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お店ラジオ 2023/06/23 2024/03/14

竹川さんの挑戦 “50年変化のない、野菜を扱う業界の構造改革”

about

「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。

今回のゲストは、コロナ禍でのドライブスルー八百屋や肉野菜炒め専門店「ベジ郎」の出店など、新たな挑戦で野菜業界に革命を起こす株式会社フードサプライ 代表取締役社長 竹川 敦史さんです。
「野菜の最大利用を追求すること」を目標に掲げ、コロナ禍での新しい事業の展開から今後の戦略についてなど、2回に分けてお送りします。

第1回は野菜のフードロス問題に取り組む竹川さんの挑戦と、その挑戦の1つである肉野菜炒め専門店 ベジ郎の立ち上げ背景、メディア・商品戦略についてお送りしました。
第2回は、野菜の最大利用の追求と取引先の発展を実現するベジ郎のビジネスモデルと、竹川さんの挑戦である「野菜業界の構造改革」についてお送りします。

 

この記事の目次

 

店舗の個性を尊重してお客様も従業員もwinwinな運営体制をつくる

肉野菜炒め専門店 ベジ郎では、全店舗で完全に同じメニューを提供するという形態はとっていません。

例えば、ある店舗では鶏もも肉を使用していましたが、別の店舗では鶏胸肉を使っていました。また、ある店舗ではトッピングとしてキャベツの芯を使ったコールスローを提供したりもしていました。

なぜ全店舗で提供するメニューを完全に統一しないかというと、フランチャイズも含めたそれぞれの店舗ごとに個々のアイデアや想いがあると考えているからです。

そのため、各店舗に対して新しいトッピングやアレンジを取り入れることを許可しています。これにより店舗ごとに個性が生まれ、その個性を感じたお客様からさまざまな意見をいただけるのです。また、店舗を運営する人々のモチベーションにもつながると考えています。

 

野菜の最大利用の追求と取引先の発展を実現するビジネスモデル

現在ベジ郎は東京を中心に4店舗展開しており、関東地域を中心に拡大中です。近い将来、10店舗ほどにはしたいと考えています。

ただ、私たちの目標は「野菜の最大利用を追求すること」です。かつ野菜の卸売業が本業であり、飲食店経営は本業ではありませんので、直営店を積極的に増やそうとは考えていません。

お取引先である飲食店のお客様と農家様の発展が私達のテーマでもありますので、飲食店のお客様からお店をやりたいと言われれば、少々不都合な出店条件でも直営店の出店検討をしていこうと思っています。飲食店を展開している私たちならば、余った野菜を柔軟に活用できるという期待があるからです。

八百屋を営むと、九条ネギやミョウガなどの野菜が余ることがよくありますが、それらを無駄にしたくありません。無駄にしないために飲食店に販売しようとしても、飲食店側のメニューに組み込むまでに1ヶ月以上かかることが多く、余った野菜の活用が難しいのが現状です。

そこで八百屋が直でお店を経営することで余った野菜を調理に取り入れることができ、野菜の廃棄量を減らすことができます。このようなアプローチを10店舗程度で展開することで、フードレスキューの要素も加わると考えています。

通常の飲食店では野菜の使用量は5キロから10キロ程度ですが、ベジ郎の一番売れる店舗では300キロ以上の野菜を使用しています。300キロという量は、10店舗や20店舗になると3トンや4トンに相当します。これにより、地元の農産物を大量に活用した様々な取り組みが可能になると考えています。

店舗が増えると戦略も変化してくるでしょうから、店舗数の拡大を進めつつ、各店舗のメニューも楽しんでいただけるような展開を目指しています。

 

新規事業と既存事業の相乗効果を追求し成長を目指すマネジメント

私たちは新たな事業へ挑戦することで、余ってしまう野菜の有効活用方法を見出し、さらに取引先や最終消費者、農家との新しい関係性も築くことができました。同時に、各店舗の経営を従業員自身が考えるようになり、組織全体として事業そのものへの貢献意識も高まっています。

しかし、新しい事業による売上は全体の売上に対して10%程度です。もちろん10%の新規事業も重要なのですが、全体の90%を占める既存事業の改善はそれ以上に重要であると考えていて、既存事業の底上げを進めなければ、会社全体の成長は望めないと考えています。

新しい事業への調整で高まった従業員のマインドを活かしながら、既存事業での成果に繋げることができれば、今よりもさらに面白い事業の展開が可能になると期待しています。今後の2、3年間は新規事業で培った経験や力を既存事業の成長に注ぎ込み、事業を強化していきたいです。

私たちは、新規事業と既存事業の相乗効果を追求し、さらなる成長を目指しています。そのためには、新たなチャレンジの経験や学びを活かしつつ、既存事業の強化に全力を注ぎ込む必要があります。

 

50年も変化のない、野菜を扱う業界の構造改革に挑戦

私がなぜ野菜の卸売業に挑戦したのか、そもそもの理由について説明します。

以前は飲食店を経営していましたが、当時から日本で一番面白いことに挑戦したいという思いがありました。自身のキャリアを活かし、日本一になれるような仕事に携わりたいと考えた時に、飲食店の関連業態に注目しました。

そして、焼肉店を経営していた経験から、そのノウハウを活かせる周辺事業はないかを考えました。最初は肉屋さんが良いのではないかと思いましたが、肉屋さんは既に多くの企業が存在しています。次に酒屋さんを考えましたが、競争が激しくパワーゲームで勝ち抜くのは難しいと判断しました。

このように次々と何屋さんが良いかを考えていくうちに、「八百屋は50年ぐらい業界構造が何も変わっていない」と気付いたのです。

この業界の構造改革を行えば、日本一になれる可能性があるのではないかと思い、野菜の卸売業に挑戦することにしました。そして、今もその夢を追いかけている途中です。

 

お店とは生産者と消費者が共に笑顔になれる場所

私にとって、お店は生産者と消費者が共に笑顔になれる場所だと考えています。

みんなが笑顔になれる場所を作るために、今後はブランディングやマーケティングについてもっと考えていかなければならないと思っています。

例えば、同じ野菜でもドライブスルーでは売れるけれど店頭では売れないということもあります。そうした課題を解消するために、ブランディングやマーケティングで新たなアイデアを生み出し、挑戦していきたいと考えています。

卸売業者としての役割を果たしながら、これからも野菜の販売においてまだまだ面白いことができると感じています。

 

執筆 アキナイラボ 編集部

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