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お店ラジオ 2024/05/02 2024/05/02

益々利益を伸ばす「もつ次郎」のビジネスモデル

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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を再編集したものです。

今回のゲストは、大学卒業後「ほっかほっか亭」のフランチャイズオーナーとして起業、その後、「ほっかほっか亭」がダイエー傘下に入るとダイエーへ入社し、“ミスターほっかほっか亭“と呼ばれる。退社後ゆで太郎の水信社長と出会いをきっかけに、自ら「ゆで太郎システム」を創業し、郊外型ゆで太郎の店舗拡大やもつ次郎との併設など新しいチャレンジを続ける、株式会社ゆで太郎システム 代表取締役 池田智昭さんです。

「ほっかほっか亭」のフランチャイズ店の開業から「ほっかほっか亭」への転職、ゆで太郎水信社長との出会いと、ゆで太郎システムの設立、そして、フランチャイズ展開のためのマニュアルづくりと教育システム。郊外型蕎麦屋の店舗拡大と、革新的なもつ次郎との併設型店舗の展開など3回に分けてお話しいただきます。

第1回は、ほっかほっか亭から始まったビジネスキャリアとゆで太郎との出会いについてお送りしました。
第2回は、ゆで太郎とゆで太郎システムやチェーン化のためのマニュアル化と人材育成についてお送りしました。
第3回は、蕎麦業界のイノベーション、蕎麦ともつ屋の併設、将来ビジョンについてお送りします。

 

この記事の目次

 

蕎麦業界におけるイノベーションの必要性と挑戦

私は、現在でも蕎麦業界のイノベーションは十分ではないと考えています。例えば、寿司業界においては、小僧寿しや小銭寿司の登場に続き、回転寿司が大きなイノベーションをもたらしました。これは飲食業界だけでなく、ユニクロなど多くの業界でも見られます。
しかし、まだ蕎麦業界ではそのような変革は起きていません。これは、恐らく蕎麦業界が既に利益を上げているからではないかと考えています。

私自身、蕎麦は原価が高いというイメージを持っていましたが、実は蕎麦はラーメンなどに比べて原価は低く、利益が出やすいのです。また、うどんは冷凍うどんがあり、家庭でも美味しく作れますが、蕎麦はまだまだお店で作る方が圧倒的に美味しいのです。また、我々のお店でも生麺を販売していますが、お店で食べる方が遥かに美味しいです。

また、昔からチェーン店の蕎麦は蕎麦粉の割合が低いという指摘がありますが、これには原価の問題だけでなく、蕎麦の品質の維持の点から割合を増やすことが難しいのです。我々がお店で打っている材料を製麺屋に持ち込み、試作してもらったことがありますが、我々が望むものはできませんでした。その結果、店舗での製麺を売り物にして全て手作りでやっていくことにしたのです。

 

郊外型蕎麦屋の運営と効率性

我々はお店では、それぞれのお店で製麺を行っています。それぞれの店舗で製麺を行うと効率が悪いと思わるかもしれませんが、実際には店内で製麺を行うことで原価を大幅に抑えることができ、配送費も抑えることができます。その結果、新鮮で美味しい蕎麦を低価格で提供することが可能となっています。

お店で蕎麦を打つには、製麺スペースが必要になりますが、郊外型の店舗であればスペース的には対応可能です。また、郊外型の店舗は家賃など固定費を抑えることが可能です。さらに、人件費は一定ですが、朝、昼、夜と一日を通じて売上があり、アイドルタイムに仕込みを行うことで、効率的に運営を行うことが可能です。しかし、そうした運営を行うためには、スタッフの育成が必要となりますので、我々はマニュアルを作成し、徹底的な教育を行っています。

 

蕎麦の価格変動と多店舗展開の戦略

お店での売上については、蕎麦が約55%を占めていて、その蕎麦の価格は駅蕎麦と同等の価格設定にしています。以前はもっと低価格でしたが、蕎麦自体の価格が過去10年で約1.5倍に上昇していて、価格維持をしたままでの経営が難しくなり、価格を上げざるを得なくなりました。

そして、最近ではゆで太郎の隣にラーメン屋やもつのお店などを併設する店舗を増やしています。ラーメン屋は水信さんがラーメン好きだからという理由で開業したのですが、主軸にする予定は今のところありません。
一方、もつ次郎は現在、約160店舗を展開しており、ゆで太郎システムのお店ではもつ屋が併設されているのがスタンダードとなっています。こちらは我々の多店舗展開戦略の一環として進めています。

 

蕎麦屋ともつ屋の併設ビジネスモデル

蕎麦屋ともつ煮屋の併設ビジネスモデルは、私が北関東に単身赴任していた時に思いついたアイディアでした。

その理由は二つあります。一つは、私自身がそのような店を利用したいという個人的な欲求があったということ。もう一つは、店舗スペースを有効に活用したいというビジネス上の理由でした。過去に、ゆで太郎を出店し過ぎ、店舗数を調整するため、一部の店舗を閉じることになったことがありましたが、ただ閉店するだけではもったいないということで、新たにもつ煮屋としての活用を考えたのが最初でした。

また、郊外型の店舗は、通常50坪くらいの建物を借りているのですが、ゆで太郎単独であれば、35坪あれば十分で、残りの15坪が未利用のままの店舗がありました。その未利用スペースを何かに活用できないかという課題があり、もつ煮屋を併設することにしました。

そして、2019年の2月頃に東京都心部で閉めようと考えていた店舗の空きスペースに、働くお父さんをターゲットにしたもつ煮の業態の定食屋を入れることにしたのです。蕎麦屋ともつ煮屋の併設はそうした課題への対策として非常に効果的でした。

 

蕎麦とモツ煮の併設ビジネス

実は私は、豚汁が良いと思っていたのです。私はサービスエリアのメニューを参考にすることがあるのですが、お父さん向けのサービスエリアメニューで最も出ているのは豚汁なのです。しかし、過去10〜15年で豚汁定食のお店が増えているものの、その多くがすぐに閉店してしまうのです。

そのため私は、豚汁はおかずとしては少しリスキーだと感じ、モツにすることにしました。南関東にはもつでご飯を食べる習慣がありませんが、北関東の利根川沿いにはもつ文化があり、ニーズはあると思っていました。

そして、2019年の年末に群馬県に単独店を出店しました。最初の売上は200万円程度でしたが、年明けに立ち飲みのような形で、お酒が飲めるようにしたところ売上が伸び、茨城県に出店したお店では売上が1,000万円を超えました。そうして、次第に併設店を増やしていきましたが、併設することによって平均15%くらいはゆで太郎の売上も伸び、来店頻度も上がり、客数も増え、客単価も上がり、相乗効果が見られました。

茨城県のお店が成功した理由は、利根川沿いにモツ文化圏が存在していたからです。高崎から前橋、伊勢崎、館林とそのまま川を下っていくと、茨城県の神栖まで行き、その川沿いにモツ文化圏があると考えています。

 

ビジネスマンとしての私の考えと将来のビジョン

私自身は店舗数を目標としておらず、お店を増やしていくことを目標として考えていませんので、ビジネスマンとしてはいい加減かもしれません。
しかし、将来的にはゆで太郎とモツ次郎が関東だけで500店舗くらいは可能だと考えています。東京、神奈川、埼玉の国道や県道沿いにはまだまだ出店の可能性があると考えていて、1軒1軒、丁寧に良いお店を作っていけば、そうなっていくだろうと考えています。それはただの見込みであり、目標として掲げているわけではありません。

出店する際の立地としては、売れている店舗と同じ条件の立地を選びます。つまり、周囲でどれだけ車が動いているか、働くお父さんがどれだけいるかを見ます。メニューもゆで太郎は意外にヘビーで、フルサイズの蕎麦とカツ丼のセットもあります。業態としては、やはり“どんぶり“が欲しいところです。しかし、町の蕎麦屋でもカツ丼などはありますが、セットにすると1,500円くらいになります。一方、ゆで太郎では800円ほどで提供しています。

売上の比率としては、お蕎麦と丼もののセットが半分で、そのうち3割ほどがカツ丼です。ですから、蕎麦屋ではありますが、実はカツ丼屋で、定食屋であるとも思っています。私が思う町の蕎麦屋というのは、老舗蕎麦屋や高級な手打ちの蕎麦屋ではなく、日常食のお店ですから、日常食の値段を踏み外さないように気を付けています。

蕎麦屋は過去20年間で、個人経営者が辞めていく傾向にあり、数は減少しています。しかし、それまでは日本で一番多かった飲食店です。そのため、ちゃんとやっていけば増えると思っています。これまであまり改革が進んでいなかっただけで、十分なポテンシャルがあると私は思っています。

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