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お店ラジオ 2023/08/17 2024/03/14

駅前の1階という場所にこだり続ける立地戦略

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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。

今回のゲストは、日高屋や来来軒などの業態で、関東の駅前を中心に約400店舗もの飲食店を展開する株式会社ハイデイ日高 代表取締役社長  青野敬成さんです。

日高屋にアルバイトとして勤め始めてからの青野社長とハイデイ日高との関わりや創業者である神田正氏の「駅前」へのこだわり、さらに「美味しいけれども美味し過ぎない味」へのこだわりと今でも続く390円の日高屋のラーメンに込められた思いなどを3回にわたりお伝えします。

第1回は、アルバイトでの日高屋との出会いから現在の日高屋までの変遷についてお送りします。

 

この記事の目次

 

日高屋との出会いはアルバイトから

株式会社ハイデイ日高は、「熱烈中華食堂 日高屋」を中心にさまざまな飲食店を運営しています。

創業は1973年で、現会長の神田正がさいたま市大宮区に小さなラーメン屋をスタートさせました。現在は、日高屋や来来軒などの業態で、関東地域を中心に400店舗以上を展開しています。

私は現在、同社の代表取締役社長を務めていますが、創業者や創業家一族ではありません。私と日高屋の出会いは、愛媛から上京した際にアルバイト先としてこの会社に入社したときです。それは30年以上前のことで、その当時はまだ20店舗弱しかなく、現在ほどの知名度はありませんでした。

私がアルバイトを始めた1993年当時は、主に来来軒という名前で事業を展開していました。その年に、都内進出第1号店として「ラーメン日高」を東京都北区赤羽にオープンしました。

私がバイトとして働くことになった店舗は、偶然にも会社内で最も利益を上げている店で、月に約500万円の利益を生み出していました。これを見て、「社長は毎月新しい車に乗り換えているのではないか」と感じました。もちろん、それはその店舗だけが特別な状況だったのですが、その経験から私はこの会社に興味を持つようになりました。

 

正社員となるきっかけはラーメン日高の成長

1993年、私がアルバイトとして働き始めた年は、多くの企業が経済的困難に見舞われ、大きな変化が求められる時代でした。証券会社の倒産など、経済の不安定さが顕著で、私自身も安定した企業で働くことの重要性を強く感じていました。

そんな時代の中、私が6年間働いていた「ラーメン日高」は安定して成長を続けていました。

会社は年に一度、経営結果発表会を開催し、社長自らが会社の将来像を語っていました。私たちはそんなビジョンを聞き、そしてそれが何年か後に現実となっているのを目の当たりにして、改めて成長性や信頼性を実感し、私自身もここで働きたいと思うようになっていきました。

 

日高屋が駅前1階にこだわる理由とは

創業当時、私たちの店舗は来来軒という名前の中華料理店でした。この業態は20店舗まで拡大しましたが、職人の育成が難しいという問題を抱えていました。

そのため、1994年に豚骨ラーメンや味噌ラーメンなど、全国のラーメンを集めた新業態のラーメン専門店「ラーメン館」を開業しました。これにより、店舗数は急増して50店舗に達し、店舗の多くがラーメンに特化した業態となりました。そして、技術の必要な中華鍋を使った料理を提供しないことで、以前よりも従業員の育成が容易になり、効率的な運営が可能になったのです。

しかしながら、ラーメン店に業態を変えてしばらくすると、お客様の数が徐々に減ってきました。そこで、その次の戦略として来来軒とラーメン館のバランスを取るために、新しいブランドとして日高屋を立ち上げました。この日高屋では、中華料理とラーメンを主軸にし、さらにお酒の提供も行うという戦略をとり、見事に成功を収めました。

一方、来来軒で起こった「調理を担当する従業員の確保が難しい」という課題は、ラーメン館への業態変更により一度解消されましたが、再度、日高屋では中華料理とラーメンの調理ができる従業員を確保する必要が生じました。

そこで、当時の相談役であった高橋が、商品開発の経験を活かし料理を完全にマニュアル化することを提案しました。彼は料理の手順を具体化してマニュアルを作成し、同時にセントラルキッチンで統一の調味料などを作り、どの店舗でも一定の味や品質の料理を提供できる体制を整えました。これにより、個々の調理技術に依存することなく、高品質な料理を提供することが可能となりました

さらに、お酒の提供も強化しました。特に日本酒やハイボールに力を入れ、ハイボールは競合よりもアルコールの割合を多くして提供するといった差別化を図りました。

 

料理とお酒の緻密な設計。日高屋独自の価格・サービス戦略とは

売上を考えると、少し薄めのお酒を提供して2杯、3杯と飲んでいただく方が良いのかもしれません。

しかし、私たちは「日高屋に行けばお得」というイメージをお客様に持っていただくことが重要だと考えています。お客様に一度だけ来店していただくのではなく、何度もリピートしていただくためには、質の良い料理をリーズナブルな価格で提供することが大切なのです。

お酒の提供により、滞在時間が長くなって回転率が下がる可能性もありますが、私たちのお店では、全体売上に対するアルコール売上の比率は約15%程度であり、飲食店としては高く、居酒屋と比べると低いという水準を維持しているため、その影響は限定的だと判断しています。

競合他社との差別化要素は価格だけではありません。

他の多くの飲食店が、飲み物か食べ物のどちらか一方に偏っている中、私たちは手ごろな価格で様々な飲み物と美味しいおつまみを提供し、お客様に気軽に来店していただけるようなお店になるよう心がけています。

アルコールを提供しても、美味しいおつまみがなければお酒は進みませんから、お客様が一品で2杯飲んで満足できるよう、あるいは楽しみながらおつまみを味わい最後にラーメンを食べて帰っていただけるよう、おつまみの種類や1皿あたりの文量などの細部にも工夫を凝らしています

第1回は、アルバイトでの日高屋との出会いから現在の日高屋までの変遷についてお送りしました。

第2回は、スタッフの育成から回転率の向上、そして日高屋独自の出店戦略についてお送りします。

執筆 横山 聡

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