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お店ラジオ 2023/07/28 2024/03/14

「おふろcafé」は人間の基本的な欲求に直接的に訴える

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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。

今回のゲストは、埼玉県で個性豊かな「おふろcafé」を展開し、プロ野球独立リーグ ルートインBCリーグに属する「埼玉武蔵ヒートベアーズ」のオーナーも務める、株式会社温泉道場 代表取締役社長 山﨑 寿樹さんです。

赤字の温浴施設からスタートした「おふろcafé」。カラオケ予想大会や温泉バズーカ、子供をターゲットにした温浴施設での失敗、さらには球団経営まで、アイディアと地域への想いが詰まった地域密着型ビジネスについて、3回に分けてお送りします。

第1回は、赤字施設の再生からスタートした温泉道場から「おふろcafé」の誕生をお送りしました。

第2回は、独自の逆張り戦略から、ユニークなお店を支えるスタッフの採用と育成までをお送りします。

 

この記事の目次

 

「おふろcafé」独自の逆張戦略

我々は、逆張りのアプローチを取ってきました。我々が譲り受けてリノベーションした施設は、通常の温浴施設の約1/4~1/5の投資額で店舗を作っています。そのため、他の温浴施設と比べて回転率が若干低くても、私たちのビジネスモデルは成り立つと考えています。

ですから、我々は他の温浴施設では提供できない独自のサービスを展開していこうと考えています。特にお客様の滞在時間にはこだわっており、「ここから出たくない」と思っていただけるような魅力的なサービスを提供することを目指しました。

たとえば、館内のポスター1つをとっても、お客様が読みたくなる、あるいはコメントしたくなるような内容を掲載し、お客様が1分でも長く滞在してくれるような工夫をしています。我々の目標は、お客様をなるべく長く施設内に留めることです。

さらに、店舗の建物の構造や動線も意図的に複雑に設計しています。これは一般的な店舗では取り入れられていないアプローチだと思います。

 

お風呂に入らないお客様という予想外のニーズ

おふろcaféでいろいろな企画をするうちに、予期せぬお客様が訪れるようになりました。

それは、「お風呂に入らないお客様」です。このお客様たちは、提供しているルームウェアに着替え、友達とカフェで過ごしたり、ボードゲームを楽しんだりして、そのまま帰宅されます。

これらのお客様は、友達と同じ服装で楽しみ、自宅のような環境でくつろぐことを求めているのだと思います。そのニーズがあることが分かり、私たちは店舗をより「家」のようにくつろげる施設としてリニューアルしていきました。

その結果、一般的な温浴施設の商圏が約20分であるのに対し、私たちのおふろcaféには、60~90分かけて訪れるお客様も増えてきました。データ分析により、横浜や川崎から訪れるお客様もいらっしゃることが分かりました。

通常、都心に近い温浴施設では坪効率と回転率が重要になりますが、私たちの埼玉にある店舗群は、その効率や回転率をあまり重要視していません。お客様たちには、郊外のショッピングモールに出かけるような感覚で、我々の店舗に来ていただいていると考えています。

 

どこでも飲めて食べられてくつろげるスペース

おふろcaféは、特定の目玉コンテンツに依存した集客戦略ではありません。

リラックスできる空間そのものが魅力であり、これは、リラクゼーションと自由という人間の基本的な欲求に直接的に訴えるものだと考えています。

通常の施設やカフェでは、「ここで食事を」と「ここでお風呂に入る」といった区分けがされ、そのルールが厳格に管理されています。しかし、おふろcaféではそのような区分けを完全になくしました。

つまり、ほとんどのスペースを飲食エリアに変え、どこでも好きなようにくつろぎ、食事やドリンクを楽しむことが可能にしたのです。

もちろん初めてこの方式を採用した際には、スタッフからもいろいろな意見がありました。しかし「その懸念は理解できるが、まずは試してみよう」という結論に至り、どこでも飲食可能な形を採用しました。

結果、この自由さがお客様に受け入れられ、おふろcaféの運営は順調に進んでいます。

 

「おふろcafé」の地域に根ざした出店戦略

我々は2013年に3店舗目となる「おふろcafé utatane」をオープンしました。その後は年に1店舗ずつ増やし、現在は直営店舗が8店舗と、パートナーシップ店舗が5店舗、合計で13店舗を運営しています。

おふろcaféのそれぞれの店舗は独自のコンセプトを採用しています。

例えば、大宮にある「おふろcafé utatane」は北欧風のインテリアと、フィンランドの料理を提供しています。また、「白寿の湯」はおふろcaféにリブランドされ、「発酵」をテーマにした日本風の店舗となっています。

新たな物件が見つかった場合、施設周辺の地域の特徴などの調査を徹底的に行います。

また、地域の人気飲食店や商業施設の視察、地域の歴史の学習などを通じてその地域の特性を理解し、お店づくりに反映させます。

このようなフィールドワークを通じて、地域の特徴に基づいたコンセプトやフレームワークを作り上げ、それに従ってお店を作っていきます。このコンセプトを作り上げる過程には、半年から1年程度の時間をかけています。

 

子供をメインターゲットとする店舗の成功と失敗

我々の経営する「おふろcafé ハレニワの湯」は、ボタニカルをテーマにしたお店ですが、もともとは「おふろcafé bivoua」というグランピングをテーマにした温浴施設として5年間運営していました。

この店舗は、子供をメインのターゲットとして作りました。具体的には、キッズコーナーの設置、キッズメニューの提供、おむつを付けたままで入浴可能な浴槽の設置など、子供向けの設備を整えました。

温浴施設では通常、子供の比率は5%程度ですが、この店舗では子供の比率が20%以上と、かなり高い数字になりました。週末には、全体の半数以上が子供という状況になることもありました。

しかし、この店舗はコロナウイルスの影響を大きく受けました。子供たちがメインターゲットであったため、移動が制限されるコロナ禍では売上が大幅に減少しました。そのため一度店舗を閉め、ボタニカルをテーマにした店舗にリブランドすることにしました。コロナウイルスがなければ、子供向けの店舗は存続していた可能性もあります。

しかし、ターゲットが子供中心だと平日が弱くなってしまい、ターゲットの偏りが強すぎることも問題だと反省しました。一方で、大箱のところはやはり子供が必要だとも考えています。

 

ユニークなお店を支えるスタッフの採用と育成

私がおふろcaféにこめる愛情は深く、私の趣味がそのままお店に反映されているとも言われています。しかし、現在は店舗が増えてきて、私一人で全てを管理することは難しくなっています。

そのため、私と同じようにお店に愛情を持ったスタッフが、それぞれの店舗を自由に運営しています。

このような個性的なお店を増やしていくには、我々の方針を理解してくれるスタッフが必要です。しかし、通常の採用方法では、そのような人材を集めることは困難です。

そこで、我々は少々ユニークな方法で採用説明会を行っています。

例えば、テントサウナで採用説明会を開催したこともあります。私自身が2時間ほどサウナから出たり入ったりしながら説明会を進行しました。このようなユニークな説明会には、中途半端な気持ちで参加する学生はほとんどいません。

また、通常の採用説明会から参加する人たちよりも、我々の説明会からの内定率は高かったです。

 

第2回は、独自の逆張り戦略から、ユニークなお店を支えるスタッフの採用と育成までをお送りしました。
第3回は、温泉道場のオリジナルな取り組みから球団の経営までをお送りします。

執筆 アキナイラボ 編集部

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