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お店ラジオ 2023/02/15 2024/03/14

独自のビジネスモデルが「焼肉ライク」の強み

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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。

今回のゲストは、“焼肉のファーストフード”をコンセプトに1人焼肉という新業態で全国に90店舗を展開する株式会社 焼肉ライク 代表取締役社長の有村さんです。
徹底したコスト管理とマーケティング戦略による、真似をされないビジネスモデルの構築についてお送りします。

この記事の目次

  1. 焼肉ファーストフードにとって重要な出店場所とは!?
  2. 他社が真似できない独自のビジネスモデルをつくるということ
  3. 最初の起業での行き詰まりが「焼肉ライク」を産んだ!
  4. “魚串”でできなかったこと、「焼肉ライク」でできたこと

 

焼肉ファーストフードにとって重要な出店場所とは!?

場所の設定としては、「ビジネス街だけど、他の場所からも遊びに来そうな場所」ですね。なので、最初の頃の出店場所としては、新橋とか秋葉原、品川でした。まずは、そういった場所で物件を探しました。

ファーストフードはフラッと気軽に立ち寄ることができるのが肝ですので、良い場所に出店をしないといけません。だからウォークインで行けるような設計じゃないと駄目だと思います。

ランチは何にしようかと選べる場所ということで、今は乗り継ぎの間の少し空いた時間に15分で焼肉を食べていただけるように駅の構内にも出店しており、非常に好評です。その他の場所ですとサービスエリアがありますね。トラック運転手の方がさっと焼肉を食べて行かれるのにちょうど良いということで非常に好調なのですが、今後は空港などにニーズがあるのではないかと思っています。

 

他社が真似できない独自のビジネスモデルをつくるということ

よく言われるのは“いきなりステーキ”さんとの比較です。もちろん意識はしていましたが、考え方として「まず市場の大きいところを狙って差別化しよう」と考えました。
どういうことかというと、ステーキの市場は年間1,300億円の市場です。一方で焼肉は5,000~5,500億円、約4倍です。これは、焼肉に行こうと思う回数が4倍あり、焼肉で気軽に食べられるような所も市場としては4倍以上あると考えました。

また、ステーキと違い焼肉の良いところとしては、部位をあらかじめカットしているのでロスがほとんど出ないところです。一方でステーキは良いところだけカットするので、どうしてもロスが出てしまいます。焼肉の方がステーキよりも少ない原価率で余すことなく使えるというメリットがあるので、ロスをなくせるビジネスモデルですね。

さらに、ステーキ屋さんにはカットと焼きがありますが、これがかなり難しいんです。我々はカットをプロに任せ一括集中で加工します。そして、焼きはお客様に焼いていただくという形で効率化を図っています。
そのために、お肉の規格を決めて提携工場に加工をお願いしているのです。

 

こうした新しいビジネスモデルはすぐに真似をされてしまいそうです。実際に表面上では似た形態のお店はちらほら出てきていますが、本質的なところは真似られてはいないと思っています。

その本質的なところとは、“焼肉を気軽に楽しめる”ということです。
似た形態のお店でもっと美味しく出そうと考えられているお店はあるんですが、「焼肉ライク」はそうではないんです。思想が違うと言いますか、例えば、美味しく出そうとして店内で職人を使って手切りにしても「焼肉ライク」っぽくはなるんですが、人件費が掛かりビジネス的に成り立たなくなりますね。

もちろん高いお肉を食べたいという方もいらっしゃると思いますが、それを焼肉ファーストフードの「焼肉ライク」に求めるのかというと、料金が上がってしまいますので少し違うと思いますね。ですから、展開できているところはないのではないでしょうか。

他にも、出店には多額の投資が必要になります。また、菌が出ないような技術も含め、工場で加工してチルド肉を店舗に出荷するような我々がやっている工程の構築は一朝一夕には真似できませんし、お客様の声を聞きすぎてしまうとビジネスモデルの設計自体が変わってしまいます。ですから、似たような業態で出店するには、相当な覚悟をもって徹底してやらないと真似できないと思います。そこを徹底してできているのが「焼肉ライク」の強さだと思います。

 

最初の起業での行き詰まりが「焼肉ライク」を産んだ!

「焼肉ライク」を始める前、私は飲食の会社を13年ほど経営していました。大学を中退して1年間飲食業界で経験を積んだ後、23歳の時に高校の同級生と一緒に虎ノ門に出店をし、そこから徐々に拡大して最後は13店舗を経営していました。

最初は干物と焼酎の和食系の居酒屋を数店舗経営していて、2009年に“魚串”という、魚を切り身にして串に刺して焼き鳥のような形で出すお店を10店舗ほど展開していました。

その時期、私は“西山塾”という若手経営者に飲食店の経営ノウハウや業態の開発を教える会に参加していました。西山は“牛角”や“しゃぶしゃぶ温野菜”などの創業者で、“株式会社ダイニングイノベーション”という現在私が所属しているグループの創業者でもあります。

それまでは感覚だけで飲食店を経営していたのですが、その時以上に伸ばしていく方法が自分の中でわからなくなっていて、もう一度勉強しないと駄目だという気持ちで参加していました。

 

そして、西山から「焼肉で新しい業態を考えているので、一緒にやらないか」という誘いを受けました。

そこで私は居酒屋の経営を一緒にやっていた高校の同級生である専務に譲渡して、“ダイニングイノベーション”に入社することにしました。ただ、その時にはまだ大雑把な構想しかなく、「焼肉ライク」という名前もありませんでした。

私が居酒屋を経営していた頃のスケールであれば経営管理が必要だと思いますが、当時は本部もなく感覚だけでやっていたので、最初にウケたは良いものの同じものをずっと出していたために、お客さんにも徐々に飽きられてしまっていたんですね。
しかし、そこに対する有効な打ち手を持っていなかった。経営者を辞めて入社した理由としては、それが大きかったと思います。

 

“魚串”でできなかったこと、「焼肉ライク」でできたこと

とはいえ、飽きられる飽きられないでいうと「焼肉ライク」も単純に肉を出すだけのシンプルな業態ですので、工夫が必要だと思っていて、新たなニーズの掘り起こしも行っています。

焼肉定食の提供もそうですが、お酒と一緒に楽しみたい方がいらっしゃったり、食べ放題のように自由に食べたい方がいらっしゃったりします。そういった様々なニーズを吸収して、大きなニーズから順番に対応することにしています。

ではなぜ、“魚串”の時にそれができなかったのか。
飲食は調理から接客など、全てをやらなければいけません。他にも教育やメニュー開発などやることが多岐に渡っていて、経営の全てを詰め込む必要があります。

特に日本での飲食は、経営の総合格闘技と言われるほど競争が激しい世界です。ですから当たり前のことではありますが、手を抜いては駄目なんですね。マーケティングもそうですし、人材教育も全てにおいて手を抜けない。

「焼肉ライク」はフランチャイズを中心にやっていますが、運営なら運営だけに特化してやった方がいいですし、開発は開発本部でその道のプロがやった方が良いです。物件開発にしてもそうですね。

そういった意味で、当時は全てを自分でやろうとしたものの、そのノウハウもなく何をしたらいいのかわからなかったために展開できなかったということだと思います。
餅は餅屋ではありませんが、ある程度分業体制が引ける設計で業態を開発しておかないと、数十店舗やっていこうとなると難しいですね。

 

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執筆 横山 聡

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