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お店ラジオ 2023/07/07 2024/03/14

カルチャーを交差させる“ネオン食堂街”

about

「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。

今回のゲストは、大阪心斎橋PARCOの地下2階にある“ネオン食堂街”の開発に「地元カルチャーを知る人」として関わり、自らも出店してお店に立つ「TANK酒場/喫茶」マスターの古谷 高治さんです。

1990年代にオープンした「ギャラリーカフェ」の成功と失敗、コロナ禍でネオン食堂街をオープンさせるまでの苦労、地元カルチャーに対する古谷さんの想いを2回に分けてお送りします。

第1回は、アメリカ村でギャラリーカフェを経営し、地元カルチャーを作ってきた経験についてお送りしました。
第2回は、コロナ禍での心斎橋PARCO ネオン食堂街の出店の苦労と、地元カルチャーに対する思いについてお送りします。

 

この記事の目次

 

ギャラリーカフェの成功の秘訣は目利き

その後も順調にギャラリーカフェを経営していましたが、私が少々調子に乗ってしまい、好調だった店舗を移転して拡大しました。私の器を超えていたのでしょう、2001年に閉店することになってしまったのです。

しかし、私はその後もカフェを軸にしながらいろいろなプロジェクトへ参加したり、事業の提案などを行いました。

例えば、あるFM局のアートプロジェクトでカフェを運営してくれないかと依頼され、大企業と共同でプロジェクトを進めるという新たな試みに興味を持ち、協力したこともあります。

また、他にも「スピンズ」というアパレル店と一緒にカフェを開設したり、依頼があった飲食店に対してコンサルティングをしたりと、カフェとカルチャーに関連する事業に携わってきました。

私がこれまでやってきたような、カフェと連携したギャラリーやイベントスペースは全国的にも増えてきています。

これまでの経験を踏まえ、カフェやそういったスペースを運営していくうえで最も大切だと思うことは「店主が目利きできるかどうか、商品選びに関して優れたセンスを持っているかどうか、さらに、良質な商品を提供し続けることができるかどうか」だと思っています。

 

コロナで振り出しに戻ってしまった食堂街への出店

私は90年代にギャラリーカフェを始めて以降、常に「どこかにおもしろいことが転がっているんじゃないかな」という感覚を持って、いろいろなことに取り組んできました。

そして、これまでの経験があったからこそ、地元のカルチャーに精通した人間として、心斎橋PARCOのプロジェクトへ参加させていただけたのだと思っています。

心斎橋PARCOの飲食店エリアのコンセプトの検討や出店店舗の選定は、PARCOの方々を中心として進められていましたが、私も私なりにコンセプトなどを提案させていただきました。

コンセプト検討の際には、ファッション業界や飲食業界、音楽業界の関係者など、さまざまな人が集まる大阪のあるお店を参考にしました。そのお店は、そこに行けばみんなが遊びに来ていて、新しい友達ができたり、ビジネスの話がまとまったりするような場所でした。

私はそのお店をヒントに、「人が集まり、何かが生まれる場所」というコンセプトを提案させていただきました。

 

当初の計画では、心斎橋ネオン食堂街は2020年の夏前にはオープンする予定で、2019年にはテナントの選定も終わり、オープンに向けた準備を進めていたところでした。

その頃には全ての店舗が決まっていたのだと思いますが、2020年からのコロナウイルスの感染拡大の影響で、振り出しに戻ってしまいました。出店を予定していた飲食店のうち、半分ほどの店舗が出店を取りやめるという事態に陥ってしまったのです。

そこで、コロナ禍でも出店が可能な、経済的に体力のある店舗に対して声をかけていくことになりました。私自身はテナント選定には深く関わってはいなかったのですが、その業務に携わっていたチームは大変な苦労をしたと聞いています。

 

新しく何かを生み出す“ネオン”という言葉

私は、飲食店エリアのイメージについて、“ネオ日本”という日本的なイメージ、“ブレードランナー”のような未来感のあるイメージ、そして“ネオン”というキーワードを提案しました。

“ネオン”という言葉に対して若者は非常にポップなイメージを持っていますし、同時に年配の方は昭和の繁華街のイメージで、懐かしさを感じてもらえると考えたのです。

さらに、“ネオ”はフランス語で “新しい”を意味していて、“オン”は起動するという意味でもありますので、“新しく起動させる、新しく何かを生み出す”という意味も込めて“ネオン”を提案しました。

そして、名前は心斎橋ネオン食堂街に決まりました。

このネオン食堂街という名前と食堂街のイメージ像をテナントの方々に伝えたところ、それぞれのお店がネオンを内装に取り入れてくださったり、レトロな雰囲気を作ってくださったり、フロア全体がとても良いムードになりました。

そして現在はインバウンドも含めてお客様も徐々に戻り始め、事業がようやく軌道に乗り始めています。その動きは次第に加速してきている状況で、「俺たちには伸び代しかない」と言ってフロアのみんな頑張っています。

 

お店とは「カルチャーが交差する場所」

心斎橋ネオン食堂街は、人が集い新しく何かを生み出す場所でありながら、同時にレトロな雰囲気も有するエリアであるため、イメージが重要です。

各店舗がバラバラの取り組みをしていては食堂街の雰囲気が壊れてしまうため、私たちはテナントのオーナーの皆さんたちとLINEグループで“商店会”を作り、情報共有やイベントの企画、PARCOさんへの要望など、店舗同士で協力し合いながら活動しています。

また、ネオン食堂街での毎月の賃料には広告費が含まれています。初めてテナントとしてお店を出すところも多いため、独自のプロモーションなどが難しい面もあります。

しかし、その全てをPARCOさんに頼ってしまうのはあまりにも他力本願だと感じていますので、店舗同士が協力して情報発信や集客を行っています。

 

私にとってお店とは、「人が集える場所、カルチャーが交差する場所」です。そして、私は「TANK酒場/喫茶」のマスターとして、人と人を繋いだり新しい何かを生み出したいと考えていて、食べたり飲んだりするだけではなく、アートや音楽などカルチャーも含めたコミュニケーションを生んでいきたいと思っています。

執筆 横山 聡

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