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お店ラジオ 2022/10/19 2024/03/14

あえてメニューを減らす!先を見据えた”引き算の経営

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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。

今回のゲストは、最大手の焼き鳥チェーンである「鳥貴族」を展開する株式会社鳥貴族ホールディングス代表取締役社長の大倉忠司さんです。創業当初から全国展開を見据えていた大倉さんが、ここまで鳥貴族を大きくするまでに至った思考の過程やこれから展開していきたいビジネスについて3回に分けてお送りします。

第一回は大倉さんが心がける”引き算の経営”についてご紹介します。

この記事の目次

  1. あえてメニューを減らす!先を見据えた”引き算の経営”
  2. 衝撃の全品均一価格。どうやって利益を出している?
  3. ブランドを築いてから空中階に出店し、コストを抑える!
  4. これから始める人には空中階は厳しい…知名度を上げるための戦略
  5. お客さんの要求を適度に無視しないと、なんの特徴もないお店になる

 

あえてメニューを減らす!先を見据えた”引き算の経営”

元々は焼き鳥屋で働いており、そこで3年間勤務してから独立しました。
1店舗目は焼き鳥専門店としてオープンしたのですが、当時は専門居酒屋のようなものはなく、流行りに乗る形で2,3店舗目は総合居酒屋をオープンしました。

しかし、しばらくすると焼き鳥専門店の方が今後多店舗展開するには都合がいいと考えるようになりました。たとえば、調理スタッフにメニューを教える時、焼き鳥専門店ならば焼くことさえ教えればいいので、非常に効率が良いです。

社内でも「もっとメニューを増やしましょう」という声はよくあるのですが、その時にはいつも「もしメニューがたくさんある方がお客さんが喜ぶのならば、ピザやハンバーガーもなんでもあるお店がもっと全国展開して大きくなっているはずですよね」という話をします。

結局はピザの専門店、ハンバーガーの専門店のように一つを追求して特化するようなお店が、本当にお客さんを喜ばせるものを提供できています。

今考えてもチキンに特化したのは正解だったと考えています。コストが安いのはもちろんのこと、飽きにくい味だということも大きいです。淡白なため、高頻度で食べることができます。

 

衝撃の全品均一価格。どうやって利益を出している?

鳥貴族の大きな特徴の一つとして全品均一価格が挙げられます。しかし最初のころは150円、250円、350円の3プライスゾーンでやっていました。
全品均一はずっと頭の中にあったのですが、原価率の予測が難しく、どうしても勇気が出なかったのです。

しかしなかなか繁盛せず苦戦を強いられたこともあって、思い切って全品250円に統一してみました。するとやはり全品均一のインパクトは凄まじく、すぐにお店は大繁盛になったのです。特に驚かれたのはビールも250円だったことで、お客さんの反応から手応えを感じたことを覚えています。

飲食店では原価の3倍くらいを売値にするのが一般的です。しかし全品均一価格にすると、原価率がバラバラになってしまいます。お客さんが原価率の高いものばかりを頼んでしまっては、経営は全く成り立ちません。だから全品均一はすごく怖かったのですが、実際にやってみると案外うまくいくことがわかりました。焼き鳥ばかりを食べるというお客さんは多くなく、普通は間にあっさりしたものが欲しくなります。その時に原価率の低い枝豆や漬物を注文してくれたりするんです。

このように原価率の低いものと高いものをうまくミックスすることで利益を出していきました。

 

 

ブランドを築いてから空中階に出店し、コストを抑える!

均一ということの安心感からか、リピート率が高く、店舗を増やしていくごとに少しずつお客さんもついてきたように思います。しかし、店舗数を増やすことには大きな障壁がありました。当時はバブルの真っ只中で家賃や保証金がすごく高かったのです。だからあまり人気がなく家賃が安いところにしか出店できませんでした。

しかし、バブルが弾けた瞬間状況は一気に変わり、高かった家賃が半分以下になったことで繁華街などに出店できるようになりました。ここでポイントだったのが、空中階(ビルの2階以上)に出店していったということです。知られていないお店であれば空中階は厳しいのですが、幸いなことに鳥貴族はすでにブランドを築けていました。空中階は1階路面に比べて家賃も半分や3分の1になるので、ここで勝負することができたのは大きかったです。

 

これから始める人には空中階は厳しい…知名度を上げるための戦略

ただ、空中階にどんどん出店していく作戦に味をしめてそのまま東京に進出した時には失敗しました。東京では全く有名ではなかったのにも関わらず、認知されていた関西のころと同じように空中階に出店した結果、お客さんがほとんど集まらなかったのです。

このように認知度がないと苦しいので、これからお店を始めるような人には空中階はおすすめできません。下から屋号をみた時にどのお店かわからなかったら怖いですし、エレベーターでわざわざ上がっていくようなことはしません。

知名度をあげるのに有効なのは、やはりドミナント戦略(地域を絞って集中的に出店する戦略)です。渋谷や新宿などのマーケットが大きいところでは、たくさん出してもバッティングすることなく店舗数を増やしていくことができます。アルバイトが足りなくなった時にヘルプも送りやすいですし、輸送の効率もいいです。うちの業態とも相性がよかったと思います。

 

 

お客さんの要求を適度に無視しないと、なんの特徴もないお店になる

鳥貴族は、メニュー数をあまり増やしていません。創業当初はメニュー数を増やしたこともあったのですが、焼き鳥があまり注文されなくなってしまったのです。これではなんの特徴もない普通の居酒屋になってしまうと思い、そこからメニューを3分の2にまで絞り、焼き鳥専門店として尖らせることにしました。

お客さんには「刺身置いてよ」「牛ホルモンないの」と言われますが、これを適度に無視します。一見メニューを増やすとお客さんが増えそうですが、全ての要望を聞いて八方美人なお店になってしまうと、なんの特徴もなくなって結局お客さんは来なくなってしまいます。むしろ絞って絞ってそこでは確実に勝つというような、引き算の経営をするように心がけています。

そうして突き抜けてブランディングもしっかりして全国展開もして、となると自然に客層も広がっていくのです。例えばユニクロさんでも当初は完全に若者向けのお店だったのですが、今では老若男女に愛されるようになりました。

自分が持ちたいお店のイメージをしっかりと持っておき、ブレないようにすることが大切だと思います。

 

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執筆 横山 聡

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