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お店ラジオ 2023/10/12 2024/03/14

独自の暖簾分け制度と新しいサービス“チョキペタ”

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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。

今回のゲストは、美容室のフランチャイズ事業を中核とし、地域のお客様に「美と健康と若々しさ」を提供する事業を展開し、「アッシュ(Ash)」を中心に、全国に300店舗以上の美容室などを経営、さらには、暖簾分けフランチャイズ事業やメンテナンスサロン事業など独自のスタイルで事業を展開する株式会社アルテサロンホールディングス 代表取締役会長  吉原 直樹さんです。

大学卒業後、美容メーカーに就職しキャリアをスタート。1986年に横浜市神奈川区に美容室を開業し、その後、店舗を次々に拡大。しかし、10店舗目で店舗拡大戦略を大きく転換。デザイン系サロン「アッシュ(Ash)」を立ち上げ、暖簾分けフランチャイズ事業や、メンテナンスのための美容室の展開、さらに休眠美容師の活用など、吉原社長のこれまでの歩みと美容業界における店舗経営戦略について、3回にわたりお伝えします。

第1回は、サラリーマンとしてのキャリアスタートから、美容室の開業、そしてアッシュの誕生についてお送りしました。

第2回は、優秀な技術者の雇用や独自のフランチャイズ制度、新しいニーズへの対応についてお送りします。

 

この記事の目次

優秀な技術者を雇用するための新しいシステムの導入

美容室の経営において、お客様の満足度を上げるためには、高い技術を持った美容師を集めることが不可欠です。しかし、そのような美容師を確保するためには、高い報酬を支払う必要があります。

そのため私は、当時の業界平均よりも20%増しの給料で美容師を募集していました。この取り組みは、第1号店のオープンから40店舗目までができるまで、5年間続けました。

5年目になると、アッシュというブランドは多くの人々に認知されるようになり、第1号店以降の店舗の成功を受けて、多くの美容師がこのブランドでお店を出したいと思ってくれるようになっていました。

また、アッシュでは単価を上げるために、料金設定を変えました。具体的には、技術者のスキルレベルに応じて料金を設定するシステムを採用し、初回のカット料金が2,000円であっても、指名が増えることで4,000円や5,000円といった料金になる仕組みを取り入れたのです。

これにより、売上と連動して給料が増加するシステムを実現し、多くの指名を持つ技術者や優秀な技術者は、その実力に応じた報酬を受け取れるようになりました。

 

アッシュ独自の暖簾分けフランチャイズ制度

新しい店舗を開設する際、初期のセットアップは本部が担当します。そして、店舗経営が安定した段階で、スタッフが経営への意欲を示すと、暖簾分けを行い、アッシュブランドの下でグループの一員として経営を継続してもらいます。

私たちの暖簾分けの形態は「リース店舗」となります。

店舗は私たちが所有し、経営者は家賃や内装費などのリース料を支払う形態です。一方、暖簾分け前からいた従業員は、暖簾分けによって新しく雇用契約を結ぶ形になります。暖簾分け時に、既存のスタッフが新しい経営者のもとで働くことに同意すれば、そのまま勤務を続けますが、納得できないスタッフが退職することもあります。

また、新たな採用が必要となる場合には、本部が美容学校の新卒者を中心に採用し、研修も本部が主導して行います。

仕入についても、本部が一元的に管理しています。現在、アッシュは直営店とフランチャイズを合わせて約130店舗を展開していますので、一括仕入れによりコスト削減が実現されています。経理財務についても同様に本部で対応しています。

ただし、必ずしも技術がある美容師が経営者に向いているわけではありません。逆に技術的には平均的であっても、人柄が良ければ優れた経営者になれることもあります。

私自身、その典型例だと感じています。私は、技術的には特に秀でているわけではないのですが、人をまとめる力や信頼を得る能力があったため、会社を大きくすることができたのだと思います。

 

安定的にスタートできるアッシュのフランチャイズ

フランチャイズ料は売上に連動し、パーセンテージが設定されています。ロイヤリティは8%と高めですが、これには事務やマーケティングのサポートなどが全て含まれています。売上が上がれば、自分の収入も増加することになります。

また、アッシュの暖簾分けは店舗の経営が安定し、一定の売上の目処が立っている状態で行われるため、フランチャイジーとしてのスタート時点で、一定の売上があり好調であることが多いです。
そのため、フランチャイジーとして独立して、1,500万円や2,000万円の年収を狙うことも、努力次第では十分可能だと思います。

そして、暖簾分けをした店舗が、さらに2店舗目を開業する場合、それもアッシュのフランチャイズとして運営されますが、2店舗目以降の出店リスクは事業者自身が負担します。

現在、アッシュは約130店舗を展開し、フランチャイズオーナーは65人います。中には8店舗から10店舗を経営しているオーナーもおり、その規模になると相当大きな売上が見込めます。

また、その店舗から暖簾分けする美容師が出てきて、孫フランチャイズも存在します。本部としては、孫フランチャイズを育成した会社には、育成費として一定の割合を返す仕組みを作っています。このような取り組みを進めることで、全体としての成長と盛り上がりを実現しているのです。

 

高齢化社会の新たなニーズ。メンテナンスのためのお店

現在、私たちのグループにはアッシュを含め、330店舗以上の店舗があります。これまでのアッシュは「デザイン系サロン」として、主にヘアデザインを中心にサービスを提供してきました。しかし、お客様のニーズには、「デザイン」と「メンテナンス」があると思っています。

その中には「少しだけカットしたい」「少しだけカラーリングしたい」というニーズも含まれます。そのようなお客様にとっては、1万円も支払ってサロンに行くほどのことではないと感じられることも多いです。
そこで、私たちは、2,000~3,000円程度のサービスも提供できないかと考えました。

高齢化が進む中で、66%以上の方が髪を染めているというデータがあり、そのうち、美容室で染めているのは4割から5割ほどで、残りの半分以上の方が自宅で染めているのです。また、美容室を利用する方々も、毎回美容室で染めるわけではありません。多くの方がカットのみを美容室で行い、カラーリングは自宅でおこなっています。

そこで、低価格のメンテナンスのためのカットやカラーリングに一定のニーズがあると考えました。そして、このようなニーズに応えるため、メンテナンス目的のカラーリングを2,500円程度、カットを1,000円台で提供する新しいサービスを提供する店舗を作りました。

 

新時代の女性向け低単価美容サービスチョキペタ

QBハウスが、1,000円カットとして男性向けに全国展開している中、女性向けの同様のサービスも求められていると感じていました。そこで、私たちが新しいコンセプトで始めたのがチョキペタというお店です。

このお店は、女性のお客様が90%を占めています。カットは1,430円、カラーは2,090円という手頃な価格設定が特徴です。訪れるお客様の半数はカラーのみ、残りの半数はカットのみを希望されます。


出店場所としては、スーパーマーケットのレジ横や花屋、クリーニング店の隣など、日常の生活圏内でアクセスしやすい場所を選んでいます。

特に、最近のスーパーマーケットでは空きスペースが増えてきており、そのような場所を利用して約15坪での出店を進めています。サービス時間も短縮化されており、平均滞在時間は1時間で、これは一般的な美容室の半分の時間です。

さらに、低単価を実現するための独自の工夫も取り入れており、セルフブローコーナーでは、お客様自身にブローを行っていただき、シャンプーには「オートシャンプー」というマシンを導入しています。このオートシャンプーマシンは、約10分間でシャンプーを行いますので、その間に他のお客様のカットを進めることができます。

第2回は、優秀な技術者の雇用や独自のフランチャイズ制度、新しいニーズへの対応についてお送りしました。

第3回は、チョキペタでの休眠美容師の活用と上場から非上場へ、そして再出発についてお送ります。

 

執筆 横山 聡

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