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お店ラジオ 2024/02/15 2024/03/14

理念に合う人だけを採用する戦略

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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を再編集したものです。

今回のゲストは、大正12年(1923年)に愛媛県西条市の駅前の食堂として創業し、現在では地元に愛されるお店としてイタリア料理店など5店舗を展開し、ソウルフードである「鉄板ナポリタン」を復活。また、翌日の来客数や1カ月間の来客数、商品の販売数量などを予測するAIを活用した来客数予測システムの導入により、効率的な店舗運営を行い、お客様に「おいしい」と地域への「感謝」や「健やかさ」をお届けする株式会社マルブン代表取締役眞鍋一成さんです。

大正12年(1923年)に創業し、西条市のソウルフード「鉄板ナポリタン」の復活、スマレジやAIによる分析システムなど、店舗DXの導入による徹底した在庫管理やシフト管理など効率的な店舗運営の実践し、さらに、お客様に「おいしい」を届けるという企業理念に共感できる人材を採用することで離職率を改善した手法など、3回に分けてお話しいただきます。

第1回は、大正12年の創業から、「鉄板ナポリタン」の復活戦略についてお送りしました。
第2回は、効率的な仕入れ戦略と店舗DXによる来客数、販売数予測についてお送りしました。
第3回は、仕入れと在庫管理の効率化、食材仕入れの改革、会社への高い定着率の秘訣についてお送りします。

 

この記事の目次

 

システム導入による仕入れと在庫管理の効率化

新しいシステムの導入により、私たちの店では仕入れと在庫管理のプロセスが大きく改善されました。従来から、適切な仕入れ率を維持することは原価削減に直結する重要な目標と位置付けていました。

不適切な仕入れが行われると、スタッフが無駄に食材を使用したり過剰に仕入れてしまったりすることで、原価の上昇につながることがありました。私たちは、以前から仕入れ率を設定し、仕入れ率に基づいて管理を行っています。飲食店には小売店ほどの在庫がありませんので、売上に対する仕入れの割合をシンプルに目標として設定することで、大きな誤差を防げると考えていました。

私たちの店舗では、売上の25%を仕入れ率の目標としていますが、経験の浅いスタッフが仕入れを担当すると、この目標を超えることがしばしばありました。しかし、最近導入した新しいシステムのおかげで、これらの問題が解消しました。来店予定のお客様の数や提供予定の食事量が事前に把握できるようになり、必要な食材の量をより正確に発注できるようになったのです。

これにより、無駄な仕入れを減らし、在庫管理を効率化することができ、結果的に原価の削減に大きく寄与しています。このようなシステムの導入は、飲食店経営において非常に重要な要素であり、私たちの店舗では、この新しい技術を最大限に活用して、より効率的かつコスト効果の高い運営を目指しています。

 

システム導入による仕入れ管理の効率化と若手スタッフの成長

新しいシステムの導入により、以前は難しいと考えられていた経験の浅いスタッフであっても、仕入れ目標のコントロールができるようになりました。実際、若いスタッフも、わずか3ヶ月で予測データを参考に仕入れを効果的に管理できるようになり、数字を目標に合わせることが可能になりました。

この予測システムは、過去の販売データを基にして、週末や祝日の来店客数とメニューの需要を予測し、その結果をもとに仕入れ計画を立てています。AIが来店客数やメニューの需要傾向を予測することで、どのメニューをどれくらい仕入れるべきかを見極めることができるのです。

たとえば、ABC分析を使い、10人の客が来た際に、どれだけのスパゲティやオムライスが注文されるかを予測します。この分析により、特に需要が高い「A」カテゴリーのメニューに焦点を当てることで、仕入れの精度が高まり、誤差を減らすことが可能になりました。

この仕入れ率の5%の低下は、年間で数百万円のコスト削減につながり、店舗の利益率向上に大きく貢献しました。さらに、食材価格の上昇に対応するためにメニュー価格の見直しと再分析を行った結果、仕入れ率はより改善され、経営効率の向上に大きく貢献しています。このように、ITシステムとデータ分析を活用することで、若手スタッフの能力向上と共に、店舗運営全体の効率化とコスト削減を実現できました。

 

食材発注の無駄削減と厳密な管理の導入

従来の発注方法では、特にお肉の発注に無駄が多く見られました。冷蔵庫や倉庫に食材が豊富にある状況は、スタッフに「余裕がある」という誤った印象を与え、レシピ通りの使用量よりも多くの食材を使用する傾向にありました。

たとえば、レシピで指定されている50gの肉を80g使用してしまうようなケースが頻発していたのです。このような小さな無駄が積み重なることで、全体的な原価の増加につながっていました。

この問題に対処するためには、食材の余裕を最小限に抑え、スタッフが必要量のみを厳密に使用するような環境を作ることが必要です。そのためには、明確なルールを設定し、そのルールに従って作業を行うことが重要です。そして、このプロセスには、データに基づいた正確な管理が不可欠です。適切なデータ分析により、必要な食材量を正確に把握し、無駄な発注を減らすことが、コスト削減の鍵となります。

 

高い定着率と理念経営の成功

私たちの店舗の大きな特徴の一つは、従業員の定着率が非常に高いことです。20年以上にわたる理念経営の実践を通じて、私たちはフィロソフィーや価値観の教育に力を入れてきました。このアプローチにより、従業員が自社の文化や理念に深く共感し、長期的に働き続ける環境を作り出せていると思います。

また、私たちは会社の理念に適合する人材のみを採用することにしています。そして、従業員に対しては多くの権限を委譲し、お客様を喜ばせるために自由に行動できるようにしています。この自由度の高い環境は、特に自分のアイデアや計画を実行したいと考えるスタッフにとって魅力的だと思います。また、やる気のある有能な若い従業員が昇進するチャンスもあります。

この「理念に合致する人材のみを採用する」という方針が、従業員の高い定着率に直結していると考えています。しかし、過去には人手不足に陥ったこともあり、一時的に採用基準を緩めた結果、店舗運営に乱れが生じた経験もあります。これは、採用基準の重要性と、当社の文化や理念に合った従業員がいかに重要かを教えてくれる貴重な教訓でした。

 

理念と革新性を重視する採用戦略の成果

私たちのフィロソフィーと異なる価値観を持つ人材を採用すると、仕事へのアプローチが根本的に私たちとは異なります。私たちは、お客様の満足を最優先に考える文化を大切にしていますが、金銭的報酬を主な目的とする人を採用してしまうと、店舗運営にさまざまな問題が生じることがあり、採用基準を妥協してはならないという教訓を得ました。

そして、約6年間にわたって理念に合致した人材を採用し続けた結果、社員の質が大きく向上しました。この結果、特に20代の若者からの応募が顕著に増加しています。

若いスタッフとの対話から、彼らは当社を通常の飲食店とは一線を画す、革新的でITを積極的に取り入れる企業と認識していることが分かりました。

飲食業界には一般にネガティブなイメージがある中で、当社は適正な労働時間と適正な賃金を提供し、社員のワークライフバランスを重視することで、そのイメージを覆したいと思っています。そのため、私たちは自ら考え、経営を学び、お客様の喜びを直接感じられる独特の職場環境を提供していきたいと思っています。

執筆

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