近年、リアルタイムでデータの管理ができるPOSレジの導入が増えています。その背景として、コロナ渦やECの台頭によりお客様の消費行動が大きく変化している現代において、競争力を獲得するために、データの管理が非常に重要になったことが考えられます。POSレジで取得したPOSデータを活用すれば、様々な分析が可能で、お店の在庫管理や店頭販促施策などの改善ができます。
今回は、その中の一つである来店者分析について、そのメリットや事例も交えて解説します。
この記事の目次
来店者分析とは?
来店者分析とは店舗に来たお客様の分析をすることです。分析する内容は、年齢や性別などの属性、来店経路、どのような商品を購入したのかなどの購買行動の情報です。これらの情報を入手することで、適切なターゲット設定や販促施策の立案および効果測定が可能になります。次項で来店者分析のメリット、実際の事例を交えて解説していきます。
来店者分析のメリット
施策の効果測定ができる
お客様の実店舗への来店と購入に繋げる為に、広告やSNSなどを使って集客したり、陳列や店内POPなどを工夫して売場を改善したり、ポイントカード発行やクチコミキャンペーンなどの再来店施策を打ったりと、様々な店頭販促施策があります。しかしそれらの施策を行なっても、どれだけの効果が発揮できたのかを測定できている店舗は多くないでしょう。来店者分析を行えばそれらの効果測定が可能になります。
例えばご自身が美容室に行った際、事前にカルテで「当店をどこで知りましたか」という質問に回答する機会が多いと思います。これも来店者分析の一つであり、お客様ごとの来店経路を集計することで、販促施策の効果測定が可能となります。
適切なマーケティングが可能になる
新たに販促施策を検討する際にも来店者分析を行う事により適切なマーケティングが可能となります。その為に出来るだけ多くのお客様情報を正確に入手し、蓄積できる仕組み・体制を整えることが重要です。
店舗運営を合理化できる
時間帯別の来店人数が分かれば、営業時間やスタッフの配置をより適切に検討することが可能になります。また購入商品の傾向が分かれば、適切な在庫補充を検討をすることが可能になり、店舗運営を合理化することができます。
1年間で月商2倍に!来店者分析を行ったコスメセレクトショップの事例
店頭販促施策は業態や業種、規模、立地などによってやるべきことは変わってきます。来店者分析も同様で、全ての店舗で全く同じ方法の分析をすることはありません。しかし、他店の分析事例を学び、自分たちの店舗だったらどのようにするだろうかと考えることはとても重要でしょう。
今回は都内の雑居ビルの二階に構える、個店のコスメセレクトショップにおいて、来店者分析とそれに基づく販促施策の事例を参考までにご紹介いたします。この店舗は来店者分析を行うことによって、月商が1年間で2倍以上になりました。具体的に行なったことは下記になります。
- どのようなお客様情報を蓄積すべきかの検討
- 情報蓄積のための仕組み・体制の構築
- 情報の分析と施策の立案
- 施策の効果測定を行いPDCAを回し続けること
属性を決める
販促施策を考えるにあたり、まずどんなお客様が来ているのか、属性を調査するところから始めました。ではその属性をどうやって決めたのか、その考え方を解説していきます。
売上は「来店者数×購入率×購入単価」で成り立ちます。売上を伸ばすためにはこの項目のどれか一つ以上を伸ばす必要があり、この方程式の各項目それぞれを明確にすると決めました。
来店者数は、新規来店数と再来店数に分けることができます。また新規来店を増やす為に、どこで店舗のことを知って来店したのかという来店経路も明確にする必要があると考えました。
購入率については来店者数と実際の購入者数の両方を集計すれば導くことができます。
最後に購入単価については、いつ、どの商品がどれだけ売れたのかまで明確にすることが重要となります。
以上の事を踏まえて下記の情報を集めることにしました。
- 来店者数
- 購入者数
- 来店経路(通りがかりやホームページなど)
- 購入日時
- 購入商品(種類、数量)
これらの情報が分かれば、来店数にアプローチすればいいのか、購入率にアプローチすればいいのか、購入単価にアプローチすればいいのかを、データに基づいて意思決定することができます。
また来店数にアプローチすると決めた場合、現在の来店経路のどこに伸び代があるのか、新たな来店経路の開拓をすべきなのかなどもデータに基づいて判断することができます。
お客様情報を蓄積するための仕組みと体制の構築をする
先程の情報を自動で蓄積するために導入したのがPOSレジです。POSレジとはタブレットやスマホに専用のアプリをインストールして、端末をレジとして使うもので、購入商品をレジに入力することで、購入日時や購入商品のデータ、取引数も簡単に蓄積・集計できます。
この店舗では、他のアプリとの連携や機能拡張が魅力的なPOSレジ「スマレジ」を導入しました。また来店経路を記録・集計する仕組みを構築するために、購入時に「客層」を入力する項目を作成しました。
この店舗では「客層」の入力は以下の3点のような選択式に設定しました。ポイントは選択項目に漏れとダブりのない内容にした点です。
- 年代:20代未満、20代、30代、40代、50代、60代以上
- 性別:男性、女性
- 来店経路:再来店、通りがかり、ホームページ、Instagram、メディア媒体、紹介、スタッフ、その他
年代と性別に関しては元々蓄積することを考えていませんでしたが、お客様の解像度を上げるために項目に加えました。来店経路に関して「その他」は基本選択しない想定で、限りなく全て列挙したものが上記項目になります。
POSレジの設定後はスタッフに、お客様ヒアリングとレジ入力の徹底を落とし込む必要がありました。また来店のみのお客様の場合は、日別の来店数だけをアナログで記録するようにしました。
来店者数のカウント漏れや、来店経路のヒアリング漏れなどがあったスタッフは「その他」や「通りがかり」などの項目を選択してしまったなど、この店舗の来店者分析において最も苦戦したことがこの情報の蓄積であり、スタッフのオペレーションの徹底でした。
効果測定のフェーズになった際は、特に情報の正確さが非常に重要になります。対策としてスタッフになぜお客様情報が必要なのかを、来店者分析の目的から伝え、正確に情報を蓄積するように言い続け、数ヶ月かけてオペレーションを徹底させました。
蓄積したお客様情報を分析し、新たな施策を立案する
この店舗では来店数を伸ばす戦略をとると決めて、来店経路に着目しました。来店経路ごとに売上構成比を算出すると以下のようになりました。
- 再来店:50%
- 通りがかり:4%
- ホームページ:6%
- Instagram:3%
- メディア媒体:3%
- 紹介:15%
- スタッフ:15%
- その他:4%
※数字は実際のものとは少し異なります
次に各来店経路ごとに施策のアイデアを下記のようにブレストしました。
- 再来店:LINE公式アカウントでお客様のアフターフォローをする(登録は来店者のみ)
- 通りがかり:看板のデザインを工夫する
- ホームページ:SEO対策をする
- Instagram:キャンペーンDMを送って店舗来店を促す
- メディア媒体:メディア媒体に取り上げてもらうように営業する
- 紹介:紹介キャンペーンを実施
- スタッフ:スタッフ割引を作成
この中から費用と効果、所要時間の三つの軸でそれぞれ検討し施策を考えます。この店舗では「再来店」「紹介」「Instagram」の3つに対してアプローチする事になりました。
効果測定を行ってPDCAを回す
施策を立案して実行したらその効果測定をすることが重要で、再び蓄積したい情報を決めます。この店舗では、LINE公式アカウントの登録状況と提案状況を記録・集計できる仕組みを構築しました。
これによってより正確にアカウントの効果測定をできるようになりました。来店経路の再来店数とその構成比が増加した際に「登録済み」のお客様の来店が増えたのか、アカウント導入前の「未登録」のお客様がたまたま増えたのかなどの判断が可能となるからです。また提案に対する登録率も測定できるため、スタッフ別にアカウントの提案が成功しているのか、そもそも提案漏れがないのか、までを追うことが可能となりました。
効果測定を行った後はその施策を継続するか、改善するか、中断するかの判断を行います。どのような意思決定をしても良いですが、ここで大事なことはなぜそのような効果になったのかの原因を把握することです。仮に中断という決断をしたとしても、原因が分かればそれがナレッジとして蓄積され、新たな施策立案に役立つからです。
LINE公式アカウントの場合、導入自体は継続しましたが、行っていた毎週の情報配信は費用対効果が低いと結論づけ、現時点では中断するという意思決定をしました。逆にお客様との1to1のコミュニケーションを改善するようにしました。このようにPDCAを回すために、来店者分析は非常に役立ちました。
来店者分析はとても重要!初心者にはスマレジがおすすめ
今回は来店者分析のメリットや、分析を取り入れたコスメセレクトショップの事例について解説しました。来店者分析をすることで、立案、施策のPDCAを回す上でも、マーケティングとして有効となります。また、在庫補充やスタッフのシフト決めなどの検討にも役立ち、店舗運営を合理化することも可能になります。
またPOSレジを導入すると、来店者分析に必要なデータも簡単にダウンロードが可能になります。どのPOSレジを導入すればよいかお悩みであれば「スマレジ」の導入をご検討ください。スマレジであれば、お客様の購買行動の記録・集計が簡単に可能となります。また「客層」の項目を設定することで、より詳しいお客様情報を、より自由により簡単に記録・集計することができ、結果を可視化することができるため非常に便利です。