と希望に燃えていましたから。
やはりお店に従事すると、お客様に求められているんだというのが伝わってくるのです。背中越しにありがとうございました、と言うと「ああ、満足して帰られたな」というのが。

私もお店に行ったとき、邪魔にならないように端の洗い場のところで洗浄機をかけながら店内を観察するのですが、狭いお店なのでそこからでも全体が見渡せるようになっています。

そこでお客さんが食べ終わった時に「ありがとうございました」と言うとフロア担当者も気がついてお客様がレジに行く前にレジでお待ちできますし、注文待ちのお客様と目があったときに「あ、お待たせしてしまっているな」というのは目が合えば分かりますから「〇番さんまだですか」と言ったりすることができます。するとお客様は「自分達のことを気にしてくれているんだな」と分かるんです。

現場を大切にするということを徹底的にやると、お客様も満足してくれて、自分もそれで嬉しくなるわけです。

 

長期の計画を立てても、どうせその通りにならない。その時々を一生懸命やる

3年ごとの計画みたいなものは絵に描いた餅だと思っているので、そのような目標設定はしません。考えたってどうせその通りにはならないので、その時々を一生懸命やるしかないですし、それが経営だなと思っています。

だから私は、ひたすら昨対同月比で考えます。「一生懸命やった思いがあるのに100%に届かないのは、悔しくないか」と会議で言ったりします。本当は信賞必罰にしてダメな人はやめさせたかったのですが、人材不足でそれができないのが悔しかったです。

 

増収増益が全てを癒す。社長はどこまで行ってもよそ見はできない

私は不動産業からずっとお山の大将でやってきたので、人と協議したり根回ししたりするのが面倒臭くて仕方ありません。会議で反対意見を言われても、どちらとも言えないことは別として、基本的には自分の答えを持っていますから聞き入れません。

その代わり実績で示します。私も誰よりも一生懸命やって、増収増益を目指します。増収増益は全てを癒すし、全てを解決します。解決するというより、問題になりません。

だからとにかく健全に発展させ続けなくてはいけないので、どこまで行っても社長はよそ見なんてできません。その代わり手放したその日、振り返ってようやくやり尽くしたんだという実感を得ることができました。

 

あれもこれも、という姿勢で成功できる時代ではない

28年間あの小さなお店を出し続けて、その間もうずっと楽しかったです。幸せだから休みもいらなくて、経営以外のことで欲求を満たすという必要もほとんどありませんでした。
そしてお店に集中できたからこそ売上も順調に伸びて、多くの人に喜んでいただいたので、後悔はありません。

ワークライフバランスを…という考え方が主流になりつつあるように思いますが、飲食だとそのような考え方はやめておいた方がいいと思います。経営者の姿がお店にあるということで社員やお客様が納得してホッとしていただけるのであれば、それも経営者の仕事です。

本業のお店も一生懸命やるけど他のこともやりたいという、あれもこれもという姿勢で成功できるような時代ではもうないのではないかなあと思っています。

 

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執筆 横山 聡

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