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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。
今回のゲストは、40年続く老舗のサンドイッチ専門店を展開する株式会社メルヘン 代表 原田純子さんです。飲食業界の常識に囚われない経営で、圧倒的な地位を築いたその考え方とはどのようなものなのでしょうか。詳しく話を伺っていこうと思います。
原田さんのお話を紹介する1回目は、原田さんがサンドイッチ専門店を始めた経緯と、初期の経営についてです。
この記事の目次
老舗のサンドイッチ専門店 “メルヘン”
株式会社メルヘンは、40年前にオープンしたサンドイッチ専門店です。
元々食品関係の会社で役員をしていた時に、サンドイッチを扱っていました。
その会社を辞める時に「連れて行ってほしい」と声をかけてくれた人たちがいて、その人たちの職場を作ってあげたいという想いから会社を作りました。
起業をすることが目的だったわけではありません。
だから今でもお店には入ったことがありません。
創業者としては珍しいと思うのですが、お店の鍵を開けたり閉めたりしたこともありません。
広くて立地が悪いところと、狭くて立地がいいところに同時オープン
最初は15人ほどを採用し、2店同時にオープンしました。
1店は銀行の脇という、明らかに人通りが多くて立地がいいところに出しました。ただ、そこはすごく狭かったので製造スペースを設けることができませんでした。
そのため、もう1店は立地は良くないけど家賃が安いところにオープンしました。
そこでスペースを取り、商品を製造します。
今では他の企業を頼ることでいろんな作業を減らせるようになったのですが、昔はカット野菜のようなものもなくて、あらゆるものを社内で準備しなくてはいけませんでした。
たとえば、じゃがいもが必要となったら大量のじゃがいもの皮を剥く作業が必要になります。そのあまりの大量さに、1日でバイトを辞めた人もいるくらいでした。
商品開発の時間はわざわざ取らない
最初はたまごサンドやハムサンド、ポテトサンドなどのオーソドックスなメニューを取り扱っていました。
そこからたくさんメニューが増えていったわけですが、実は商品を増やそうと考えたことはありません。サンドイッチは「パンで挟めばサンドイッチ」なので、美味しそうなものを次から次に思いついてしまうのです。ですから、商品開発のための時間をわざわざ設けたことはありません。
足し算ではなく引き算で作ったこだわりのパン
昔はフルーツサンドというものを見る機会は全くなかったと思います。そんな中、なぜフルーツを入れたのかというと「片手で食べられるケーキ」のようなものがあったらいいなと思ったからです。
普通、ケーキはお皿とかフォークとかが必要です。そういったものがなくても、どんなシーンでも食べられるものがあったらいいなという感じです。
メルヘンではパンに1番こだわっていて、異物感がないものにするよう心がけています。たとえばご飯だと、美味しければどのおかずも選ばないですよね。ご飯が特に主張をしていないから、いい意味で中身を引き立てるのだと思います。
それと同じように、異物感がなく中身を引き立てるようなパンを開発することに注力しました。足し算というより引き算をしたパンです。
パンの権威に協力してもらい理想のパンを作る
主人は研究所の所長をしており、真空凍結乾燥機という機械の設計をしていました。そのときにパンの分野でノーベル賞をもらえそうな先生のお手伝いをすることになりました。
その先生は世界中から酵母菌を集めてパンを作っておられたのですが、そのパンをいただいたら本当に感動するくらい美味しかったんです。
しかしあくまでも趣味のため、そのパンは市販されていませんでした。
当時すでにメルヘンを始めていたのですが、その先生に「メルヘンはパンが違ったらもっと美味しいのにね」と言われてしまいました。
それがすごく印象に残っていて、そこからその先生に協力していただきながら理想のパンを開発する日々が始まります。
こねる機械や発酵させる機械、オーブンも製作していって、ダメ出しをしてもらいながらパンを作りました。
そこで完成した理想のパンを、パンの製造会社に頼んで再現してもらい、ようやく使うことができるようになりました。
懐石料理のようなサンドイッチを目指す!
お寿司でも懐石料理でもご飯が美味しくないとがっかりしてしまうことってないでしょうか。逆に、ご飯が素晴らしく美味しければそれだけで完成します。
いろいろ中に混ぜ込んだ外国メーカーのパンも仕入れてみたりしたのですが、見た目が綺麗で一口目は美味しくても、なんだか途中で嫌になってしまうんです。
混ぜご飯にトロをのせて食べているような感覚とでもいうのでしょうか、なんだかぐちゃぐちゃで、混ぜご飯もトロも引き立っていない。それを良しとしているのが外国なのかな、と思うくらいに日本人の口には合いませんでした。
どちらかというとご飯が好きだったので、懐石料理のようなサンドイッチを作ることを目指して、日本人好みの後味を追求しました。
多方面にアンテナを張り、自分で戦略を立てることが必要
サンドイッチをきれいに製造するのには技術が必要ではありますが、うちは毎年普通に四年制大学卒の新卒を採用しているので、特殊な人を採用している訳ではありません。
ただ、自分の頭で考えて戦略を立てることのできる人を採用したいとは思っています。
店舗の立地により戦略を考える必要があるので、いろいろなところにアンテナを張って小さい坪数で売上を作って…など、頭を使うことが多いんです。
今回のお話はここまでです。次回は、原価管理はしないという衝撃的な話を中心とする経営の考え方についてです。