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お店ラジオ 2023/11/28 2023/11/28

私たちが目指すお客様の真の喜び「JOY」

about

「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFM・FM大阪で毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。

今回のゲストは、1937年に米国で創業し、2006年に日本へ進出したクリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン株式会社に2012年に入社。2014年には副社長に就任し、日本進出以降、店舗が拡大を続ける一方で厳しい経営状況が続いていた中で、丁寧なお客様目線の改革を実施。経営をV字回復に導いた、クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン株式会社の代表取締役社長  若月貴子さんです。

クリスピー・クリーム・ドーナツは、1937年に米国で創業し、2006年の日本進出時には一時64店舗まで拡大するも、その後厳しい経営状況が続いていた、若月さんが2012年に入社して以降、コンセプトの見直し、お客様の「JOY」を追求する姿勢、サービススタンダードの徹底、そして強みを活かした商品開発など、丁寧なお客様目線と従業員目線での改革が続けられ、経営はV字回復。この独自の戦略について、3回に分けてお話しいただきます。

第1回は、日本進出と経営危機、そしてコンセプトやサービスの改善など再生戦略についてお送りします。

 

この記事の目次

 

クリスピー・クリーム・ドーナツの日本進出と当初の課題

クリスピー・クリーム・ドーナツは、1937年に米国ノースカロライナ州ウィンストン・セーラムで創業した高品質のドーナツとコーヒーを提供する業界のリーディングブランドで、現在は31ヶ国、約1600店舗を展開しています。

日本国内では、2006年12月に1号店をオープンし、現在は66店舗を展開しています。創業以来、オリジナルレシピを守り続け、ひとつひとつ丁寧に、手づくりで作るドーナツを提供し、元気や笑顔、幸せな気持ちになれるお店づくりを目指しています。

私は、日本進出当初から社員として働いていたのではなく、経営コンサルティングファームなどを経て、2012年に入社しました。当時のクリスピー・クリーム・ドーナツは、積極的に地方へ進出している最中で、地方にその地域の1号店を出すと、打上げ花火のように売上が上がるという時期でした。

ですから、表面だけ見ると、地方にどんどん積極的に出店をして、事業を拡大しているようには見えていましたが、実際に中に入ってみると、既存店の売上は日本進出以来、一度も成長したことがありませんでした。ずっと右肩下がりで、結局、既存店の売上減少を新しい出店で補いながら数を増やしていったという状況でした。

 

再生の第一歩〜「美味しい」「楽しい」「みんな大好き」〜

私は2014年に副社長に就任しました。そして、再生の第一歩として、三大都市圏以外のお店を一度すべて閉店し、「選択と集中」という戦略を採用しました。東京、名古屋、大阪の主要エリアにお店を集中させ、その上で既存店の売上に真正面から取り組みました。

改革を始める少し前から、私は会社のビジョンの検討を重点的に行っていました。自分たちがどこへ向かい、何を目指し、チームとしてどのようなアクションが必要かを徹底的に議論し、組織全体で共通のビジョンを持つことを目的としました。この取り組みは成功し、チームの結束が強まったと感じています。

もちろん当社にはグローバルなミッションやビジョンはあり、それは本社で策定されていました。私は、それをもとに日本の顧客に分かりやすく伝える言葉を経営陣と共に検討し、2013年から2014年にかけて、新しいビジョンを策定しました。結果的に、「美味しい」「楽しい」「みんな大好き」というフレーズを採用しました。

クリスピー・クリーム・ドーナツは1937年の創業で、マクドナルドやミスタードーナツよりも長い歴史を誇ります。創業からの変わらないレシピで手作りのドーナツを提供しており、この伝統的な姿勢は「美味しい」という言葉に象徴されています。「楽しい」は日本の顧客のキャッチーなドーナツイメージから着想を得ました。

これらの二つの要素を組み合わせ、顧客に愛されるブランドイメージを伝えるために、「美味しい」「楽しい」「みんな大好き」というフレーズが生まれました。

 

私たちが目指すお客様の真の喜び「JOY」

私たちがドーナツを販売する目的は、単にお腹を満たすことではありません。

私たちが目指しているのは、お客様に真の喜び「JOY」を感じていただくことです。この「JOY」は、一時的な幸せや高揚感だけを指すものではなく、試験勉強を頑張った後に自分自身へのご褒美として味わう、深い満足感や達成感を意味します。

私たちはブランドとして、このような喜びをお客様に提供できるような価値を追求しています。そのために、どのような商品を作るべきか、どのようなサービスが必要か、どのようなお店を展開すべきか、私たちは絶えず議論し、取り組み続けています。

日本での初出店時、ブームは非常に大きく、商品を店頭に並べるだけで売れるという時代でした。そのため、お客様の声や考えを十分に取り入れることなく、私たち独自のブランド像を提供していました。これは、お客様とのコミュニケーションが不足していたことを意味します。

 

お客様にとっての価値を提供する

私たちのお店には、「ダズン」という12個のドーナツを詰めたボックスがあります。このボックスは私たちのアイコンとしての役割を果たしています。ダズンは単品と比較するとディスカウントされた価格で提供していますので、お客様にとっての価値は「お得さ」です。

ところが、私たちのポスターでは12個のセットの中にどれだけ魅力的なドーナツが含まれているかを強調していました。これは、私たちがお客様に真に伝えたい価値ではないだろうと気づきました。

「私たちの商品の真の価値は何か?」という問いをもとに、その価値を「12個でいくらお得」という形で明確に伝えた結果、12個入りボックスの売上は10%増加しました。

そのようにしながら、私たちが日本市場に参入した初期、「クリスピーバブル」と呼んでいる時期に受け入れられていた価値観を改めて見直していきました。
私たちの商品の真の価値とお客様とのコミュニケーションの本質を見直すことで、再建の軌道に乗りかけたと感じています。

以前は、流行やブランド価値で高価な12個入りボックスが人気でしたが、本質を見直した結果、お客様が真に求めていたのは「コストパフォーマンスの良さ」だったことが明らかとなり、私たちもそれに対応できるようになりました。

 

 

サービススタンダード「SWEET」

そのようにして原点に立ち返ることで、お店の経営は少しずつ改善していきました。売上を一時的に伸ばすのではなく、継続的に上げていくために何をすればよいかという視点で取り組み始めました。たとえ優れた施策や商品があったとしても、現場の伝達力やマネジメントが不足していると、その効果は半減してしまいます。

重要なのは、「現場力」を強化し、そこに注力することです。そのため、私たちは基本的な接客態度や「いらっしゃいませ」という挨拶などのサービススタンダードを徹底的に実践することも重視しています。

このスタンダードを私たちは「SWEET」と呼んでいます。Sは「Smile(スマイル)」、Wは「Welcome(ウェルカム)」、Eは「Entice(エンタイス)」と「Engage(エンゲージ)」、Tは「Thanks(サンクス)」を意味します。

お客様との接客において、原点に戻りこの「SWEET」を基本として行動することにより、サービスが改善され、顧客満足度も向上し経営も改善されていくのです。

 

第1回は、日本進出と経営危機、そしてコンセプトやサービスの改善など再生戦略についてお送りしました。
第2回は、再生のためのアンケートやキードライバー分析、ブリュレグレイズドの成功についてお送りします。

 

 

執筆 横山 聡

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