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お店ラジオ 2022/03/30 2023/10/19

飲食店のIT化はリアルな店の価値を浮き彫りにする

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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFM・FM大阪で毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。

第1回は、宮野さんの海外での経験や順風満帆な立ち上げ期についてでした。
第2回は、クリスプ・サラダワークスが人気になる一方でつまらなくなったという宮野さんが、飲食店のIT化にやりがいを見出していく様子についてでした。
第3回目の今回は、宮野さんの考える飲食店のIT化をさらに深掘りしていきます。

 

この記事の目次

  1. ユニークユーザーを増やすための出店戦略
  2. IT化された飲食店が人の仕事の価値を見える化する
  3. IT化された飲食店では従来の評価指標を変える必要がある?
  4. サラダ専門店の課題“入手利便性が低い”
  5. サラダは食べたくないときも購入してもらえる珍しい食べ物
  6. IT化すればするほどリアル店舗の価値を再認識

 

ユニークユーザーを増やすための出店戦略

うちの店は去年の売上が13~14億円くらいで、そのうちの4割が店頭での売上、4割がアプリを通じての売上です。この売上の8割に当たるお客さんはすべて登録されており、いわばユニークユーザーになっています。

ユニークユーザーとはウェブサイトを訪れた人のことで、その人が何回来ても1人とカウントされます。
うちではユニークユーザーの情報は完全にデータとして残りますから、それぞれのお客さんがいつ、どのお店に来て、何を買って、いつ再来店したかなどの行動がすべてトラッキングできています。

外食産業にとって、お客さんは通常「客数」で捉えられるもので、ユニークユーザーと捉えている会社はほかにないと思います。
客数で捉えるということは、そのお客さんが新規なのかリピーターなのか、週に何回来ているのかなどがわからないということです。通常の外食企業は、そんなお客さんのデータを把握する術を持っていません。

僕たちが新しい店を出すのは、基本的にユニークユーザーを増やすためです。
ユニークユーザーになりえる人たちがまだまだいるエリアがどこにあるのかも、デジタルで予測することができています。

うちのホームページには、郵便番号を入れてデリバリー可能かどうかを調べられるページがあります。
そこで買いたいけど届かない人たちのデータが取れているのです。そういうデータをもとに、今後出店するエリアの判断をしています。

うちの店は、店の立地にはそこまで依存しないビジネスモデルのように見えますが、その一方で、新規ユーザー獲得にはCMと同じで店や看板を見てもらうことも重要なので、人の目に触れやすい場所という立地条件は重視しています。ある意味、店舗自体が広告という捉え方もしています。

ただ、店舗を広告だと完全に捉えてしまっても、やっぱりそれだけではつじつまが合わない、アナログ的なところが飲食業にはあります。そういうところが難しいですし、やりがいのあるところでもあります。

 

IT化された飲食店が人の仕事の価値を見える化する

飲食店で働こうとする人の中には、人同士の触れ合いなどアナログ的なことを求めている人が少なからずいます。そういう人たちからすれば、飲食店のIT化はそれほど望ましいことではないかもしれません。実際うちの店でも、創業からいてくれた人が、IT化を進めるうちに離れていったことがありました。

僕としては、それは自分たちの課題だと捉えています。いわゆるデータドリブンになったお店で働く人がどのように活躍できるのか、その道筋をちゃんと作ってあげないといけないということです。

そんなデータドリブンなお店なんて嫌だと思う人もいるかもしれませんが、やっぱり人が離れていく理由は、そんなお店で自分が役に立っているのかわからない、どう活躍できるのかわからないというところにあると思います。

僕たちとしてもデジタル化を進めたからこそ、この人はこういう形で売上アップに関わっていたんだとか、この人にはこんな価値があったんだ、というようなことがわかってきました。

たとえば、スタッフのシフトを組むのはテクノロジーがやりますが、その組んだシフトを人に伝えて「この通りにお願いします」というのは人がやった方が効きます。そういう仕事に価値があるということで、そういうところを見える化して、仕事として扱っていけばいいのです。

 

IT化された飲食店では従来の評価指標を変える必要がある?

中には、数値にはなりづらいけどそのおかげでお客さんの満足度が高くなる仕事があったりします。おそらく、店長やスタッフに対する従来のKPI指標も変える必要があるのでしょう。

たとえば、新規客の売上はもはや店の店長やスタッフにとってのKPIにはふさわしくありません。新規のお客さんは店に来ればたいていは買ってくれます。
来てくれるかどうかが重要であり、そのときのスタッフの接客は、最初の購入にはほとんど影響しません。

要するに、新規客の売上はマーケティング部門の責任で、そのお店のスタッフにはまったく関係ないのです。

だからうちの店では、新規客の売上はマーケティング部門の責任、ユーザーの再来店率はその店の責任、という捉え方をしています。
それができるのも、我々がユーザートラッキングをできているからです。

 

サラダ専門店の課題“入手利便性が低い”

飲食店ではお店に対するアンケートがよく行われますが、紙で回収されたアンケートはほとんど活用されないことが多いのではないでしょうか。
でも我々はアプリで買ってもらったユーザーにすぐにアンケートができますから、そのアンケートから毎月数万件のフィードバックが行われ、活用できています。

うちのアンケートで圧倒的に多いのは「おいしかった」という回答です。やっぱり、おいしいからうちのお店に来てくれているんだなということがわかります。

一方で、買いたいけどお店がないとか、買いづらいという声もいただきます。僕たちはこれらを「入手利便性が足りない」と言っていますが、そこを上げるのがこれからの課題です。

理想的なのは、ある人が「クリスプ・サラダワークスのサラダを食べたい」と思ったら、「ユーザーとクレジットカード登録をすればすぐに食べられる」状況をつくることです。

たとえばオフィスと契約して、オフィスの冷蔵庫に常時10個くらい置いてあったり、すぐにオフィスに届けられるようになっていたりということですが、そんな状況が作れたらと思っています。

 

サラダは食べたくないときも購入してもらえる珍しい食べ物

うちの会社くらいデータドリブンな飲食店は日本にはないでしょうが、世界にはたくさんありますし、どんどん増えています。
僕らとしてはうちのような店がもっと増えて、それが当たり前になってくれた方が、消費者もついてきてくれるのでありがたいです。

クリスプ・サラダワークスは、海外に出るポテンシャルは充分にあると思いますが、日本の中で我々ができることはまだまだたくさんあります。

今のクリスプ・サラダワークスは、「東京の都心のちょっと裕福な人やオシャレな人が食べている」というイメージになっていますが、サラダのような健康的な食べ物の需要は、今後増えることはあっても減ることはないでしょう。
うちのサラダを、もっといろんなエリア、属性の人に食べてもらえるようにしたいです。それこそ、店舗の数も含めてスターバックスさんぐらい当たり前のものにしたいですし、なり得ると思っています。

サラダひとつ1,200円という値段設定は、当然、主要都市の方が成功率は高いと思います。でも地方での可能性が乏しいかというとそうは考えていません。
かなり単価の高いピザはいまやどこでも人気があります。Netflixなどのサブスクに月に何千円も払っている人も少なくない状況です。

とくにサラダというのは面白くて、食べたくないときにも購入してもらえる珍しい食べ物です。たとえばハンバーガーは、「気分じゃないけど、ハンバーガーを食べよう」ということは絶対にありません。
でもサラダは、「別に食べたくないけど、ちょっと昨日食べ過ぎちゃったからサラダを食べよう」ということがあります。

毎日サプリを摂っている人は多いですし、人が自分の健康に投資するお金はもっと増えるでしょう。地方であろうと、うちの商品を受け入れてもらう素地は十分あると思っています。

ひとつ検討しているのが、アップルウォッチのアプリで、「1日1万歩歩かなかった翌日のランチには、必ずクリスプのサラダが届く」というシステムです。そのサービスが月500円だったら、結構払う人がいるのではないでしょうか。
我々としては、それでサラダも買ってもらえて、サービス料で月500円もらえるなら、すごくいい話になります。

 

IT化すればするほどリアル店舗の価値を再認識

お店は人々がつながる場所であり、僕らのビジネスの中核だと思っています。

僕らは飲食店のIT化をどんどん進めてはいますが、テクノロジーはあくまでも手段であって、主従で言うと従です。おいしくないサラダ屋がどれだけデータドリブンでも消費者にとってはどうでもいい話で、お店でおいしいサラダを提供できてこそ、テクノロジーは生きてくるのです。

そして、いくらデジタル化を進めても、人間が補完するべきところは出てきます。デジタル化をすればするほどリアルなお店の価値を再認識するというのが、いまの僕の実感です。

 

 

 

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執筆 横山 聡

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