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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を再編集したものです。
放送の音声はこちらから!
#129 おにぎり専門店「まんま」開業以前はスニーカーショップを運営!当時のブームから売却するまで
#130 「スニーカー」のビジネスモデルは「おにぎり」にも通用!?おにぎり専門店「まんま」成功のワケ
今回のゲストは、1996年に脱サラし、裏原宿にスニーカーの並行輸入店「チャプター(CHAPTER)」を開店。独自のアイディアでビジネスを軌道に乗せ、2000年に「アトモス」をオープン。「ナイキ(NIKE)」などとのコラボにより事業を拡大。その後大塚の有名なおにぎり屋「ぼんご」の右近由美子さんとの出会いを機に、会社を売却しおにぎり屋を開業、「ぼんご」の伝統を守りながら新しいおにぎりにチャレンジするおにぎり専門店 まんま オーナー 本明秀文さんです。
「チャプター」「アトモス」開業の経緯と有名ブランドとのコラボやヒットの予兆の見つけ方、共感を得る方法。おにぎり屋を始めたきっかけ、特別な価値による成功の法則、おにぎり屋の拡大と多店舗展開の戦略、新たな食のスタイルを提案するおにぎりなどについて3回に分けてお話しいただきます。
第1回は、スニーカーショップの開業と拡大、ヒットの予兆の見つけ方などについてお送りします。
第2回は、お店を繁盛させる秘訣や面白いことの大切さ、特別な価値による成功の法則などについてお送りしました。
第3回は、多店舗展開と拡大戦略、儲けより笑顔、おにぎり屋で目指す理想の味と新しい形などについてお送りします。
この記事の目次
希少価値のある商品を扱うお店の多店舗展開
私は、まだ世の中にあまりない希少価値のある商品を扱うお店をたくさん展開したいと考えています。そのためには、どのお店でも同じ味を提供できるように、食材を加工・調理するセントラルキッチンを作りました。これで、国内にも本格的に店舗を増やしていけると考えています。
また、今世界中で和食がブームになっています。おそらくニューヨークにお店を出したら、とても繁盛するのではないかと思っています。ニューヨークでは、幕の内弁当が45ドルもするそうですし、パリには既におにぎり屋さんがありますが、日本で180円から250円程度のおにぎりが、ユーロにすると2.5ユーロから3.2ユーロ、つまり450円以上もするのです。それでも、たくさんのお客さんが並んでいます。パリのおにぎり1個の値段は、日本で牛丼を食べられるくらいの値段になっているのです。
この流れに乗り、日本国内はもちろん、海外にもお店を出していきたいと思っています。
おにぎり屋の拡大戦略
私たちは現在、新宿で多くのお客様にご好評いただいているおにぎり屋を経営しています。
働いているお客さんなど買ってすぐに食べたい人も多いため、紀伊國屋地下に持ち帰り専門のおにぎり屋を出店することを検討していますし、大阪のルクア大阪にも10坪ほどお店ですが出店を計画しています。
私自身、長年小売業に携わってきましたが、業態の異なる飲食店経営では当初、苦労もありました。おにぎりを握る工程の改善や営業時間の延長など試行錯誤を重ね、現在では新宿のお店だけで月商1,000万円を超えるまでに成長しました。
また、おにぎりの需要としては、朝少しと昼食のイメージが強いですが、当店では夜も持ち帰りを中心に販売しており、予想以上に多くのお客様にご利用いただいています。立地にもよりますが、深夜営業の需要も高いと考えており、新宿のように飲食店が多い地域では、飲んだ後のシメとしておにぎりを求めるお客様も多いと思います。
また、地域に合わせた商品展開も面白いと考えています。例えば、築地に出店する場合、マグロのたたきなど、その土地ならではの具材を使ったおにぎりを提供するなど、地域に合わせた店舗毎の具の違いはあっても面白いと思います。
おにぎり屋成功の秘訣〜儲けより笑顔と具だくさん〜
スニーカーショップは商品が主役ですが、おにぎり屋はスタッフが心を込めて握ることで完成する商品です。そのため、スタッフの技術や接客が大切です。私は、飲食店でお客様に満足していただくためには、明るいスタッフの存在が欠かせないと考えていて、美味しいだけでなく、”この人から買いたい”、”この人が握ったおにぎりが食べたい”と感じさせるようなスタッフがいるお店が繁盛します。
また、私は客単価よりもお客様をがっかりさせないことを大切にしています。そのため、原価率は35〜37%と高めですが、スタッフには“白いご飯だけをお客様に食べさせるな”と指導しています。おにぎりを食べていると、具が真ん中だけに偏っていることがありますが、私はそれが嫌なので、ご飯は少なめに、具をたっぷり入れるようにしています。儲けよりも、お客様に満足してもらうことを優先しているのです。
ハンバーガーといえばマクドナルド、牛丼といえばすき家や吉野家というように、多くの人に知られているチェーン店がありますが、おにぎり屋にはまだそのような存在がありません。おむすび権米衛が50店舗ほど展開していますが、ドトールコーヒーの1,200店舗やコメダ珈琲の900店舗と比べるとまだまだ少ないのが現状です。私は、おにぎり屋が「まんま」という名前で広く知られるようになれば、チェーン展開によって少しずつ利益を得るビジネスモデルが実現できると考えています。
おにぎり屋で目指す理想の味と新しい形
私は、店舗数が増えれば最終的には利益が出ると考えています。そのため、最初のうちは利益が出なくても、まずは本当に良いものを提供したいと考えています。自分が食べて美味しくないものや、魅力を感じないものを提供しても、お客様には満足してもらえません。
牛丼屋やコーヒーショップなど、世の中には多くのチェーン店がありますが、おにぎりのチェーン店はあまり見かけません。これは、おにぎりだけを食べに来るお客様が、他のチェーン店に比べて少ないことも理由の一つですが、ラーメンやうどんなどは、一品で十分お腹が満たされるものの、おにぎりは単体では少し物足りないと感じてしまうためだと思います。そこで私は、おにぎりと健康的なおばんざいを組み合わせることで、より満足度の高い食事を提供できるのではないかと考えています。
まだ具体的な計画はありませんが、このような新しい取り組みも視野に入れていて、お客様の反応や市場の動向を見ながら、メニューや価格など、柔軟に調整していきたいと思っています。
おにぎりで新たな食のスタイルを提案
かつて日本の田舎では、ナスのおひたしのようなおばんざいが並ぶ光景が一般的でした。しかし、現代ではそういった風景は減少しつつあります。私は、おばんざいとおにぎりを組み合わせた新しいスタイルは、現代の食生活にもマッチすると確信しています。
例えば、丸亀製麺は国内外で成功を収めていますが、その理由はうどんではなく、天ぷらにあると考えていて、特に海外では天ぷら需要が高くなっています。日本でも、唐揚げや天ぷらなどのおかずと一緒に楽しめる“おにぎり弁当”スタイルが受け入れられる可能性を感じます。一時期ブームとなった唐揚げ専門店も、現在では減少傾向にあるようですが、おにぎりを加えることで新たな業態として確立できるかもしれません。
私は、成功している企業の戦略を学び、自らのビジネスに活かすことが重要だと考えています。私たちは丸亀製麺と競合するのではなく、彼らの形態を参考にしながら、独自のアレンジを加えた新しい業態を展開したいと考えています。そして、新たな食のスタイルを提案していきたいと考えています。
おにぎり屋さんの秘訣:食材ロスゼロの工夫
おにぎりは、スニーカーと違って日持ちがしません。そのため、ロスを最小限に抑えるため、緻密な在庫管理が欠かせません。私たちの店でも、食材を冷凍することで、ロスをなくす工夫をしていますが、実は私たち自身のアイデアではなく、大塚のおにぎり屋さん「ぼんご」の由美子さんから学んだことです。
例えば、当店の人気メニュー「卵黄肉そぼろ」は、総売上の25%から30%を占めていて、大量の卵を使いますが、卵黄のみを使用するため、どうしても白身が余ってしまいます。しかし、食材を冷凍することで、白身も含め、フードロスをゼロにすることができています。
そうした独自の工夫を進めおにぎりで有名になった「ぼんご」の由美子さんは、食の関係者である私たちから見ると、まさに神様のような存在です。彼女のアイディアは本当に素晴らしく、私たちのスタッフも由美子さんをとても尊敬していて、もう少し早く調理ができるように具材を考えてみては、と提案しても由美子さんのレシピは私たちにとって大切な財産であり、これからも守り続けていきます。
私たちはこれからも、「ぼんご」のメニューを軸に、オリジナルの味を大切に守りながら、美味しいおにぎりを作っていきたいと思っています。