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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。
今回のゲストは、40年続く老舗のサンドイッチ専門店を展開する株式会社メルヘン 代表 原田純子さんです。飲食業界の常識に囚われない経営で、圧倒的な地位を築いたその考え方とはどのようなものなのでしょうか。詳しく話を伺っていこうと思います。
1回目は、原田さんがサンドイッチ専門店を始めた経緯と、初期の経営についてです。
2回目は、原価管理はしないという衝撃的な話を中心とする経営の考え方についてです。
この記事の目次
店舗での製造は、むしろロスを少なくする
我々はセントラルキッチンで作って各店舗に送るのではなく、店舗で調理しています。
こうなるとロスが多くなるのではないかとよく思われるのですが、むしろロスを減らすことができます。
このロスというのは食品の廃棄という面でもそうですが、チャンスという面でもそうです。
例えば商品が一気に売れてしまっても、その場ですぐに作ることができればチャンスをロスすることがありません。
逆に残りそうだったら作るのをストップして調節したりすれば、無駄な食品ロスが出ることもありません。このやり方の場合、全て完売という状況を作るのは非常に難しいのですが。
ゆで卵ですら店内で作っています。これはなぜかというと、美味しいものを作ってくれるところがないからです。
そこそこ美味しいものならいくらでもあるのですが、本当に納得のいくものはありません。我々は昔から1個60円の卵を使っていて、こんなにいいものを使っているお店はどこにもないと思うんです。
原価管理はしない。積み上がった原価を見て、好きな値段をつける
原価管理はしません。好きなものを作って、そこから積み上がった原価を見ながら好きな値段をつけて、「よかったらどうぞ買ってください」というスタンスです。
法外な利益を乗せるわけではないので、安くすればそのぶん質が落ちます。そうなったら魅力がなくなってしまうと思うんです。
メルヘンはどの商品に関しても他のところよりもずっと美味しいものを作ることを意識しています。
営業や宣伝はしたことがない
こんな感じなので、振り返ってみると売ることは二の次にしていたなと思います。
たとえば、今まで営業職を置いたことが全くありません。それはなぜなのかとよく聞かれるのですが、別に戦略があったわけではありません。
強いていうなら、まだ宣伝するレベルのものになっていないと思っていたからです。
だから宣伝はしなかったのですが、商品が一人歩きして勝手にお店が忙しくなってきて、いつの間にか営業しないままここまできました。
最初は自分の給料を一番低く設定していた
私は給料をあまり取らなくてもいいと考えていました。
一番最初は特にお金に困っているわけでもなかったため、皆さんよりも低くていいと思っていました。だから私の給料が一番低かったですね。
そんな状態でしばらくやっていたら、怪しまれて税務署がやってきてしまいました。
すぐにそれなりの繁盛店になったのに、私はお店にも入っていないし経理のこともやっていないし、社長のくせに給料が一番低い…そんな状態で経営している人なんていないので何かあるのかと思われたのでしょう。
こんなことになるくらいなら、と思ってそこからは私が一番もらうことにしています。
パンにこだわりがあるので幅広く展開はできない
今は首都圏中心に27店舗を展開していて、百貨店や駅ナカに多く出店しています。
百貨店も駅ナカも、本当にとびっきりの立地のところにだけ出しています。
百貨店と駅ナカでは求めるものが少し違っています。まず駅ナカですと、基本的に急いでいるので素早い接客が求められます。百貨店だとブラブラしている場合が多いので、捌くような接客は求めておらず、むしろ話し相手になったりじっくり質問に答えたりする方が需要があったりします。
首都圏以外では名古屋と京都の2店舗しか出店しておらず、全国にたくさん出したり、ましてや海外展開もしません。たくさんのオファーがあるのですが、基本的に断っています。
これはパンにこだわりがあるためです。市販のものを使えばいくらでもできるのですが、そうではないため、たくさん出店するのが難しいのです。
立地はとびっきりのところだけ
やはり立地は重視します。作ってお待ちする業態なので、人通りがあるかどうかは大事です。
そして出店してからは大体同じような商品でスタートして、しばらく待ちます。するとだんだん傾向が見えてくるので、その後の戦略は現場で考えてもらいます。各店舗の店長のリアルな感覚に任せるのが一番いいと思っているからです。
1番売れた店舗は、東京駅のエキュートです。月に2,000万円くらい売り上げていて、最高で2,300万円くらいになったこともあります。
ただ、コロナ禍には東京駅に人が全くいないという現象が起き、一切売れないということもありました。最低記録を持っているのも東京駅の店舗です。
売れるお店ほどショーケースが小さい
サンドイッチは単価が低いのでたくさん売らなくてはいけません。だからやることを絞って素早く提供できるようにしたり、忙しい時はメニューを絞ってお客さんが迷わないようにしています。
昔は大きいショーケースで60種類くらい置いていたのですが、それだとお客さんが迷ってしまったり行列ができてしまったりします。端の商品が見えづらいという問題もあります。ですから、今は売れるお店ほどショーケースが小さいです。
今回のお話はここまでです。次回は、原価管理はしないという衝撃的な話を中心とする経営の考え方についてです。