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お店ラジオ 2023/08/17 2024/03/14

美味しいけれども美味しすぎない味の追求

about

「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。

今回のゲストは、日高屋や来来軒などの業態で、関東の駅前を中心に約400店舗もの飲食店を展開する株式会社ハイデイ日高 代表取締役社長 青野敬成さんです。

日高屋にアルバイトとして勤め始めてからの青野社長とハイデイ日高との関わりや創業者である神田正氏の「駅前」へのこだわり、さらに「美味しいけれども美味し過ぎない味」へのこだわりと今でも続く390円の日高屋のラーメンに込められた思いなどを3回にわたりお伝えします。

第1回は、アルバイトでの日高屋との出会いから現在の日高屋までの変遷についてお送りしました。

第2回は、スタッフの育成から回転率の向上、そして日高屋独自の出店戦略についてお送りしました。

第3回は、日高屋の出店戦略(続)から美味しすぎない味の追求、390円ラーメンへのこだわりについてお送りします。

 

この記事の目次

 

日高屋の出店戦略〜あえてファストフード店が出店している場所に出店?

私たちは新規出店の際、出店先の駅の選定にあたっては、様々な調査を行います。

現在では、乗降客数の基準や通行人数の計測、Googleマップなどを活用しているのですが、創業時のアプローチは単純で、マクドナルドや吉野家がある場所であれば、その近くに出店すれば成功するという考えがありました。

今日でも、競合店が存在しないエリアでは詳細な調査を行いますが、ファストフード店などがすでに存在するエリアでは、そこに出店することで成功できると判断し、すぐに出店することがあります。

一見すると、ファストフードや牛丼店と同じ場所に出店することは、顧客層が重なり競争が厳しくなるように思われるかもしれません。しかし、私たちは逆の視点からこの問題を捉えています。それは「マクドナルドや吉野家に通うお客様も毎日同じものを食べるわけではない」ということです。時には違う種類の食事を求め、その結果として私たちの店舗に足を運んでくれるお客様もいらっしゃいます。私たちは、そのようなお客様をターゲットにしています。

ファストフードや牛丼店の存在は、私たちのビジネスにとって必ずしもマイナスではなく、ある種の機会を提供してくれると考えています。既に流れを作っている他の飲食店の動向を観察し、それに乗じて私たち自身の成功を掴み取ることも戦略の一つです。

日高屋では、他の店舗と違う点としてお酒の提供も行っています。そのため、お客様にとって、昼は近隣の牛丼やファストフード店で食事をし、夜は日高屋でお酒を楽しむという使い方も可能です。

もちろん昼に昼食を食べていただくこともできますので、私たちは同じ顧客層に対して、どの時間帯でも対応可能なサービスを提供することができるのです。ですから、店舗のある地域の人々に対して、私たちの店の特長や利用方法を知っていただくことが重要なポイントとなります。

 

駅前一等地の物件の選定方法とは

また、私たちは駅前の一等地の1階に出店を検討しますが、そのような場所は競争が激しく、物件を手に入れることは簡単ではありません。たとえば、品川駅など山手線沿線のような場所でも、未だに出店ができていない地域があります。

そのうえ、仮に店舗が空いていても競争は激しく、家賃も高くなってしまいますので、採算が取れるかどうかを慎重に検討する必要があります。家賃の基準としては、私たちは売上に対するパーセンテージを設定しています。全体では、売上の約10〜11%が家賃の目安になりますが、駅前のような特に競争が激しい地域では、このパーセンテージはやや高めに設定することになります。

 

老舗の味を守りながら、ラーメンに負けない中華そばを作る

ラーメン業界ではこれまでに味噌ラーメン、豚骨ラーメン、つけ麺など、さまざまな種類のラーメンが登場してきました。しかし、町中華の中華そばはずっと一貫して中華そばのままです。しかし、時代に合わせて味を変化させなければ、ラーメンに取られたお客様が中華そばに戻ってこない可能性も考えられます。

一方で、老舗の店舗としては、味を守り続けたいというジレンマも存在しています。

過去、それほど大きな変更を意図していなかったのですが、お客様にとって味の変化が大きすぎてしまったという失敗もありました。

ですから、今では慎重に、微調整を重ねて少しずつ味を変化させるようにしています。

 

日高屋流、中華そばの磨き上げと時代への対応

日高屋の中華そばの味は、創業当初と比較すると大きく変化しています。昔の中華そばは醤油の味が際立つ味でしたが、現在は和風とも言える丸みのある味わいに進化しています。昔の味に比べて柔らかさが増していると言えるでしょう。この変化は長い時間をかけて微調整を繰り返し、時代のニーズに応じてブラッシュアップを重ねた結果であり、旨みが現在の日高屋の中華そばの特徴と言えます。

ですから、例えばつけ麺が流行ったからといって、私たちは中華そばをすぐにその方向へ変えるわけではありません。そのような場合には、新しいメニューを開発して対応します。日高屋の中華そばはある程度懐かしい味を保ちつつ進化させる必要がありますので、大幅な変更は避けるようにしています

結局のところ、一番重要なことは、以前よりも少しでも美味しくなっているということです。もちろん、美味しくなければお客様は離れてしまいますので、その点には絶えず注意を払っています。

 

美味しいけれども美味し過ぎない味

日高屋のメニュー作りにおける工夫は、「美味しいけれども美味し過ぎない味のバランスを保つこと」です。料理が美味しいことは重要ではあるのですが、美味し過ぎると毎日食べ続けることが難しくなると考えています。

例えば、すき焼きや焼き肉など、非常に美味しい料理も毎日食べ続けると、同じような感動は維持できません。そのため、日高屋では美味しさを調整し、毎日でも美味しく食べられる料理を提供することを目指しています。

具体的には、「お袋の味」を目指しています。10人が食べて6〜7人が美味しいと感じる料理は、飽きのこない美味しさを持っていると考えています。日高屋の料理の味は、そのように多くの人に喜ばれる味を追求しています。

実際には、ひとりのお客様が毎日来店されるわけではありません。月に1回や2回来ていただければ十分と考えています。ヘビーユーザーで、週に2〜3回来店してくださるお客様もいますが、それぞれの使い方や頻度で楽しんでいただけることを願っています。日高屋は、子供から年配の方まで、幅広い年齢層のお客様がさまざまなシーンで利用できるお店であることを目指しています。

 

390円のラーメンへのこだわりと作りたいお店とは

現在、日高屋では税込390円でラーメンを提供しています。物価が高騰している今日でも、お客様のお小遣いは増えていませんし、年金も上がっていません。そういった状況の中でお越しいただくお客様が多いため、私たちはこの390円ラーメンを維持すべきだと考えています。

日高屋が目指しているのは、お客様の人生の中で様々なシーンに関わり、思い出や記憶と結びつく存在であることです。

私は、お店は会社の所有物ではなく、従業員とお客様のものだと考えています。子供の頃に食べた中華そばの味を懐かしく思い出したり、自分で稼いだお金で食べる喜びを味わったり、家族との食事の場として利用されたり、年を重ねても訪れる場所であり続けることを願っています。

外食を選択していただき、日高屋を利用していただくためにも、私たちが提供する390円のラーメンはとても大切です。390円という価格は、高校生や初めてアルバイトを始めた方々にとって手の届く範囲だと思いますので、これからもこの価格を維持し、子供から年配の方まで、多くの方々の様々なシーンに関わっていける場所であることを目指していきます。

 

執筆 アキナイラボ 編集部

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