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店舗運営 2023/06/27 2023/06/27

ホールフーズマーケット – 元祖オーガニックスーパーの深化


この記事でわかること

  1. ホールフーズマーケットについて
  2. ホールフーズマーケットの特徴
  3. ホールフーズマーケットの戦略

皆さんこんにちは、スマレジ福岡ショールームの田中 潮と申します。私は過去3度にわたり、アメリカの優良小売店へ視察に行った経験があります。

今回は、ホールフーズマーケットというお店を紹介します。

 

この記事の目次

ホールフーズマーケットの概要

このお店を最初に取材したのは‎2007‎年‎9‎月‎14‎日のことで、その後、2016年と2018年と3度にわたり取材を重ねました。

一貫して感じたのはオーガニック食品を中心とした品揃えという商品の品質の高さと、食材に関する情報開示などが徹底されていることです。

2017年にはアマゾンに買収されてしまいましたが、2018年に訪問した時点でも、この点はしっかりと維持されていました。

このお店は、オーガニックスーパーの元祖と言ってもよく、高品質スーパーの代名詞のようなお店。したがって、ターゲット顧客は高所得なLOHAS消費者です。ナチュラル&オーガニック、グルメ、健康にこだわったスーパーとして売上げを伸ばし、2022年時点では511店舗を展開しています。

このホールフーズは「ホール・ペイチェック(給料の殆どが高額なオーガニック品に消えてしまう)」と表現されるほど高額なイメージを持たれているお店ですが、中に入ってみると客層は意外にも中所得者層といった普通な感じでした。

 

ホールフーズマーケットの特徴

ホールフーズマーケットの理念は「Whole Foods, Whole People, Whole Planet」食材も人も地球も完全で健康であることを意味しています要はサスティナブルの意味そのものです。

オーガニックというだけでなく、動物愛護の一環として食肉用の牛や豚がどの様に健康的な環境で育てられたかという情報を、数値化してプライスカードに表記しています。

このお店で昼食をとったのですが、本当に美味しかった!(その分お値段も高かったですが…)。明らかに日本の平均的なスーパーで売られている惣菜とはレベルが違います。

 

そんなホールフーズマーケットですが、私が2016年に訪問したお店の店長はタトゥーをしていました。

当時インタビューした店長のケーリーさんは、アメリカの他のスーパーで勤務していた時はタトゥーが認められていなかったため隠していたそうです。

しかし、このホールフーズマーケットでは従業員が働きやすい環境づくりの一環としてタトゥーなども認められていたため、現在は隠さずに仕事をしています。なんでも、そのタトゥーには家族を守る意味があるのだとか。

 

これは「仕事の楽しさ」を正しく伝え、真の「従業員満足」を実現する経営理念です。

その為にはタトゥーをしたケーリーさんが店長として評価されたように、目標や成果、評価を見える化することが重要です。

経営陣にとっては些細なことかもしれませんが、従業員にとっては、その一つ一つの積み重ねを評価されることで「楽」とは違う「楽しさ」を理解してくれるはずです。

このように「食」だけでなく従業員もお客様も持続可能なサスティナブルの理念を掲げるホールフーズマーケット。商品戦略の中心も当然「オーガニック」&「ハイパーローカル」となります。

 

ホールフーズマーケットの「深化」

ところが、健康志向の高まりによりウォルマートなど他の企業もローカル&オーガニック市場に進出してきたことで、ホールフーズマーケットも「変化」を迫られることになりました。

どんな変化をしたのか?それは、オーガニックに対する更なる「深化」です。アメリカでは、オーガニックは農務省が細かな基準を設けて認証しています。

しかしホールフーズでは、独自で更に細かな基準を設けて商品毎に情報開示しているのです。

 

例えば、精肉売り場だと、

(ステップ1)檻やかごに長期間入れられておらず、密集された状態にも置かれていない~(ステップ5)一度も運送されることなく、生涯同じ家畜業者(場所)で飼育されている。

など飼育環境をも反映した400を超える項目を5段階のステップで自己評価して開示しています。

 

更に、青果売り場では、検査項目の情報開示「WHAT WE MEASURE」が掲載され、土壌の健康から生態系、農場で働く人々の福祉に至るまでを管理していると謳っています鮮魚売り場では、食材の生態系を表す表示が徹底されていました。

また、ハイパーローカル戦略として地域毎に本社機能を持たせ、地元の農家と直接契約できるように権限委譲し、質の良いローカルフードを仕入れられるようにしています。

大手チェーン店が「オーガニック&ローカル」に対応してくるなか、安易に値引きなどせず、事業の中核能力を(ブレることなく)更に深掘りさせて生き残っているホールフーズ

 

アマゾン買収後のホールフーズマーケットの「進化」

このようにホールフーズマーケットは、オーガニックスーパーの代名詞であり、高級スーパーとして確固たる地位を築いてきました。 しかし、2017年に同社はアマゾンに買収されることになります。アマゾン買収後のホールフーズマーケットは、どう変化したのでしょうか?

その辺に着目して2018年に再度視察してきました。

アマゾンに買収されてからは値引きやセールを行うようになりましたが、本質的な戦略や顧客層は変わっていません。アマゾンの影響が強く表れている要素としては、やはり「OMO戦略」でしょう。

アメリカのスーパーでは、いま「ピックアップサービス」が普及しています。これは、従来のオンラインで生鮮食品を注文して自宅に配達して貰うサービスとは異なります。

店舗アプリなどオンラインで生鮮食品を注文しておき、顧客の好きな時間にお店に行くと注文した商品がまとめて受け取れるというサービスです。宅配だと自宅で待機する必要がありますし、配送料の問題が発生します。

しかし、ピックアップサービスだと顧客がピクニックの帰りなど好きな時間に受け取れますし、配送料も必要ありません。まさに、店舗と顧客にとってWin-Winのサービスということで、一気に普及しています。

今回訪問したホールフーズもこのピックアップサービスを導入していました。

また、店内のいたるところにアマゾンプライム会員に対する会員価格(10%~30%OFF)のPOPが掲示されています。

総菜の質は良いですし、鮮魚コーナーでは生態系の情報を開示(サスティナブル)するなど、かつてのオーガニックスーパーの良さを残しつつも、アマゾンのOMO戦略が一気に浸透していました。

ホールフーズマーケットがOMO戦略など戦略の幅を広げていく一方で、(かつてのホールフーズマーケットの様に)オーガニックやイータテイメント(食を楽しむ)にこだわったニッチなスーパーも登場するようになっています。

今後のアメリカ小売市場の進化が楽しみです。最後までお読みいただきありがとうございました。

執筆 菊池 勲

複数事業が存在するスマレジの中で、全社横断的にWebマーケティングを展開する事業戦略本部にてマーケティングを担当。 主にオンライン広告の取扱をメイン業務とし、各ベンダー様と共に出稿後のパフォーマンス・予算管理・データ分析および検証に基づくプランニングを担当。

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