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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。
放送の音声はこちらから!
#109 トレファクの気になるビジネスモデルとは
#110 野坂社長の成功を支える経営戦略
今回のゲストは、創業前には48店のリサイクルショップを訪問し、リサイクルの可能性を見出し、捨てられるモノに新たな命を吹き込むことで、新しい価値を生み出し、宝物を生み出す「工場」として、1995年に「トレジャー・ファクトリー」を創業。仕入れを工夫し、様々な業態を生み出し、徹底した商品管理、ドミナント戦略による出店などでリユースの市場を開拓。トレジャー・ファクトリー独自のリサイクルエコシステムを確立し、業界を牽引する株式会社トレジャー・ファクトリー 代表取締役社長 野坂英吾さんです。
創業のきっかけ、そして48店舗を訪問し創業。リユースが一般的ではなかった時代の市場開拓の戦略。ユーザーの心を掴む買取や販売方法戦略、時代の変化による商品構成の変化や海外への展開、総合業態と専門業態のマーケットの違いなど、3回に分けてお話しいただきます。
第1回は、創業のきっかけから一般的ではなかったリユースマーケットの開拓戦略などについてお送りしました。
第2回は、出店戦略と売ってもらうための店作り、専門化による市場開拓などについてお送りしました。
第3回は、店舗の専門化と店舗拡大による採用人材の変化、海外進出戦略などについてお送りします。
この記事の目次
リユースショップの専門化戦略
例えばアウトドア愛好者など、特定の趣味を持つお客様に対しては、専門的な業態が求められます。
お店の専門化を進め、このようなお客様が集まる環境を作ることで、専門店の価値を高めています。業態の専門化は容易ではないですが、深く掘り下げることにより新しいビジネスモデルが生まれます。店舗ビジネスは競争が激しいため、こうした独自の取り組みにより、他社が難しいと感じる分野で独自の価値を提供することにこだわっています。
また、多様な業態を運営する中で、それぞれの店舗での商品の品揃えや陳列方法も工夫しています。
例えば、アウトドア用のランタンは総合業態では5,000円程度の価格帯までしか売れませんが、専門業態の店舗では30,000円や50,000円のアンティークランタンが売れることがあります。専門業態で適正な価格で商品を評価することにより、その店が商品を正当に評価し、適切に買取ることが評価され、より価値の高い商品が集まるようになります。
競争激化のリユース業界の中でのトレジャー・ファクトリーの知名度
創業当時、リユースショップの新鮮さが多くの顧客の注目を集めました。しかし、現在は競合店の増加により、新規出店時の注目度は以前に比べて低下しています。
それでも、260店舗以上を展開する私たちには、既に確立された顧客層がおり、一定数のお客様が訪れ続けてくださっていますので、例えば、群馬県での初出店時には、広告なしでもオープン初日には行列ができました。
これらはトレジャー・ファクトリーが一定の認知を得られ、良い立地選びが可能になったからでもあると考えています。その結果、最近では各地からの出店依頼も増えてきています。
現在、清潔感があり、接客の良い競合店が増えてはいますが、似たような店舗であっても扱う商品ジャンルには違いがあります。各企業グループの店舗にはそれぞれ特色があり、市場内での住み分けが成されています。しかし私たちも、買取方法や販売方法に独自の工夫を凝らし差別化を図りながら、競合店に負けないように努力を続けています。
会社の成長につれ変化した人材採用
当社が成長するにつれて、人材採用の方法も変化しました。創業時には特定のタイプの人物に採用を絞っていましたが、徐々に多様なタイプの人材を採用するようになりました。お店では一品物を扱っていますので、お客様が訪れた時に必ずしもその商品があるとは限りません。
欲しい商品に出会うためには、何度も来店してもらう必要があります。しかし、接客が悪ければそれだけでお客様は来なくなります。逆に、丁寧な接客があれば、お客様は何度も訪れてくださいますので、接客は集客にとっても非常に重要なのです。
また、一品物を扱うビジネスでは、創意工夫も重要です。そのため、採用時にはアイデアと実行力を重視しています。アイデアは創意工夫の核心ですが、それを実現する実行力も欠かせません。
商品の種類が増えたり、専門化したりするとスタッフが商品の情報を覚えるだけでも大変です。以前はスタッフが商品に関する情報を覚えるだけでも大変だったのですが、私たちは商品情報をシステム化し、必要な情報を簡単に得られるようにしましたので、以前のように全てを覚える必要が無くなりました。
もちろん、基本教育はしっかりと行いつつ、システムによるサポートを併用しています。中でも専門知識が必要な商品の場合には、バイヤーが遠隔でサポートする仕組みも取り入れています。このように、システムと教育の組み合わせにより、効率的かつ効果的な店舗運営を実現しています。
新しいビジネスモデルの導入と拡大
近年、シェアリングエコノミーのビジネスが増加しています。これらの新しいビジネスモデルと一部競合する部分もありますが、私たちは「Cariru(カリル)」というドレスレンタルサービスを提供しています。このサービスでは、パーティーや結婚式用のドレスやフォーマルスーツを、店舗を持たずにECサービスとして提供しています。
さらに、「トレファク引越」による引越しや不用品買取サービス、「トレファク不動産」による不動産買取サービスも展開しています。これらのサービスは、不用品の買取中にお客様から受けた家やマンションの売却に関する相談などに対応する形で生まれたサービスで、現在は専門チームを設けて対応しています。その他にも、生前整理サービスも提供しています。これは、亡くなる前に事前整理を希望するお客様向けのサービスです。
私たちは物の流通が続く限りビジネスの可能性があると考え、これらの信念に基づき様々なサービスを展開し続けていきたいと考えています。
トレジャー・ファクトリーの海外進出
トレジャー・ファクトリーは最近、海外市場に進出し、タイのバンコクと台湾に店舗を開設しました。創業20年を節目に、海外進出の第一歩としてバンコクを選んだのは、現地市場がビジネスモデルに適していると判断したためです。海外展開に際し、家賃、現地の特性、日本製品の取り扱い可能性など、さまざまな要因を検討しました。また、小売業における外資規制などの法規制の中で、バンコクは最適なスタート地点であると考えました。
バンコク店では、最初は日本人駐在員から商品を買い取り、現地の人々に販売することが多かったのですが、約8年でタイの人々も積極的に売買に参加するようになり、取引量は大幅に増加しました。また、この8年間でタイでも環境意識の高まりが見られ、日本のリサイクル文化に似た傾向が生まれつつあります。世界的な人口増加に伴い資源の有効利用が求められる中、バンコクのリユース市場も拡大しています。
「もったいない」という日本の精神は、海外でもリユースショップの出店を通じて広がりつつあります。実際、海外でも入りやすく親しみやすい店舗が増え、リユース文化の普及が進んでいます。
リユースビジネスで重視する指標はロス率と値引率
私たちは経営において、売上だけでなくロス率や値引率といった指標を重視しています。リユースビジネスでは価格設定が自由なため、設定価格でどれだけ売り切るかが非常に重要です。価格は売り切ることを前提に設定しており、過度な値下げや廃棄が増えるとビジネスモデルが成り立ちません。そのため、設定価格での売れ行きをデータで検証し、初期設定価格で効率良く売り切るシステムの構築に努めています。
ロス率に関しては、衣類は関係がないと思われるかも知れませんが、もちろん商品によって異なるものの、私たちは原則として1年或いは2年以上在庫を持たない方針を取っています。ブランド品などは長期間の在庫管理を行う一方で、アパレルなどの季節商品は約3ヶ月で売り切るよう、細かくデータを管理しています。
私にとってのお店とは生活に密着した「人々の生活の一部」
私にとってお店は、「人々の生活の一部」だと思っています。子供が生まれたお客様がトレジャー・ファクトリーでベビー用品を購入し、子どもの成長に伴って不要になったアイテムを売り、新しい必要品を再び購入するサイクルを通じて、お客様の生活の様々な場面で支援し、寄り添う店舗でありたいと考えています。
私は、お客様の生活に密接に関わることで、リユースショップをより価値ある存在にすることを目指しています。