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お店ラジオ 2023/06/28 2024/03/14

自社システム開発によるテクノロジー戦略とインド市場への挑戦

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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。

今回のゲストは、人と人とが繋がり、幸せになれるお店づくりを目指して、ベトナムで40店舗のピザチェーン店「Pizza 4P’s」を経営する代表取締役社長兼CEO 益子陽介さんと、副社長 益子早苗さんご夫婦です。

人と人とが繋がり、幸せになれるお店づくりを目指してベトナムで起業、そしてテクノロジーの活用による店舗経営とインドへの海外進出、東京への凱旋出店までを3回に分けてお送りします。

第1回は、益子さんとピザとの出会いからベトナムでのピザチェーン店「Pizza 4P’s」開業までをお送りしました。

第2回は、ベトナムの文化や国民性が障壁となったマネジメントについてと、コロナ禍で始めたデリバリーについてお送りしました。

第3回は、自社デリバリーサービスの開発など徹底したテクノロジーの活用からインド進出までをお送りします。

 

この記事の目次

 

莫大な開発コストをかけてでも自社デリバリーサービスを開発した背景

現在、デリバリーのために自社サービスと既存の外部サービスを利用していますが、どちらが適しているのかは、目指すビジネスの方向性によって異なると思います。

私たちの場合、デリバリーは売上の約15%を占めており、これは2022年度の売上高が約65億円だったことを考えると、約10億円に相当します。

ですから、既存のサービスを利用する場合、その手数料だけでも大きな金額となりますので、私たちのような規模の場合は自社で開発した方がコストパフォーマンスは良いと考えられます。

どこを目標として設定するかによって、自社開発するか既存のサービスを利用するかを決定することが重要だと思います。

 

テクノロジーによりサービスやマネジメントを進化させたい

お客様による食事後の店舗に対する評価は、大切なフィードバックの手段です。これは、店舗のサービス状況を理解するためにも大変有用です。

当社には多くの店舗がありますので、それぞれの店舗の状況をエリアマネージャーが正確に確認するのは難しく、見落としも避けられません。そのため、テクノロジーでこのフィードバックを改修し、ボーナスなどと連携させることでスタッフもサービスの質を意識し、その結果を公正に評価することが可能になると考えています。

私たちはテクノロジーの力を使って業界を変革することが目標であり、これまで人の手で解決できなかった問題をテクノロジーで解決することにより、サービスやマネジメントを進化させていきたいと思っています。

その目標に向けて社内に約10人のエンジニアチームがおり、今は自社で開発したシステムによって「ピザを何分で作ることができるか」まで全てのデータが取得できるようになりました。

 

人間のオペレーションをサポートする自社システムの開発

現在、ようやく私たちの新しいシステムが完成し、試験的に2店舗で導入しています。このシステムにより、サービスの遅延発生状況やピザを提供するまでの時間などのオペレーションに関わる情報を把握することが可能になりました。

お客様から「ピザはいつ届くのか?」「あと何分で来るのか?」といった問い合わせがよくあったので、このプロセスを可視化することにより、お客様のフラストレーションを軽減できると思っています。

次の私たちのシステム開発の課題は、混雑状況、注文の順番、そして窯の使用状況といった要素を明確にデータ化し、それに基づく自動化した順序付けのプロセスを作ることです。

各テーブルの食事の状況と料理の提供タイミングの連携をシステム化できることが理想で、人間が管理しなければならない部分を、テクノロジーでカバーできるようにしたいです。

 

テクノロジーでクオリティコントロールをする「ピザカメラ」

私たちはピザの品質を確保するために、「ピザカメラ」というシステムを導入しています。

焼き上がったピザが台に置かれると、カメラが自動的にそのピザの写真を撮影し、その画像を元にピザの品質を評価します。毎日約5,000枚の写真を撮影して画像解析を行い、形や焼き加減が適切かなどを評価してスコアが付けられるシステムになっています。

これにより各店舗のパフォーマンスが明確になり、特定の店舗が特定の分野で改善が必要であるという事実が明確になります。つまり、具体的なエビデンスに基づいて改善を促すことができ、クオリティコントロールが効率的にできると同時に、スタッフの技術向上にも役立ちます。

 

まずは1,000店舗出店が目標。インド市場への挑戦

今後、ベトナムで安定的に成長させることを目指していますが、その他の国への進出も計画しています。

具体的には、今年の8月にインド、11月に東京への出店を計画しており、私たちは数ヶ月後にインドに移住する予定です。インドは日本食がまだ十分に普及しておらず、その市場はまさにブルーオーシャンと言えますので、大きなチャンスがあると考えています。

さらに、10年から15年後には、インドがピザ業界で最も魅力的な市場になると予測しています。インドではピザが広く受け入れられていて、バーなどでもピザが提供されていますが、サービスやチーズの品質などはまだまだ改善の余地があります。そのため、私たちはインドでピザの品質ナンバーワンを目指すチャンスが十分にあると考えています。

また、インドは小麦もミルクも生産量が世界第2位であり、さらにピザがよく食べられているため、生産地としても消費地としても魅力的です。同時に、インドはオーガニック農業も進んでいて、ヨーロッパでは高価になりがちなオーガニック小麦もインドでは比較的安く手に入るのです。

インド市場に対する私たちの目標は大きく、小さなスタンドのお店を含めて最初の目標として1,000店舗の開設を考えています。

 

“Farm to Table”を実現するための東京への出店

日本では、サステナブルやウェルビーイング、グリーンをテーマにしたプロジェクトに参加させていただいています。私たちは“Farm to Table”(生産者からテーブルまで)を実現したいと考えています。

オーガニックでサステナブルな方法で生産しているプロデューサーとのつながりが必要ですが、ベトナムではそのようなプロデューサーが少ないためにコストが上がり、求めている価格帯に見合わないことがあります。

また、オーガニックなものだとシーズンが決まってしまっていて、私たちの店舗数だと安定供給が難しいのです。

一方で、日本には素晴らしい生産者の方々が多数いらっしゃり、四季ごとに様々な地域の様々な食材が利用できるという環境が揃っています。そのため、日本では私たちがやりたいことを全て詰め込んだ旗艦店のような店舗をオープンすることが可能だと考えています。

基本的には東京で店舗を増やすつもりはなく、最初は建築やデザインにこだわった私たちの思いを全部詰め込んだ店舗を作りたいと考えています。

 

お店とは人と人とが繋がり、幸せになれるきっかけとなる場所

私たちにとってお店とは、人と人とが繋がる場所だと思っています。

テクノロジーで効率化や最適化を追求していますが、人と人がつながる特別な場所であるべきだと思っています。コロナ明けに再開したお店でお客様が食事を楽しんでいる姿を見たとき、私たちは感極まって涙しました。

その時、オンラインで多くのことが可能になる現代だからこそ、人々が直接集まって交流する飲食店の存在価値を再認識し、人と人とが繋がり、幸せになれるきっかけがお店から生まれるのだと感じました。

 

執筆 アキナイラボ 編集部

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