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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を再編集したものです。
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#111 愛媛県B級グルメを育てたレストラン「マルブン」は”スマレジ”でDX化!
今回のゲストは、大正12年(1923年)に愛媛県西条市の駅前の食堂として創業し、現在では地元に愛されるお店としてイタリア料理店など5店舗を展開し、ソウルフードである「鉄板ナポリタン」を復活。また、翌日の来客数や1カ月間の来客数、商品の販売数量などを予測するAIを活用した来客数予測システムの導入により、効率的な店舗運営を行い、お客様に「おいしい」と地域への「感謝」や「健やかさ」をお届けする株式会社マルブン代表取締役眞鍋一成さんです。
大正12年(1923年)に創業し、西条市のソウルフード「鉄板ナポリタン」の復活、スマレジやAIによる分析システムなど、店舗DXの導入による徹底した在庫管理やシフト管理など効率的な店舗運営の実践し、さらに、お客様に「おいしい」を届けるという企業理念に共感できる人材を採用することで離職率を改善した手法など、3回に分けてお話しいただきます。
第1回は、大正12年の創業から、「鉄板ナポリタン」の復活戦略についてお送りしました。
第2回は、効率的な仕入れ戦略と店舗DXによる来客数、販売数予測についてお送りします。
この記事の目次
多彩なメニュー展開と効率的な仕入れ戦略
私たちのお店では、多くの洋食メニューを提供しています。特に、祖父の代から続くオムライスは40年以上にわたって人気のロングセラー商品となっています。その他にも、「とり天」という独特のメニューがあり、イタリアンの店にとり天があることに驚かれることもありますが、これは私たちのこだわりとして全てのお店で提供しています。
このように、多彩なメニューは仕入れや在庫管理を複雑にしてしまいますので、メニューの数を絞り込んだり、代用可能な食材を使用したりして効率的な食材管理に努めていますが、管理上5店舗までが限界だと考えています。これからはメニューを更に絞り、専門店への特化を目指しつつ、店舗数の拡大も計画しています。
また、「食堂市場 ゑびす丸」という海鮮丼を提供する店舗も運営しており、この店舗は昼間に特化し、夜はあまり客足が伸びない特徴があります。専門化により管理が容易になり、食材の範囲も絞り込むことができるため、今後はこのような店舗の拡大を目指しています。
これまでは、広い店舗スペースや多様なメニュー提供などで、月商800万円から1,000万円を目指す大規模な店舗展開を行っていましたが、今後は月商400万円でも利益を出せる損益構造にシフトし、時代の変化に対応した店舗展開を行う予定です。
店舗DXによる販売数の予測
私たちの店舗では、デジタルトランスフォーメーション(DX)を積極的に取り入れています。新しい予測システムの導入により販売数の予測が容易になり、店舗運営が大きく改善されています。
具体的には、「スマレジ」というシステムを採用し、そのレジ機能とAIを組み合わせた来客予測システムを組み合わせて活用しています。このAI機能は、翌日の予想来客数や月間の来客動向、さらには5日先までのメニュー販売数を予測してくれるため、店舗運営において極めて重要なツールとなっています。
従来は、シフト作成や食材の発注、仕込みのスケジューリングにおいて、主にスタッフの経験や勘に頼っていました。経験が豊富なスタッフであればある程度の予測は可能でしたが、若手スタッフの場合は目標数値に届かないこともしばしばありました。勘に頼る方法では、スタッフの人数が過剰になったり不足したりしてしまうことが多々あり、店舗の運営にとっては課題となっていました。
しかし、AIによる来客予測を導入したことで、これらの問題は大きく改善しました。現在では、翌日や1ヶ月間の来店予想数を知ることができ、これに基づいてより正確なシフトを組むことが可能になっています。
時間が経つにつれてデータが蓄積され予測の精度が向上し、現在では約90%から95%の精度で予測ができるようになりました。例えば、平均来店客数が1日120人の場合、予測はおよそ110人から130人の範囲内で行われ、約10人の誤差範囲に収まることが多いです。これは非常に高い精度であり、店舗運営において大きな助けとなっています。
AIを活用したシフト予測
私たちのお店では、AIを活用して翌日や一ヶ月先の来客数を予測するだけでなく、日々変わる顧客動向も高精度に予測しています。これにより、オープン直後の来店ピークの有無など、時間帯に応じた来客の動きも把握できるようになりました。
日々蓄積されるデータに基づき、時間帯ごとの予測精度は日々向上しており、その結果、シフトの組み方もデータに基づいたものとなり、例えば「11時から12時の間に4人のスタッフが必要」というような判断を、自信を持って下すことが可能になりました。
このシステムの導入は、コロナ禍の最中に行われました。当時、経済が正常化しても来客数が従来の8割程度に留まると予測されており、従来の運営方法では食材原価や人件費の比率(FL)のコントロールが困難だと考えました。
加えて、コロナ禍以前から外食業界は人手不足などの課題を抱えていました。これらの問題に対応するため、勘や経験に頼る方法からデータに基づく正確な判断へと移行することを目指しました。この取り組みは「フェーズ1」として、3年間にわたる長期的なプロジェクトとして実施されました。このような革新的なアプローチが、店舗運営の効率化だけでなく、経営面でも大きな成果をもたらすと確信しています。
システム導入と運営改革による効率化と人件費削減の実現
私はシステム導入と運営方法の変革により、コロナ前の体制に比べてスタッフを1人減らすことが可能だと考えていました。しかし、実際にはシステムの導入とスタッフの努力と協力のおかげで、想定以上の効率化を図ることができました。顧客満足度を維持した上で2人のスタッフが削減でき、効率的に営業することが可能になりました。
同時に、サービスの効率化も進めました。2020年にスマレジのシステムを導入し、さらに、スマートフォンやタブレットを使用したオーダーシステムも開始しました。また、従来のキッチンとサービススタッフの分業を撤廃し、全スタッフがどのような仕事でも対応できるように育成方法を変更しました。これにより、人数が少なくてもチームワークを駆使して効率的な運営が可能となりました。
この効率化は、人件費の削減にも大きく寄与しました。2名のスタッフ削減により、売上に対する人件費の比率は大幅に改善され、以前は30%を超えていた人件費比率が現在では約23%に低下しました。この7%の削減は、経営にとって非常に大きな影響を与えています。
コロナ禍とその後の半期を比較すると、売上は増加しているにも関わらず、人件費は同じ水準を維持できており、給与を上げながらもスタッフ数を変えずに運営できていることは、ITツール導入の成果を如実に示しています。
第2回は、効率的な仕入れ戦略と店舗DXによる来客数、販売数予測についてお送りしました。
第3回は、仕入れと在庫管理の効率化、食材仕入れの改革、会社への高い定着率の秘訣についてお送りします。