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お店ラジオ 2023/10/31 2024/03/14

オリジナリティを持った新しいものの追求

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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。

今回のゲストは、農林水産省、外資系コンサルティング会社、そして、長野県白馬村で働くため白馬村でスキー場を運営する日本スキー場開発株式会社へ転職。「世界水準のオールシーズンマウンテンリゾート」を目指した食やアクティビティなどにより、2万人程度であった夏の観光客を10倍まで増やした株式会社岩岳リゾート 代表取締役社長 和田寛さんです。

農林水産省へ入省後、外資系コンサルティング会社でビジネスを学び、白馬村へ。THE CITY BAKERY 白馬の誘致やドイツ発祥のアクティビティであるマウンテンカートの導入、地域の強みや資源を活かすことで、夏の白馬の価値を創造し「世界水準のオールシーズンマウンテンリゾート」を目指す戦略について、3回にわたりお伝えします。

第1回は、白馬村への転職、地域の強みを活かしたの食の誘致、世界水準のリゾート戦略についてお送りしました。
第2回は、V字回復のきっかけとなったヤッホースイング、投資戦略、地域の隠れた資源の活用についてお送りしました。
第3回は、「人」が資源、オリジナルの価値の創出、地域外との事業者との連携についてお送りします。

 

この記事の目次

 

白馬を愛してくれる「人」は新しいビジネスチャンスを生み出す鍵

我々がこれまで蓄積してきた冬山での物流ノウハウや知識は、新しいビジネスチャンスを産み出す重要な資源であると同時に、白馬を愛しているお客さんや支援してくれる関係者などの「人」も大切な資源として捉えています。

これまで3回開催している音楽フェスは、このような人との関係から生まれた企画です。
私たちが開催した音楽フェスは、スキマスイッチの時田さんとの関係から始まったもので、白馬が好きで通っていた彼とお会いしてから、私は白馬での彼の活動をお手伝いしていました。

ある時、私が音楽フェスをやりましょうと提案をしたところ、彼はキマグレンのISEKIさんをご紹介してくださいました。そして、ISEKIさんも白馬を気に入ってくださったことで、一緒に音楽フェスを開催することになりました。

こうした、人との縁から大きな企画が生まれることもあり、白馬を愛しているアーティスト、関係者などの「人」は、地域の隠れた資源と言えると思います。

また、白馬は夏期の売上を大幅に伸ばしていますが、冬期には12万人のお客さんが訪れていましたので、元々12万人のお客さんとの接触があります。夏の白馬の魅力を冬のお客さんにも感じてもらうことで誘客が可能になりますので、冬のお客さんは夏の白馬の隠れた資産と考えることができます。

「シティベーカリー」は模倣ではない独自の価値を創り出した

夏の白馬の魅力を感じてもらうためのアイディアを見つけるのは簡単ではありません。たとえば、ベーカリーの誘致などもゼロベースでパッと思いついたわけではなく、チームのメンバーとの議論や他の地域の取り組みを参考にして、考え出した企画です。

ゼロベースでアイディアを考えるのは容易ではないものの、他地域の先進事例をそのまま取り入れてしまうと、全く特色が無いものになってしまいます。例えば、美しい眺めのテラスを設けても、それが他の場所と似てしまうと、その魅力は半減します。

ただの展望台として終わらせず、我々は、美しい景色に加え、他では体験できない独自の価値を求めました。そして、シティベーカリーを誘致し、美味しい食事を楽しむというアイディアに辿り着きました。

我々は、眺めの良い展望台を作ったという意識ではなく、圧倒的に眺めが良いカフェを作ったという気持ちでいます。

景色の良いカフェは他にもあるのですが、シティベーカリーとの提携により、銀座の味を白馬でも提供できるようになりました。加えて、白馬の地元の食材を使用した独自のメニューも展開しており、これが我々の特色となっています。

 

オリジナリティを持った新しいものを追求する

我々の施設には、「マウンテンカート」というエンジンがついていない三輪車でコースを走るアクティビティがあります。このカートは山を滑り降りるもので、ドイツが発祥です。ヨーロッパのスキー場では導入が進んでいますが、日本ではまだどこも取り入れていないため、私たちはドイツの製造業者に直接連絡し、導入を決定しました。

私は新しい情報を敏感にキャッチし、ベンチマークとして取り入れることは悪くないと考えています。ただ、単純に模倣するだけというのは避けるべきです。

要は、良いものであれば真似ても良いが、真似のみでは魅力が失われる可能性がある。その場合、オリジナリティを加えてアレンジすれば、より良いものが生まれると考えます。良いものを参考にしつつ、オリジナリティを持った新しいものを追求することが大切です。

 

お互いの強みを活かしたパートナーシップで事業を進める

我々が事業を進めるうえで重視しているのは、外部のパートナーと良好な関係を構築し維持することです。そのためには、私たちの強みとパートナーの強みを正確に理解し、お互いの強みを活かせる契約の形態をしっかりと定めることが重要になります。

例えば、シティベーカリーさんとのフランチャイズ契約では、彼らの味、店舗運営のノウハウ、ブランド力などを活用する一方で、地元でのオペレーションは私たちが行っています。このようなフランチャイズ契約は、双方にとって最適な形態であったと考えています。

また、スノーピークさんとのパートナーシップは、シティベーカリーさんとは異なり、ほぼスノーピークさん主導の事業となっています。しかし、行政交渉や地元の土地の賃貸借などの業務については我々が協力しています。

他にも、アウトドアブランドのCHUMSとの事業や、チャバティというお店との新規出店などを行っていますが、それぞれお互いの強みを活かせるパートナーシップを構築しています。

 

さらなる発展のために、外部の資本や力を活用する

これまでご説明したとおり、我々は多くの投資を進めていますが、そのための資金調達も極めて重要です。

特にスキー場における最大の投資は、全長約2キロのゴンドラリフトです。リフトは既に37年が経過しており、輸送力も不足気味になっています。このゴンドラの投資は大きな金額ですが、更新をしないと、将来的にスキー場の運営が困難になる可能性も考えられます。しかし、最近の夏の収益増加を背景に、昨年9月に新しいゴンドラの投資を決定し、現在建設を行っています。

現在のキャッシュフローはこの大きな投資には対応できる状態にまで改善していますが、他にもリフトが7、8本存在し、レストランや地元の宿泊施設も年数を経て老朽化しています。このため、外部資本の協力を求めながら、それを山の再開発やメンテナンスに反映させることを考えています。

このように、冬季中心のビジネスが、夏季にも収益を上げることができるようになったことで、大きな投資も可能になってきました。今でも、ようやく持続可能なエコシステムを描けるようにはなりつつありますが、今後は、外部の資本や力を活用しながら事業を進めていく必要があると考えています。

 

「白馬岩岳マウンテンリゾート」は地域全体の集客装置

「白馬岩岳マウンテンリゾート」は、地域全体の集客装置であると私は考えています。我々がお客様を呼ぶことで、地域での宿泊、食事、ショッピングなどの消費が促進されます。我々が集客装置として効果的に機能し続けることが、地域の発展にとって重要なのだと考えています。

私たちが多くのお客様を呼び込むことは、地域全体が活気を帯びる原動力となります。逆に、お客様を呼び込むことができなければ、地域の衰退を意味します。私たちの役割は、四季を通じてお客様に白馬を十分に楽しんでいただける場を提供することだと捉えています。

これまでの取り組みを振り返ると、短期的な効果は得られていますが、長期的な滞在にはまだまだ繋がっていないと感じています。日帰りや1泊のお客様は増加していますが、白馬を宿泊地としての魅力を高め、地域の宿泊施設が通年で稼働する環境を整える必要があります。

今後の方針としては、地域全体を面として捉え、白馬を訪れるお客様が増えるような魅力的なコンテンツを更に提供していくことが重要だと思っています。

現在、「白馬バレー」という名前でのプロモーションを展開していますが、お客様が夏でも2泊、3泊といった長期滞在を希望するようなコンテンツの充実を目指しています。

 

 

執筆 アキナイラボ 編集部

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