Powered by

Home お店ラジオ ジブリの世界観を食卓に

お店ラジオ 2024/09/19 2024/09/19

ジブリの世界観を食卓に

about

「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。
小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を再編集したものです。

今回のゲストは、ふらっと入りたくなるような田舎町のレストランをコンセプトとして始まった「Hiracon’chez(平子ん家という造語)」からスタートし、福岡発祥のベーカリー「AMAM DACOTAN」やドーナツ専門店「I’m donut?」などを展開している株式会社peace put 代表取締役 平子 良太さんです。

創業者がどのようにして料理の道へ進み、福岡にて小さなパスタ食堂をオープンするに至った経緯、成功を収めたパスタ食堂から派生し、パン屋やドーナツ専門店「I’m donut?」の開業に至るまでの挑戦と革新、国内外での店舗展開や、品質に対するこだわりについて、3回に分けてお送りします。

第1回は、創業者がどのようにして料理の道へ進んだか、パスタ食堂のオープンなどについてお送りします。

 

この記事の目次

 

料理への情熱の芽生え

株式会社peace putは、平成27年に福岡で設立し、現在は、飲食事業を中心に、ドライフラワー販売やEC事業など、幅広い事業を展開しています。

運営する店舗には、福岡発祥のベーカリー「AMAM DACOTAN」やドーナツ専門店「I’m donut」、ドライフラワーを扱う「Cote Jardin」などがあります。

しかし、私自身は最初から起業を目指していたわけではありません。

高校を卒業した後、私はやりたいことが特に見つからず、将来について悩んでいました。そんなとき、幼馴染の父親で、あるホテルの料理長から「料理の道に進んでみないか」と誘われ、料理の世界へ足を踏み入れることになりました。

料理の世界は、私の想像を遥かに超える厳しさでした。毎日20時間働き、さまざまな料理を学びましたが、その過酷さに「料理なんてもうしたくない」と思い、逃げるようにその環境を離れました。

その後、東京に移り住み、料理から離れたいと思い別の仕事を探しましたが、レストランに行くたびに「もっとこうしたら美味しくなるのに」と感じ、料理への未練が募るばかりでした。

そして、六本木の高級レストランで再び修行し、その後、福岡で4年間イタリア料理の料理長を務めた後、自身の最初のお店であるパスタ食堂「Hiracon’Chez(ヒラコンシェ)」を開業しました。

 

本当にやりたいお店を作るためには起業するしかない

飲食店を開業するまでの道のりが長かったのは、料理の技術を極めたいとか、開業資金を貯めようとしていたわけではありません。実際のところ、当時はそんなことすら考えていませんでした。

転機となったのは、開業前に4年間勤務していたレストランでの経験でした。

そこでは常に冷凍食品ばかりが使われており、その状況を「もったいない」と感じたのです。最初は辞めようかとも考えましたが、自分自身の成長のために、逃げずに挑戦することを決意しました。

結果として、1年後には料理長となり、手作りの料理を提供できるようになりました。原価を下げ、スタッフの配置を最適化し、自分のやりたいことを実現することができました。

しかし、制服や音楽、内装など、どうしても自分の思い通りにできない部分がありました。雇用されている以上それは当然のことですが、この経験を通じて、「本当にやりたいお店を作るためには起業するしかない」と考えるようになりました。

 

外国の田舎で夫婦が営むような、食堂風のパスタ屋

1店舗目は福岡県の平尾駅から徒歩5分ほどのアパートの3階にある、7坪ほどのこじんまりとした小さなお店でスタートしました。スタッフは私とアルバイト1名だけでした。

業態はイタリアンにこだわり、特にパスタが好きだったため、外国の田舎で夫婦が営むような食堂風のパスタ屋さんをイメージし、気軽にパスタを楽しめるお店を目指して開業しました。

多くの新規開業店がうまくいかない中、幸運にも私のお店は順調に軌道に乗りました。というのも、お店があるアパートには雑貨屋さんが多く、福岡では雑貨好きに知られた場所だったため、集客に困ることはありませんでした。

内装もアンティークで、田舎のフランスをイメージしたデザインにしました。

オープンしてすぐに行列ができるわけではありませんでしたが、数ヶ月もしないうちに毎日満席になり、半年後には3階の廊下から階段を下り、2階の途中まで行列ができるほどの人気店となりました。

 

ジブリの世界観を食卓に

2012年から2013年頃、インスタグラムが広まり始めた時期に私もアカウントを開設しました。その頃から、料理のスタイルも「ジブリ」のイメージを目指すようになりました。ジブリ飯はシンプルでありながら、とても美味しそうに見える料理です。

例えば、小さな皿にこんもりと盛り付けたり、前菜を7種類の盛り合わせにしたりと工夫を凝らしました。その結果、「あれが食べたい」という声をいただくことが増え、話題になりました。

この発想に至ったのは、単純に自分が「美味しそう」と思えるものを提供したかったからです。

ジブリの世界では、目玉焼きとベーコンの一皿でもとても美味しそうに見えます。これは、世界観や雰囲気が作られているからこそ、美味しそうに見えるのです。ジブリ飯が多くの人に美味しそうだと言われるのは、まさにそのためです。

私自身もジブリが大好きで、その影響を強く受けています。ジブリの世界観を取り入れることで、料理に独自の魅力を加え、お客様に楽しんでいただけるよう心がけています。

 

大人の空間づくりとドライフラワー

1店舗目は小さなお店でしたが、お客様が増えてくるともっと大きな空間で営業したいと考えるようになりました。そこで移転を決意したのですが、移転後も多くのお客様が足を運んでくださいました。

そして、大人の方がより落ち着いて食事を楽しめる空間を提供するため、2店舗目として「Hiracon’chez Classique(ヒラコンシェ クラシック)」をオープンしました。

このお店では、席間を広く取り、落ち着いた雰囲気の中でゆっくりと過ごせる空間作りを目指しました。

さらに、このタイミングでドライフラワーの店も始めることにしました。
1階にドライフラワーの店を構え、2階にはレストランを設けました。

レストランの天井にはドライフラワーを飾り、数ヶ月後にはそれが乾燥してドライフラワーとなり、1階で販売するというサイクルを作りました。

天井に花が並ぶことで、お店の雰囲気にエッジが効いてオシャレになりますが、アンティークの世界観とドライフラワーは相性が良く、違和感なく馴染んでいました。

私はアンティークが好きで、内装も全てアンティークで統一していました。
そのため、ドライフラワーをもっと日常に取り入れられる提案ができればと考えていたのです。

枯れた花を使うことに抵抗を感じる方もいるかもしれませんが、私はその見方を変え、ドライフラワーの美しさを伝えたいと思っています。

 

大切なことはお店の世界観

お店の拡大後も、お客様は順調に増え続けました。
その理由は、お店の世界観を気に入っていただけたこと、そして何よりも料理の美味しさにあると考えています。

私は野菜が好きで、サラダだけでお腹いっぱいになるプレートを作りたいと考えていました。そこで、蒸し野菜や焼き野菜をメインにしたサラダを提供し、その後に少量のパスタを出すという、通常の順番を逆転させた発想を取り入れました。

多くの人が野菜を食べたいと思っているにもかかわらず、そのような料理を提供する場所が少ないことから、このアイデアが受け入れられると確信し、挑戦しました。

私はあまり食べ歩きをしないので、こうしたアイデアは自分の知識や経験から生まれたものです。

次に、パン屋を開業することを決意しました。これまで基本的にすべての料理を手作りしてきましたが、パンだけは毎日パン屋さんで購入していました。

そこで、パンも自分で作りたいと考え、当時通っていた福岡のパン屋さんに相談しました。そのパン屋さんとは長い付き合いがあり、作り方を教えてもらえることになりました。お互いに教え合う関係を築き、私は惣菜の作り方を教える一方で、そのパン屋さんからはパン作りを学びました。

パン作りにはミキサーやオーブンなどの設備が必要で、大きな投資も求められましたが、前向きに考え、挑戦することにしました。そして、お店から自転車で5分ほどの場所にパン屋を出店しました。

 

第1回は、創業者がどのようにして料理の道へ進んだか、パスタ食堂のオープンなどについてお送りしました。

第2回は、パスタ食堂から、パン屋やドーナツ専門店「I’m donut?」の開業に至るまでの挑戦と革新などについてお送りします。

執筆

このページの先頭へ