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お店ラジオ 2024/01/16 2024/03/14

店舗立地戦略〜数百メートルの商圏〜

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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。

今回のゲストは、60年前から緩やかに市場規模が拡大している「コインランドリー業界」に着目し、2016年に「Baluko Laundry Place」を運営する株式会社OKULABを創業、数年で全国に200店舗以上のフランチャイズを展開する株式会社OKULAB 代表取締役CEO 久保田 淳さんです。

コインランドリーに着目した経緯から、利用者のニーズの変化とユーザー目線のサービス開発、Balukoのフランチャイズ全国展開、コインランドリーの経営視点からの利益やリスク、立地戦略、今後のコインランドリー業界の展望など、3回に分けてお話しいただきます。

第1回は、緩やかに成長するコインランドリー業界の変遷やユーザー目線のサービスなどについてお送りしました。第2回は、フランチャイズの全国展開と経営視点でのリスクや立地戦略などについてお送りします。

 

この記事の目次

 

Balukoの全国展開と経営

現在、Balukoの店舗は全国に218店舗あります。さらに、異なる名称の店舗が32店舗存在します。合計250店舗のうち、1店舗が直営店で、残りの249店舗はフランチャイズです。

私たちはプロダクトを磨き上げ、それに興味を持つ方々に運営していただきたいと考えています。そして、店舗を増やしていく時には、そういった方々を紹介していただく形で広げていきました。コインランドリー事業を始めたいという方は意外に多く、我々の信頼できる方々から、そういった方の紹介を受けて店舗数を増やしていきました。

私たちのフランチャイズでコインランドリーを開業する場合、一般的な初期投資は3000万円程度からで、広さが20坪から30坪になると4500万円程度になります。4500万円の投資で、機械は約15台設置されることになります。

一般的に、3年で売上が安定し、その時点で平均的な利回りは約7〜9%となります。この際、上位30%の店舗では利回り約15〜16%、トップ5%の店舗では利回り約25%になります。

トップの店舗では、約4年で投資を回収することもありますが、平均では約10年から12年での回収を見込んでいます。ローンの場合、機械の償却期間は13年なので、返済期間は10年から13年程度と考えています。

 

コインランドリーの出店パターンと顧客獲得と売上の変化

オープンしたコインランドリーの売上がどのように伸びていくかは、出店時の状況によって異なります。通常、オープン時は、コインランドリーを以前に使用したことのある人やBalukoを知っている人が利用者となります。

ただし、すでにコインランドリーがあった場所が居抜きで別のコインランドリーに変わった場合などは、違った売上の伸び方が見られます。

最初の顧客層がコインランドリー利用者だった場合、初月の売上は良ければ約40万円になり、客単価が1,000円だとすると400回の利用となります。1年後には約70〜80万円へと増加し、約2倍になり、2年後には約3倍になることが期待されます。したがって、オープン後3年で2.5〜3倍になることが理想的です。

また、新規にオープンしたコインランドリーにお客さんが定着するまでの流れとしては、まず、店舗の前を通りかかる人が店内を覗きます。すると彼らは「なぜ家に洗濯機があるのにコインランドリーを利用するのだろう?」と疑問に思います

そこで彼らが少し情報を集めたり、利用者に話を聞いたりすることでその便利さを聞くことで利用します。そして、コアユーザーではない一般の顧客層が増えていくのです。この流れが広がると、使い方が分からなかった人たちの利用が徐々に増えていきます。

コインランドリーのメリットとしては、乾燥で洗濯物がふわふわになることや、乾燥時間の短縮など、生活の時短にもつながるインセンティブがあります。さらに、コインランドリーは利用者が一度固定客になると、離脱率が低く、長く利用を続けてくれる傾向にあります。

 

コインランドリーのマーケットの拡大とクリーニングとの棲み分け

最も重要なのは、口コミによる拡大です。一生懸命チラシを配布しても反響は限られています。やはり、店を見ながら、前を通ってくれる人たちが、口コミで連鎖的にマーケット拡げていってくれると思っています。

また、顧客との関係を維持・向上させるための仕組みを、ITを活用して構築することも重要だと考えていて、一人ひとりの行動の中で、プロモーションできるようになると、現在よりもより精度の高いプロモーションが可能になり、認知度向上にも繋がってくると思います。

一方で、クリーニングサービスとコインランドリーの利便性についても考慮が必要です。クリーニング店にTシャツ一枚を預けると約300円かかり、10枚で3,000円になりますが、コインランドリーなら約60枚のTシャツを1,000円で洗うことができ、価格面で大きな違いがあります。

さらに、クリーニングは時間がかかりますが、コインランドリーでは1時間後には仕上がるため、利便性も高いです。したがって、クリーニングとコインランドリーは、それぞれ異なるニーズを満たすことができると考えられます。

 

コインランドリー経営のリスクと利益:現実的な視点から

現在、ほとんどの店舗はフランチャイズ(FC)で運営されており、最大利回りは約25%まで到達することもあります。売上のイメージは先に説明した通りですが、コストの面では、変動費として水道、電気、ガスが大きな割合を占めます。また、洗剤なども必要で、これらは売上に連動して変動し、売上の約30%を占めます。

洗剤や店舗の清掃に関しては、「バルコパック」というサービスがあり、都内を中心に一都三県、大阪や福岡などで、1日1回の清掃サービスを月額81,900円から提供しています。このサービスには洗剤の補充も含まれます。緊急時には、弊社から3時間以内に駆けつける体制を取っています。

店舗の品質を維持することは重要ですが、ブランド規定に沿った店舗運営マニュアルを経営者に提供しても、オーナーが忙しいときには対応できないことがあります。例えば、機械が停止して緊急対応が必要な場合や、機械の掃除を怠ると停止することがあります。また、機械の裏に埃が溜まることもあるため、定期的な清掃も重要です。

その他のコストとしては家賃があります。私たちの店舗の広さの中央値は約20坪ですが、立地によっては家賃が高く、店舗が小さくなることもあります。小規模な店舗では機械の数が少ないものの、投資効率を高め、コンパクトな店舗にして回転率を上げて売上を増加させます。

 

店舗立地戦略:細分化された商圏とリスク管理

お店の形態については、1階の路面店であることが必須です。駐車場の有無も重要で、特に地方では駐車場があることが望ましいです。具体的には最低4台分の駐車スペースがあると良いと考えています。

また、我々は、商圏単位を「20万人の人口を持つ1都市」というレベル」では捉えていません。もっと細かく分析し、店舗を中心に最大2km範囲を商圏として捉え、さらに4,00mや6,00m単位で商圏をドーナツ状に区切って分析する独自のシステムを作っています。

このシステムのデータベースには、競合店舗の数や地域住民の世帯数、住民のステータスなどのデータが含まれており、出店予定地点を入力すると、その商圏のスコアが表示されます。一定のスコアを満たした場所であれば、出店しても良いと判断します。車が主要な交通手段の地域では、その条件をシステムでフィルタリングして、リスクを軽減します。

私たちは大ヒットを狙うよりも、リスクを減らすためのシステム構築に注力しているため、システムが出店を止めるべきと判定した場所には、実際に出店を控えるべきだと考えています。

第2回は、フランチャイズの全国展開と経営視点でのリスクや立地戦略などについてお送りしました。第3回は、ポートフォリオと出店戦略、将来展望と勝ちパターンの立地などについてお送りします。

 

 

執筆 横山 聡

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