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お店ラジオ 2023/07/05 2024/03/14

棚の原理原則は “角・角・真ん中”

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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。

今回のゲストは、東京都羽村市のよろず屋「福島屋」を引き継ぎ、こだわりのお店づくりと徹底したお客様ファーストで小売店やお菓子屋など11店舗を経営する、株式会社 福島屋会長の福島 徹さんです。

2代目として事業を引き継ぎ、仕入れから仕事を覚え、「福島屋」ブランドを確立するまでの徹底したお店づくり戦略について3回に分けてお送りします。

第1回は、よろず屋を引き継いだ苦労から福島屋オリジナルのスタイルを確立するまでをお送りしました。

第2回は、福島屋独自の仕入、販売方法からオリジナル商品の製造のきっかけまでをお送りしました。

第3回は、福島屋における商品販売におけるこだわりと徹底したお店作りについてお送りします。

 

この記事の目次

 

良質な素材で優れた商品を提供する

私たちは地域に根ざした小規模なビジネスモデルを選択し、「良質な商品を作る」ことに集中しています。

大手企業のように大規模な市場シェアの獲得を目指していないため、競合他店がどのような価格設定やPR活動を行っているかを気にする必要はありません。

私たちの主要な目標は、自社の商品とビジネスモデルに集中し、その結果としてお客様からの信頼と満足を得ることですから、広告やPR活動にも予算を割いていません。

地域密着型のビジネスモデルを選択したことで、一時的なマーケティング戦略に頼ることなく、本質的に優れた商品をつくり出すことができており、価値に見合った価格をお客様に支払っていただけていると思っています。

 

棚の原理原則は “角・角・真ん中”

私たちは、広々としたスペース、洗練されたパッケージの陳列、楽しみながら店内を移動できるような空間づくりを心がけています。

また、お店づくりを「モノづくり」と「場づくり」の掛け算だと考えていて、店舗の雰囲気とお客様がその空間で感じる印象が重要であると考えています。何がお客様の目に映るのか、どのカテゴリーがお客様に楽しんでいただくために必要なのか、陳列する商品の関連性はどうあるべきなのか、といったことを常に考えています。

例えば、雑貨やティッシュペーパーといった商品がありますが、ティッシュペーパーの横におにぎりが置いてあったら、お客様は不快な印象を持つと思います。このように、商品と商品との関連性については気をつけるようにしています。

商品の陳列について、私には “棚の原理原則”という持論がありまして、これは「角・角・中央」という考え方で、インパクトのある商品を棚の角に配置するというものです。

例えば、竹の子の季節になったら、竹の子は棚の角に配置します。中央の部分は関連性を考慮しながら埋めていきます。

しかし、陳列については商品が多ければ良いというものでもありません。商品が多すぎるということは、何が必要で何が不必要なのかを担当者が理解していないということでもあると考えています。

お客様のニーズに沿った陳列や接客をするためには、そのお店でお客様がどの商品を選び、何を調理し、どのように召し上がるのか、お客様の食卓まで想像することが必要です。

 

意識を持って経験を重ねることで「行動が生まれる」

私たちの店舗は虎ノ門や六本木などにありますが、店舗の場所や規模により、商品の構成は変わります。特に首都圏では、惣菜やデリ商品の色彩が強調されます。

店舗によって特徴は異なるものの、店舗の運営は個々の店舗で行うのではなく、各店舗のスタッフと本部が連携して本部で管理しています。

また、私たちは商品のトレンドにも敏感ではありますが、一時的なブームよりも、継続して人気のある商品を重視していますので、一過性の流行には乗らないように注意しています。

さらに、お客様とのコミュニケーションも重視しています。「うちの田舎で育てた生姜がとても美味しい」というお客様からの話を聞き、実際に送っていただいたことがあります。その生姜を試食してみたところとても美味しかったため、商品化したこともあります。

こうした提案を受けて自分たちで商品化する過程で、スタッフは自分自身の判断力を養います。そういった経験を重ねることで、行動が潜在的な意識の中に定着していきます。そうすると、食品を食べたときに自然にイメージが湧き、意識しなくても行動できるようになります。

 

これからも続ける福島屋独自のお店づくり

現在、私たちは店舗運営に加えて、生産者との関係強化やメーカーとして麺屋を経営するなど新たな挑戦も行っています。

また、私たちの店舗では売れ残り対策として、廃棄量をほぼゼロに抑えつつ、売れ筋商品に対応して仕入れ量を増やすという方針を採用しています。特に、商品の売り方については独自に工夫を凝らしています。

そうした店舗経営の原点は教育であると私は考えていて、社員やお客様、生産者と共に成長していきたいと思っています。良質な製品をつくり、それを適切に評価する能力は、企業を継承する際に必要不可欠だと思っています。

こうした新しいことに取り組み、店舗も増える中で、新規出店のオファーをいただくこともあります。しかし、変化する時代に対応しつつ、私たちのコンセプトに基づいた店舗づくりを進めるには、まだまだ力量不足であると感じていますので、現状では新規出店のオファーについては全てお断りしています。

ですから、私たちはこれからも独自のアプローチでお店づくりを進めていこうと考えています。

 

福島屋独自の無駄を削減する仕組みとは

私たちのお店では売れ残りについても対策や工夫をしています。

例えば、イチゴを販売する際、単に商品を並べるだけではなく、お客様に「このイチゴをジャムにするのはこのタイミングだけですよ」「この量ならば、これくらいの時間でジャムが作れます」といった調理のアドバイスなども一緒に行います。

ただ食べるだけでなく加工の方法なども提案することで、賞味期限が近づきつつある商品も購入していただけるようになります。

さらに、賞味期限間近の商品については、二次製品に加工することを考えます。
例えば肉類はソーセージに、野菜はピクルスやジャムにと、新たな商品としてリニューアルします。また、弁当や惣菜に関しては、販売時間を見極めて少量ずつ製造することで、売れ残りを減らしています。

もちろんこれには、それぞれの商品が何時にどの程度売れるかという売上データの分析が欠かせません。

このような取り組みにより、売れ残りを最小限に抑えることができます。しかし、これらはあくまで一部の取り組みで、それぞれの店舗や商品によって最適な対策は変わります。

このため、常に売上データを分析し、効果的な手法を模索し続けることが大切です。

また、テイスティングマーケティングも大切な要素の一つで、私たちが最も重視していることです。それにより商品を無料で提供したとしても、それが美味しいと感じたお客様は次回その商品を購入してくださいます。

 

お店とは“自分の心の中のイメージを具現化する場所”

私にとって、お店とは「自分の心の中のイメージを具現化する場所」です。画家はキャンバスに、音楽家は音符に自分のイメージを表現しますが、私たちはそれを「場」、つまりお店で表現します。

現在、私たちは東京芸術大学の学生食堂と提携しています。芸術大学に興味を持った理由は、アートと私たちの飲食ビジネスがどのように連携できるか、という点に魅力を感じたからです。

アートは一種の哲学を表現するものだと考えています。同様に、何を食べるかという選択も一種の哲学的な要素を持っています。ですから、これら二つの領域には何か共通点があるのかもしれません。

執筆 アキナイラボ 編集部

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