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お店ラジオ 2023/06/28 2024/03/14

ベトナムで成功するためには、現地で愛される細やかな配慮が必要

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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。

今回のゲストは、人と人とが繋がり、幸せになれるお店づくりを目指して、ベトナムで40店舗のピザチェーン店「Pizza 4P’s」を経営する代表取締役社長兼CEO 益子陽介さんと、副社長 益子早苗さんご夫婦です。

人と人とが繋がり、幸せになれるお店づくりを目指してベトナムで起業、そしてテクノロジーの活用による店舗経営とインドへの海外進出、東京への凱旋出店までを3回に分けてお送りします。

第1回は、益子さんとピザとの出会いからベトナムでのピザチェーン店「Pizza 4P’s」開業までをお送りしました。

第2回は、ベトナムの文化や国民性が障壁となったマネジメントについてと、コロナ禍で始めたデリバリーについてお送りします。

 

この記事の目次

 

ベトナムの方に愛されるためのベトナム流のお店作り

実際にオープンしてみると、私たちのお店のことを書いてくださったベトナムの日本人ブログランキング 上位ブロガーの方たちも来てくださいました。皆さんが書いてくださったおかげで、多くの日本人のお客さんにも来ていただきました。

ブログを通じて知ったお客さんが多かったので最初はほとんどが日本人でしたが、徐々にベトナム人のお客さんも増え、最初の1年は日本人とベトナム人の割合がおおよそ半々でしたが、次の1年にはベトナム人の比率が70%になりました。

私たちは、日本の方も大切ですが、ベトナムの方に来ていただきたいと強く思っていましたので、ソーシャルメディアなどで発信する際の言語や表記の仕方に気をつけました。

また、お店の内装などにも気をつけました。私は、店主の意識や想いが店のディテールに現れると考えています。ベトナムの方が来られた時でも違和感がないようなテーブルセッティングもしていましたので、そういった想いは伝わっていくのだと自信になりました。

また、最初の集客も重要ですが、一度来てくれた方がリピートしてくださることが最も重要だと考えて、本当に細かいところにまで気をつけてサービスを提供しました。

例えば、ベトナムの方はピザでもなんでもケチャップとチリソースをかけるので、お客さんに言われたらすぐに出せるように、ケチャップやチリソースはデフォルトで戸棚のお客さんに近い場所に置いていました。

このような細かい配慮が徐々にベトナムの方々にも評価され、私たちの店に来てもらえるようになったと思っています。

 

価格にシビアなベトナムで認められるために、サービス価値を明確に示す

ベトナムの方々は価格について非常に敏感で、食べログのようなレビューサイトではレシートを全て掲載し、その店の価格がどうだったかというコメントを載せるほどです。

日本ではお金についてオープンに語るのは恥ずかしいというような風潮がありますが、ベトナムは非常にオープンで、そういった話題も問題ない雰囲気です。

ベトナムのピザ業界では、大手のピザ店といえばピザハットくらいしかなかったため、私たちはピザハットの価格設定を基準に、それに20%から30%のプレミアを加える形で価格を設定しました。

ベトナムの方々が価格に対してシビアであることを考慮し、ピザハットとの価格差が何によるものかを明確に示す必要がありました。ですから、味や店の雰囲気、サービスに対して高めの価格を納得して払っていただけるようなお店作りを心掛けてきました。

その結果、お客様は私たちの提供する価値に十分に納得してくださったと思っています。

 

チーズの自社製造など、ディテールへのこだわりが大手との差別化になる

私たちは常にディテールへのこだわりを持つよう心がけています。

例えばチーズについて考えると、高原地帯の方が質の良いミルクが得られやすく、気候が涼しい地域の方が脂肪分の高いミルクが生産できます。

そこで、ホーチミンで作っていたチーズより良い乳質を求めて、ダラットという高原地帯に生産地を移しました。それでもまだレベルアップできると感じ、タイやオーストラリアから牛を輸入して自分たちで牧場を経営しながら、どのようなミルクがどのようなチーズに適しているか、また、その牛にどのような餌を与えたら良いのかといった研究をしました。

ピザハットなどの大手デリバリーピザ店と比較すると、私たちの提供するピザは全く別物と言えます。彼らはデリバリー向けに特化したピザを提供しており、そのための特別な生地作りなどを行っています。

しかし、私たちのピザはその場で生地を伸ばし、高温の窯で焼き上げるというスタイルで焼きたてのピザを提供しています。これはベトナムでは馴染みがなく、新鮮に感じてもらえたと思います。

 

人材マネジメントの大きな障壁は、従業員との国民性の違い

その頃のお店は店舗を拡大するためスペースを増やしていった結果、店内が見通しにくくなっていました。

そのため、フロアーにカメラを設置し、上の階で全部モニタリングして「A1テーブルのお客様が手を挙げているから行って!」「あそこはお皿がずっと出てきてないけどどうなっている?」という具合に細かく指示を出していました。

多店舗展開を行うと、さらに管理が難しくなっていきました。そのため、画像解析会社に相談し、お客様が手を挙げた時に反応するアラートシステムの導入などを検討したこともありました。

従業員のマネジメントも難しい作業でした。日本だとあまり考えられないかもしれませんが、お客様が店にいらっしゃるにもかかわらず、スタッフが3人くらい集まって雑談を続けたり、壁に寄りかかったりするような行動が見られました。

雑談が始まった時は静かに近づいてやめるように指示し、壁に寄りかかる場合は、背中と壁の間に手を挟むことで寄りかからないように教えました。

一般的なベトナムのお店と比べて私たちの店では従業員に対する要求が高かったため、従業員が途中で辞めてしまうことが多々ありました。一方でスタッフの中には最初から一貫して働き続け、今では店長に昇進したスタッフや、お客様から喜びの声と多くのチップをもらっているスタッフもいます。

私たちの建物は、1階と2階がレストラン、3階にはチーズ職人、4階にはピザ職人がいて、5階では私たち家族が生活しています。仕事が終わったあとで疲れ果て、螺旋階段でそのまま眠ってしまったこともありましたが、こうしたスタッフの成長を見ていると「私たちの方向性は間違っていなかった」と今では自信を持つことができます。

 

コロナ禍の経営難を再建するため、自社デリバリーサービスを立ち上げる

過去2、3年間は、新型コロナウイルスの影響で極めて厳しい状況が続いていました。

最も厳しかったのは、外出禁止により営業が全くできず身動きが取れない状態でも、国からの保証金なども一切出ない状況が続いたことです。

それにもかかわらず、ベトナムでは労働法が厳格で、2,000人を超える従業員への給与の支払いが義務づけられていました。その結果キャッシュがどんどん減少し、最終的には資金が底をついてしまいました。融資を受けていた金融機関からも、これ以上の融資を断られてしまうような状況でした。

そんな困難な状況の中で、上場会社の社長と面会し、企業として、また個人として融資を受け、さらには社債を発行するなどして資金調達をし、なんとか経営を続けることができました。

その時期に日本と同じくデリバリーはベトナムでも非常に人気で、私たちもデリバリーサービスを始めることにしました。ちょうどその時にシリコンバレーで起業し、成功してからベトナムに帰国するというベトナム人を採用することができ、彼の力を借りてデリバリーサイトの制作を始めたのです。

当然、ウーバーイーツなどの既存のデリバリーサービスも利用していましたが、顧客情報は非常に重要で、そのような情報は自社で保有したいと考えたため、自社のデリバリーサービスを立ち上げることにしました。

現在では、全デリバリーのうち約70%が自社のサービスを通じて行われ、残りの30%が既存のサービスを通じて行われています。

 

第2回は、ベトナムの文化や国民性が障壁となったマネジメントについてと、コロナ禍で始めたデリバリーについてお送りしました。
次回は、自社デリバリーサービスの開発など、徹底したテクノロジーの活用からインド進出までをお送りします。

 

 

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執筆 横山 聡

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