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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。
#29 焼き鳥チェーン店「鳥貴族」創業者、大倉忠司さん登場
#30 独自のFC戦略!「業態を磨く」ことが成功への鍵
今回のゲストは、最大手の焼き鳥チェーンである「鳥貴族」を展開する株式会社鳥貴族ホールディングス代表取締役社長の大倉忠司さんです。創業当初から全国展開を見据えていた大倉さんが、ここまで鳥貴族を大きくするまでに至った思考の過程やこれから展開していきたいビジネスについて3回に分けてお送りします。
第一回は大倉さんが心がける”引き算の経営”についてご紹介しました。
第二回は鳥貴族のこだわりについてご紹介します。
この記事の目次
焼き鳥だけをやっているとリスクが大きい?アクシデントへの考え方
うちは単一業態であるため、そういう意味で業界ごとダメになるリスクを孕んでいるとよく言われます。例えば鳥インフルエンザが来た時なんかは、すごく危機感を抱きました。しかし、蓋を開けてみると中高年向けのお店が打撃を受けているにも関わらず、うちは若いお客さんが多かったからかほとんど影響がなかったのです。
意外と影響がないんだなと思って、鳥インフルエンザの件では逆に自信がつきました。ただ、産地だけは分散するようにしています。
スタッフに誇りを持って働いてもらいたい!安かろう悪かろうを覆す圧倒的なこだわり
鳥貴族で扱う鶏肉は国産にこだわっています。まず安かろう悪かろうのイメージを払拭したかったというのが大きな理由です。また、それと同じくらい大事なのがスタッフに誇りを持って働いてもらうため、ということです。
低価格だけど海外の冷凍のものを出しているとなると、どこか満足感に欠ける仕事になってしまいます。うちは低価格だけど国産でしかもチルドですよ、と自信を持ってお客さんに提供できると、スタッフも働きやすくなるのではないかと思うのです。自信なく提供するとお客さんにも伝わりますしね。
美味しさ最優先。開店前にパート5人で6時間の仕込み
串打ちというネタを串に刺す大変な作業があるのですが、うちではこれを開店前に各店舗で仕込んでいます。5人ほどのパートさんが6時間かけて串打ちをするので、とてもハードです。
しかしセントラルキッチンで作って各店舗に運ぶやり方だとすぐに提供できないので、質が落ちてしまいます。その日に仕込むというのは美味しい個人店のようなやり方で、それで提供することがうちの大きな強みになっています。
だから例え人件費がかかっても、このやり方が今はベターかなと思っています。串打ち機のようなものが登場したら、その限りではありません。
創業当初から狙いは全国チェーンだった!
全国チェーンになった鳥貴族ですが、このような形は創業の時から構想していました。独立する前、焼き鳥店でNo.2としてビジネスの勉強をしていたのですが、その時にいいなと思っていたのがダイエーのビジネスモデルです。
様々な工夫をしながら圧倒的に価格を破壊するやり方に衝撃を受け、同じようなことを焼き鳥でやりたいなと思いました。そうなると、自然と多店舗展開で、さらに鶏に絞ることになりました。豚も魚もあるとスケールメリットは分散されてしまうためです。
今では600店舗にまで拡大し、簡単には真似できない参入障壁を築くことができました。ただ、最初はどうしてもスケールメリットもなにもないので苦労しました。原価率が高くても我慢して、どうにか持たせていました。その時代を乗り越えたから、今は低価格のままでも原価率を下げることができているのだと思います。
普遍的なお店づくりを目指す。次に見据える展開とは?
どの商売でも流行り廃りがあり、それに備えていろんな業態でポートフォリオを組もうというのが一般的だと思いますが、うちは鳥貴族以外のものをほとんどやってきませんでした。鳥貴族を流行り廃りのないものにしていくのを目標として、尖り続けてきたのです。
流行り廃りのないものにするためには、居酒屋や焼き鳥屋の中では価格を最安レベルにして、その中で最高のパフォーマンスを追求する必要があります。それができれば、居酒屋のポピュラーなメニューである焼き鳥が飽きられるということはないだろうと考えていました。
実際にこれまで鳥貴族の勢いに陰りが見えたこともないので、行けるところまで行ってみるつもりです。ただ、市場が飽和する前に違う業態を試すことも必要だと思ったので、今はハンバーガー事業に取り組み始めたところです。
「鳥貴族」の名前に込められた想い
鳥貴族という名前には、お客さんを貴族扱いするような、ちょっと洒落たイメージをつけたいという想いが込められています。当時、焼き鳥屋と言えば中高年男性のお店だったので、もっと若い人や女性にもきて欲しかったのです。同じようなお店を作るのではなく、新しい市場を作ろうと思っていました。
若い人や女性をターゲットにすることから、ボックス中心にしていきたいと考えていました。僕らはカウンターの方がいいですが、若い人や女性には横だと話しづらかったり、目の前にスタッフがいるのは嫌なのだと思います。独立前に焼き鳥屋で働いていた時も「ボックス席がないなら帰る」という若い人たちが非常に多かったこともあり、ボックス席の重要性の高さについては考えを改めさせられました。
あと、自分達の世界に入りたいという感覚があるようなので、完全個室とまではいきませんが柱を立てたり視界を遮るようなレイアウトにしています。