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お店ラジオ 2022/01/19 2024/03/14

兄、たった1年で2万個売るフルーツサンド屋を作る

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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。

今回のゲストは、話題に事欠かない兄弟をお招きしました。破天荒で行動力のある、牡蠣小屋を営む兄の丹下工(たんげたくみ)さんと、株式会社SHIFTという一部上場企業の社長をつとめる最強ビジネスマンである弟の丹下大(たんげまさる)さんです。この兄弟を主人公に繰り広げられる漫画のようなストーリーと、二人が描く飲食業界の未来についてお聞きしました。

丹下兄弟のお話をご紹介する3回目は、衝動的に始めた兄のフルーツサンド事業の顛末と、弟が立ち上げる新サービスの内容についてご紹介します。

 

この記事の目次

    1. 今度はテレビで見たフルーツサンドを売ってみよう!
    2. 思いついた次の日からフルーツサンド屋さんの準備を進める
    3. 保健所と成分表示をするかどうかで揉める
    4. 百貨店にオープンするも、クレームの嵐
    5. Instagramの衝撃的な効果
    6. 商業施設がたくさん呼んでくれた意外な理由
    7. 今では大盛況、過去を振り返って成長を実感
    8. 苦手だったIT化をあらゆるところで
    9. 弟の新サービスは「DXを使い倒して、もっと店長を楽に稼がせること」
    10. あらゆる業務を自動化する
    11. 重労働なのにあまりお金がもらえない、という業界体質を変えたい
    12. お店とは、人生に彩りを与えてくれるもの(弟)
    13. お店とは、上を目指して本気で努力する場所(兄)

 

今度はテレビで見たフルーツサンドを売ってみよう!

ECがうまくいってくると、また別の欲が出てくるようになりました。それは、スタッフの継続雇用です。私たちのかき小屋は期間限定なので、継続雇用をすることができません。また、コロナによって、実家の居酒屋も苦境に立たされ、スタッフを雇い続けることが難しくなっていたのです。

その人たちにもご飯を食べさせ続けるにはどうしたらいいか、常に考えていました。そんな時、めざましテレビでフルーツサンド特集をやっているのを見ました。忘れもしない6月22日です。これを見た時に、ピンときたんです。これしかない、明日からフルーツサンドを作ろうと。

 

思いついた次の日からフルーツサンド屋さんの準備を進める

と言うことで、次の日の6月23日には、福山で一番有名なフルーツ屋さんに交渉にいきました。かき小屋の一年目では牡蠣の質をケチって失敗したので、フルーツの質にはこだわろうと思っていました。そのお店での交渉が成功して、フルーツ安定供給の目処が立ったので、次は道の駅に出向きました。知り合いに頼んで軒先を貸してもらい、営業する許可をもらいます。

フルーツサンドの試作も始めました。フルーツは先ほどの福山の最高級品を仕入れています。クリームは業務用のものをありったけ試食し、一番淡白なものに決定。パンは大手のものを使用することにしました。作り方はGoogleやYouTubeを見て研究し、何度も試作しました。軒先での試験販売で得た情報を分析し、徐々にフルーツサンドをブラッシュアップしていきます。

 

保健所と成分表示をするかどうかで揉める

そのあたりで保健所に許可をもらいに行くと、食品衛生法で成分表示があった方がいいということがわかります。スーパーやコンビニの裏に貼ってある、カロリーや原材料が書いてある紙のことです。これがある方が信用度が増します。

金銭的にも時間的にも厳しかったし、法律でも義務があるわけではないので必要ないと思い、保健所と言い合いになったことを覚えています。結局保健所の言うことを聞くことにし、成分表示をつけることにしました

 

百貨店にオープンするも、クレームの嵐

8月、百貨店に固定店舗を出すことになります。最初の一ヶ月は知り合いを中心にものすごく順調に売れたのですが、次第に売れ行きが落ちていきました。原因は分かっていました。私は原価率を下げるために、フルーツを断面にしか置かず、ほとんど生クリームで埋めていたのです。案の定、それを指摘する内容のクレームが山ほどきていました。

牡蠣の時にケチってはいけないと学んでいたのに、結局また同じような過ちを繰り返してしまったのです。これを反省し、原価率を5%上げて、中までフルーツが入るようにし、クレームが出ないようにしました。

 

Instagramの衝撃的な効果

また、アルバイトの女の子の勧めで、Instagramを始めてみることにしました。その女の子に、どうせやるならと1日1記事投稿させてみると、だんだん話題になっていきました。すると、それがきっかけで、12月ごろ、日本で一番大きい商業施設から声がかかりました。これはすごい、と意気揚々と乗り込んで実際に販売してみると、ものすごく売れたんです。

そこでは、売るための様々な工夫をしました。まず、大型商業施設は女子高生が大量に来るので、「買わなくてもいいから、写真だけでも撮ってね」「できればハッシュタグつけてインスタに載せてよ」などと営業トークをしていきました

するとそのインスタグラムがバズっていき、どんどんお客さんが来るようになるんです。これはいい、と思ってどんどん研究して改善していきました。より多くの人に目に留まってもらうために、なるべく見栄えをよくできるよう改良を重ねました。

弟に「5秒ほどで伝えられなければ説明とは言えない」と教わっていたので、その文言もこだわって考えました。最終的に『見るだけでも写真だけでもどうぞ!』という文言に決め、こちらを見た人を呼び込んでいきやすくしていきました。

 

商業施設がたくさん呼んでくれた意外な理由

どんどんとバズっていき、お客さんも増えて行き、いろんな商業施設の人も呼んでくれるようになっていきました。なぜここまで商業施設に呼ばれるのかは不思議だったのですが、話を聞くと成分表示をしっかりやっているフルーツサンド屋がほとんどない、というのも理由の一つだったようです。

成分表示をしていないと商業施設でお店を出すことはできないらしく、「評判がいいけど成分表示がない」というお店は必然的に選択肢から外れることになります。結果的にうちの競争相手が減っていました。あの時に保健所の言うことを聞いておいて本当によかったと思いました。

 

今では大盛況、過去を振り返って成長を実感

こうして、フルーツサンドは開始から1年経った今では月に2万個売れるという大盛況ぶりとなりました。実家の居酒屋もフルーツサンド工場に変えてしまい、元のスタッフたちも無事に雇用することができています。かき小屋の方もiPhoneで状況を確認しながら同時並行で進めています。

かき小屋のシーズンが終わったらそのスタッフをフルーツサンドの方に連れて来ることで、レベルもロイヤルティ(帰属意識)も高いスタッフを継続雇用することもできていますし、その点もすごくうまくいっていると思います。

昔の売上や利益すらよく分かっていなかった時を考えたら、すごく成長したなあ、と思って感慨深いです。今回は弟につきっきりで助けてもらう、ということもなかったので、自分なりに頑張れたのかなと思っています。

 

苦手だったIT化をあらゆるところで

今こうしてiPhoneで遠隔で店の状況をチェックすることができるのは、この数年で少しずつ IT化を進めてきたからです。POSレジの導入もそうですし、スマレジのタイムカードなんかもその一つです。

8年ほど前、まだ普通のタイムカードを使っていた時、アルバイトの子が別の子のタイムカードを切っているのを偶然目撃したんです。あれ?と思って尋ねると、「電話が来ちゃったから、先行って俺のタイムカード切っておいて!」と頼まれたというのです。

これにはすごくびっくりするとともに、「俺が見ていない時には、こんなことが起こりまくっているのではないだろうか…」と疑心暗鬼になってしまいました。そこから、何か解決法がないかと探していた時に見つけたのが、スマレジのタイムカードでした。

これは自分の写真を取らないとタイムカードが切れないようになっていて、代理ができないようになっているのです。これによって、アルバイトを疑わなくて済むようになりました。仕組みで解決するのが大事なんだと思いました。

 

弟の新サービスは「DXを使い倒して、もっと店長を楽に稼がせること」

※話者は弟

弟の僕もこの場に呼ばれたのは、実はこれからスマレジさんと協力して、お店のDX化を進めようとしているからなんです

僕が社長をつとめるSHIFTは先日某グルメサイトで有名なG社の株主になったのですが、ではどんなサービスをやろうか、となった時に兄との一連の体験を思い出しまして。オペレーションの改善によって兄のお店が激変したことから、飲食店はオペレーションがすべてであり、そこをDXで効率化できればもっと飲食店には可能性が広がっているのではないかと思ったんです。

コンセプトは「DXを使い倒して、店長一人で年収700万円もらって、ワンオペでお店を回せるようにすること」です。スマレジさんと協力してPOSレジをしっかり入れ直して、集客はグルメサイトにおまかせしつつ、Instagramのようなメディアを組み合わせて、店長がどこにいようともうまく回るようにする。そして店長はスナックのママのように、馴染みのお客さんに喋りかけるだけ、という状況を作りたいんです。

 

あらゆる業務を自動化する

※話者は弟

まず、モバイルオーダーや店内オーダーは当然組み合わせます。店員を呼んで注文するのではなく、専用の機器やスマートフォンで注文する。こうすれば店員さんが忙しい時になかなか対応してもらえずにイライラすることもなくなります。

会計がPOSレジによって自動化されていて、カードでサクッと落とせれば、とても楽になります。さらに言うと外からの予約も席単位でできると良いです。注文を運ぶのもロボットにやらせたいです。回転寿司の新幹線走らせてお寿司を届けるシステムのように、ロボットが運んでいるとそれだけでエンタメになるはずですし、自動化されることで接客が必要なくなります。

その他、店長の仕事をどんどん自動化していきたいです。仕入れもセントラルキッチン(複数の施設に対応した食事を安定的に提供する場所)からのものが勝手に冷蔵庫に入れられていて、店長は営業開始5分前にきて少し調理して出す、と言うのが理想です。

 

重労働なのにあまりお金がもらえない、という業界体質を変えたい

※話者は弟

飲食業の店長って、アルバイトのシフト管理、最後の戸締まり、残業、片付けなど、やらなければいけないことがとても多いんです。それなのに、あまりお金がもらえないことが多い。現在日本には60万店舗くらいの飲食店があって、毎年10%が潰れていっています。原因は、単純に儲からないことや、オペレーションが大変すぎる、というものです。

でも一人でやっていると、最低限のお客さんが来てくれたら回るんです。ここでさらにオペレーションを効率化することができたら、すごく軽い負担で営業することができるようになります。SHIFTはワインバーもやっていて、実はそれも一人で、極限まで低いコストのオペレーションで回せるようにしています。お客さんには赤と白だけを選ばせて、つぐだけで終わりです。あとは楽しくお客さんと話すだけです。

このお客さんと話す、ということに集中してほしいので、前後の業務は全て無くしていきたいです。これから僕たちがやろうとしているサービスは、一つ一つは世の中にあるものです。しかしこれら一つ一つを精査して導入するのは大変です。だとすれば、うちはそれらを全部まとめた一つのサービスとして提供することで、全国の飲食業の人を楽にしてあげたいんですよね。

 

お店とは、人生に彩りを与えてくれるもの(弟)

僕はITの会社を経営しているのですが、飲食が大好きなんです。だからオペレーションを無くして、喋っているだけで楽しいっていうお店づくりをしてほしいです。

僕はお客さん側なんですけど、飲食がなければ、人生に彩りがないと感じてしまいます。僕にとって飲食業の人たちは、人生に彩りを与えてくれる舞台役者のようなイメージです。なので、そういう世界観を作ってほしいな、というのが僕の飲食に対するメッセージです。

 

お店とは、上を目指して本気で努力する場所(兄)

私は頭がよくなくて、何度も同じ失敗をしました。頭が良くてスキルの高い人は、きちんとした流れに乗っていくので、あまり飲食店には行きつきません。だから、飲食店にいるのは私を含めて、そうではない人が多いわけです。

でも、そういう人たちが、もっと社会的地位を持てるように一生懸命に頑張る場所、それが飲食店なのではないかと思います。きっかけは、広島県が公募してたかき小屋でもいいし、めざましテレビで見たフルーツサンドでもなんでも良くて、とにかくやると決めたことを本気でやることが、本人にとってもいいことなのではないでしょうか。

 

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執筆 真鍋 誠人

スマレジにて主にイベントマーケティング・コミュニティマーケティング・SNSマーケティング担当。スマレジユーザーのコミュニティ「アキナイラボ」の統括責任者をしており、店舗運営にまつわるヒント・コツを共有し相互発展していけるよう環境作りに日夜奮闘中。

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