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お店ラジオ 2023/07/28 2023/07/28

最初は何屋かわらなかった「おふろcafé」

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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFM・FM大阪で毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。

今回のゲストは、埼玉県で個性豊かな「おふろcafé」を展開し、プロ野球独立リーグ ルートインBCリーグに属する「埼玉武蔵ヒートベアーズ」のオーナーも務める、株式会社温泉道場 代表取締役社長 山﨑 寿樹さんです。

赤字の温浴施設からスタートした「おふろcafé」。カラオケ予想大会や温泉バズーカ、子供をターゲットにした温浴施設での失敗、さらには球団経営まで、アイディアと地域への想いが詰まった地域密着型ビジネスについて、3回に分けてお送りします。

第1回は、赤字施設の再生からスタートした温泉道場から「おふろcafé」の誕生をお送りします。

 

この記事の目次

 

赤字の2施設からスタートした温泉道場

株式会社温泉道場は、現在13施設の入浴施設を運営しています。我々は日帰り温泉の運営を通じて地域と連携を図り、温泉を核とした地域活性化の実現を目指しています。

私がこの道を選んだのは、以前、船井総合研究所で地方創生や商業施設開発のコンサルティングを手がけていた時に、温泉業界の人々と出会ったからです。

その当時、ホテルや旅館業界では星野リゾートの星野氏がメディアに出始め、大きな影響を与えていました。一方で、日帰り温泉の世界にはまだ誰も進出していないと感じ、この分野で事業を始めることを決意しました。

最初は埼玉県の「昭和レトロな温泉銭湯 玉川温泉」と、「白寿の湯」という2つの日帰り温泉施設を引き継いで再生することから始めました。当時はなかなか魅力を見いだすことができない施設でしたので、訪れるお客さんも少なく赤字でした。

 

地道な営業活動から始まった赤字施設の再建

我々の施設は埼玉の人口1万人ぐらいの町にありました。小さな町ですから、最初の2、3年はまるで選挙活動のような地道な営業をしていました。

直接家庭を訪ねるというわけではありませんが、バーベキュー場や道の駅などの施設を訪問し、そこに我々の施設のパンフレットを置いてもらうようにお願いしました。また、それらの施設のスタッフには温泉施設への招待券をお渡ししていました。

地元のスタッフの方々の中には、我々の温泉施設を訪れたことのない人や、10~15年前に1度だけ来たことがあるという人もいます。そうした方々には招待券をお渡しし、ぜひ訪れてほしいとお願いしていました。

彼らが一度来店して将来的に常連客になってくれれば、それこそが我々の喜びですし、我々の温泉施設は変動費があまりかからない業態なので、招待券を用いた営業活動はやりやすいのです。

このような地道な営業活動も全く効果がないわけではありません。50~100の店舗にきちんとパンフレットを設置することができれば、売上は5%〜10%程度増加します。

逆に言えば、それだけの努力をしても売上はそれほど伸びない、とも言えます。しかし、限られた人員でこのような営業活動を続けるのは大変であり、そのために我々は他の戦略にも取り組むことを決めました。

 

施設活性化への新たな一手は「カラオケ予想大会」

我々の施設はカラオケを設置している温浴施設で、この特性を活かすために「カラオケ予想大会」というイベントを企画しました。お客様にカラオケを歌っていただき、その得点を予想する、というものです。

歌わなくても楽しむことができるこのイベントは、週に2回、午後1時から4時まで開催され、非常に好評でした。1回のイベントで約100人のおじいちゃんやおばあちゃんが集まり、競馬の馬券を購入するような感覚で楽しんでいらっしゃいました。

イベントが定着すると予想屋のような参加者が現れ、誰が何の曲を歌って何点を取ったか、といった情報を事前に配布するようになりました。そして、予想が当たると食事券などの賞品が贈られるのです。

この企画は大変好評で、何年も続けられています。それが継続されるにつれて曜日ごとに来るお客様が定まり、まるで学校のような雰囲気さえ感じられました。

一般的には店舗経営においては回転率の向上が求められますが、私たちの「おふろcafé」では、こうしたイベントを楽しんでいただくため、滞在時間が長くなります。

我々のような温浴施設の業態では、回転率の高さを重視する飲食店とは考え方が異なります。我々は逆に滞在時間の長さを重視しており、お客様がリラックスして滞在していただける空間を提供することに注力しています。

さらに、地域のイベントに出店したり、祭りで焼きそばを焼いたりするなど、メディアに取り上げられるようなイベントを館内で開催することで、地域の方々に我々の存在を認知していただき、より一層地域に溶け込むよう努力しました。

 

新しいことへの挑戦と施設活性化のための革新的な試み

私は、少々冒険的なイベントでも挑戦できる立場ですので、自分が面白いと感じた企画は積極的に行いました。

湯船に地域のゆずや他の農産物を浮かべたりしたこともあります。他にも、台風で落下したリンゴを使わせていただいたり、形状が悪く廃棄される予定の野菜を湯船に浮かべたりしました。

最近では、サウナでロウリュ(フィンランドの入浴法)なども実施し、アウフギーサー(ロウリュを行う人)やパフォーマーを社内で育成するなど、お客様に魅力を感じてもらえるような企画を考案し続けています。

我々が運営する「おふろcafé」は、伝統的な銭湯とは異なるジャンルに位置づけられています。法律により、銭湯は各県で料金が定められていますが、当社の施設は「その他の公衆浴場」というカテゴリーに属し、スーパー銭湯、健康ランド、スパ、サウナなどと同じく、料金を自由に設定することが可能です。

特に、「おふろcafé」はレジャー要素が強いのが特徴で、純粋にお風呂に入りに行く場所というより、“遊びに行く場所にお風呂とサウナが備え付けられている”というのが我々の提供する施設の姿です。

ですから、我々は“遊びとリラクゼーションの両方を提供する新しい形のレジャー施設”として新しいことにチャレンジできるのです。

 

最初は何屋かわらなかった「おふろcafé」

私が創りたかったのは「何もしないことを楽しむことができるお店」でした。

「何もしない時間」を過ごすために、カフェのようなお風呂屋を創り出すことを考えたのが、「おふろcafé」誕生のきっかけです。

名前は「おふろcafé ◯◯◯」として複数店舗にも対応できる名前にし、1号店は「おふろcafé utatane」という名前で運営を始めました。

 

しかし、最初からスムーズに事業が進行したわけではありません。「おふろcafé」という名前を初めて聞く人々は、その具体的な内容を理解できず、その結果として開業後半年ほどは赤字が続き、瀕死の状態でした。

私自身も現場に立っていましたので、スタッフが電話対応をする様子を直接見ていました。すると、「お風呂はありますか?」や「男性も利用できますか?」といった質問が非常に多かったのです。

スタッフが「スーパー銭湯ですから、広いお風呂があります」と答える様子を見て、「おふろcafé」が広く認知されるまでは「今風のスーパー銭湯です」「今風の健康ランドです」「お風呂は普通にあります」といったキャッチコピーを使ってチラシを作成し、配布することにしました。

そして、このチラシ配布を始めると、“変わったお風呂屋”ということで少しずつ取材を受けたり、口コミが広がったりし始め、半年後にはようやく黒字に転換することができました。

私は、「おふろcafé」が何を提供しているのかを理解していないお客様の声を聞いて、お客様の声を直接聞くことの重要性を強く感じました。

店舗運営の初期段階で「何屋かわからない」という問い合わせを受けることで、私たちはそれに対する答えを見つけることができました。これが初期の段階で明らかになったことで、適切な対策を講じ、結果的に来客数を増やすことができました。

 

第1回は、赤字施設の再生からスタートした温泉道場から「おふろcafé」の誕生をお送りしました。
第2回は、独自の逆張戦略からユニークなお店を支えるスタッフの採用と育成までをお送りします。

執筆 横山 聡

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