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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。
放送の音声はこちらから!
#105 「Baluko Laundry Place」のビジネスモデル
#106 FCで成功するための出店戦略
今回のゲストは、60年前から緩やかに市場規模が拡大している「コインランドリー業界」に着目し、2016年に「Baluko Laundry Place」を運営する株式会社OKULABを創業、数年で全国に200店舗以上のフランチャイズを展開する株式会社OKULAB 代表取締役CEO 久保田 淳さんです。
コインランドリーに着目した経緯から、利用者のニーズの変化とユーザー目線のサービス開発、Balukoのフランチャイズ全国展開、コインランドリーの経営視点からの利益やリスク、立地戦略、今後のコインランドリー業界の展望など、3回に分けてお話しいただきます。
第1回は、緩やかに成長するコインランドリー業界の変遷やユーザー目線のサービスなどについてお送りします。
この記事の目次
60年間変わらず緩やかに成長するコインランドリー業界
OKULAB(オクラボ)は2016年に創業され、現在全国で200店舗以上のコインランドリー「Baluko Laundry Place」を運営しています。
私は、OKULABの創業前は、三洋電機から白物家電事業を買収したハイアールアジアに勤務していました。私が会社でコインランドリー事業に関わり始めたのは2014年のことでした。
その当時から、消費者に直接サービスを提供し、日常生活に密接に関わる事業を展開したいと思っていました。食と住について私なりにいろいろと調べてみると、コインランドリー業界では、60年にわたり利用者数と市場規模が緩やかに増加していることがわかりました。
しかし、この業界には特に支配的なプレイヤーが存在せず、長年にわたり自然なペースで成長を続けていたのです。しかも、サービス提供方法は60年前から変わらず、コインを使用して機械を操作し、顧客がセルフサービスを行うというスタイルが続いており、IT技術の導入はほとんど見られませんでした。
ハイアールアジアにいた時、ITによるランドリーサービス、すなわちIoT化された機械をクラウドで管理し、リアルタイムでデータを集計するシステムに携わる機会がありました。それは、遠隔地から一台の乾燥機を操作するといったような事業でした。
しかし、コインランドリー業界はITの恩恵をほとんど受けておらず、デジタルトランスフォーメーション(DX)以前の成長段階に留まっていました。この状況をみて、この業界がブルーオーシャン市場になる可能性を見出し、その機会を追求することを決意しました。
コインランドリーの進化と利用者の変化
60年間にわたりコインランドリー市場が微増を続けているということに、違和感を覚える方もいるかもしれません。
コインランドリーの第1のお客様は、家庭に洗濯機がない人たちであろうと想像できますが、この60年間で、多くの家庭が洗濯機を持ち始め、さらには乾燥機を備える家庭も増えました。
それでもなお、市場は成長しているのです。しかも、ほとんどのコインランドリーでは積極的な宣伝活動も行われてこなかったと思います。
コインランドリー業界の変遷をたどると、徐々に布団やカーテンなど大きなものが洗えるようになってきたように、機械自体が進歩するとともに、2000年代に入ると機械のIT化も進んできました。
こういった進歩に伴い、利用者層の変化もありました。ファミリー層による利用が増えてきたのです。布団を洗う文化が根付いた地域も出現しました。こういった中、日常的に利用する人々が増え、さらには、例えば3ヶ月に1回洗濯していたユーザーが月に1回に増やすなど、利用頻度も上がっていきました。
また、旅行後の大量の洗濯物を処理するなど、以前にはなかった使い方をされるようになってきました。
エンドユーザー目線のサービス設計で差別化
コインランドリー業界は、時代の流れに少し遅れながらも、徐々にデジタルトランスフォーメーションを進めています。
IoT化は運営者にとって利便性を高め、生産性を向上させていますが、これまでユーザーにとってのメリットは限られていました。そこで、我々はコンシューマー向けアプリを開発し、ユーザーのニーズに応える改善を進めています。例えば、海岸地域と内陸地域では湿度が異なるため、乾燥の需要も異なります。内陸では、洗濯から乾燥まで一気にできる機械が多く利用されています。エリアごとのニーズに応えるために、プログラムを調整し、例えばモンベル社と協力して撥水加工コースを開発しています。
当社では、洗濯機に多様なコースを追加することで、ユーザーの望む洗濯の方法や仕上がりを考えて、コースを設計しています。機械は標準化されており、どの店舗でも同じ機種を使用していますし、メーカーも限られているため、エンドユーザーに向けた洗濯コースの設定などのサービス設計で差別化する必要があります。
例えば、店舗では畳み台と洗濯機の距離を考慮し、畳みやすい高さの畳み台を独自に設計するなどしています。また、店舗は常に清潔に保ち、安心して洗濯物を預けられるように努めています。今後も我々は、コンシューマー志向の店舗への改善を続けていきたいと思っています。
コインランドリーのイノベーション: ユーザー中心のサービス改革
コンシューマー向けーのサービスにはコンシューマーアプリやキャッシュレスなどのサービスがありますが、その中で我々が最初の取り組みとして、洗濯コースの設定をしました。
通常、コインランドリー洗濯機のメーカーさんから機械が納品されると、当然スタンダードなコースになっているのですが、プログラムを変更することでコースをカスタマイズできます。洗濯や乾燥の時間、洗剤の投入量を独自にプログラムし、最適なコースを検証することで差別化を図りました。
こういったサービスへのこだわりはあるものの、これらの良さをお客様に伝えるのは容易ではありませんでした。
そこで、競合との差別化のためにも、店舗のデザインもユーザーに訴求できる要素の1つとして設定しており、店舗の内装は一過性のトレンドに頼らず、長期的に美しく、飽きのこないデザインを採用しました。
また、コインランドリーはきっちりと経営している店舗もあるのですが、一部のコインランドリーでは、機械の故障があっても長期間放置されることがあります。機械が壊れてしまったらガムテープなどを貼って、2、3ヶ月そのまま放置してしまっていて、お客様が使えなくなっている店舗もありました。
こういった行為は、お客様との信頼関係を壊す行為になります。空いていると思って、重い洗濯物を持って、5分間かけてコインランドリーに行ってみると空いてなかったという時のストレスはその店への印象を大きく左右します。
おそらく、その一瞬でそのコインランドリーが好きになるかどうかが決まると言っても良いと思いますので、我々はこうした事態を迅速に解消できるような体制をとって、マイナスをプラスに変える努力を積み重ねています。
第1回は、緩やかに成長するコインランドリー業界の変遷やユーザー目線のサービスなどについてお送りしました。
第2回は、フランチャイズの全国展開と経営視点でのリスクや立地戦略などについてお送りします。