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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。
#17 スノーピーク山井会長登場
#18 キャンプの力で日本を元気に!
今回のゲストは、ハイエンドな商品を展開する大人気アウトドアブランド「スノーピーク」の代表取締役会長、山井太さんです。
近ごろブームとなっているキャンプですが、それを牽引してきたと言っても過言ではないスノーピーク。圧倒的な先見の明を持つ山井さんは、一体どのように考えて経営をしてきたのでしょうか。
第1回は、キャンプ事業を始めようと思った理由についてお伺いしました。そこには山井さんの大好きなキャンプに対する「ある不満」が隠されていました。
第2回は、キャンプブームが過ぎて売上が落ちる中、スノーピークが取り組んだことについてでした。リアルイベントの企画からお客さんへのヒアリング、そこからの改善と、真摯にお客さんに向き合う姿が垣間見えました。
第3回は、キャンプの持つ凄まじい力と、これからの展望についてです。山井さんの圧倒的なキャンプ愛と、まだ大きな挑戦を続けていくんだというバイタリティが伝わってきます。
この記事の目次
絶大な恩恵!キャンプで人間性を回復しよう
キャンプには、素晴らしい力があります。
まずは個人的な人間性の回復です。焚き火があってそこに人が集まり、一緒にお酒を飲んだりお料理を食べたりというのは人間としての何か根源的な営みで、人との本質的な繋がりができるものだと思うんです。
例えばキャンプのイベントのとき、とあるファミリーが隣同志になったとします。するとまずはお子さんが一緒に遊び始めて、夕方には親同士も「一緒にビールでも飲みますか」と話し始めます。
キャンプ料理はダッチオーブンを使ってたくさん作るので、余ったものをお裾分けしたりもします。こうしてどんどんと仲良くなっていくのです。
本来日本人が持っていたコミュニティがキャンプで復活する
このような関係性は、本来日本が持っていたコミュニティの形なのではないかと思います。
うちの娘は田舎の古民家に住んでいるのですが、そこでコミュニティに認められたと感じた瞬間があって、それが「いつの間にか玄関先に農作物が置いてある」という時だったそうです。
日本人はこの時のコミュニティ感覚を潜在的に持っているのですが、都会のマンション住まいではこのようなことは起こりません。
それがキャンプの時には復活してきているのではないかと思うのです。これこそが人間性の回復ではないでしょうか。
お客さんのSNSを見ていると、キャンプで繋がった人たちがまた別のところで集まっているのをよく見ます。
キャンプがなければ一生会うこともなかった人たちが、一生の友達になっていくのです。それがたくさん繋がり、本当のコミュニティになっていきます。これはすごいことだと思います。
人生の価値そのものになるレベルの恩恵を、キャンプはたくさん与えてくれます。
だから我々はそれだけのことをしていると、800人の社員全員が誇りを持って働くことができています。
日本のキャンプ経験者はたった7%…もっとキャンプを広めたい!
しかし、これだけの力を持っているキャンプですが、キャンプを経験したことがある日本人は7%しかいません。93%がキャンプの魅力を知らないまま生きているということです。これはすごくもったいないことだと思いますし、国力にもモロに悪影響を与えているのではないかと思います。
それを裏付けるかのように、アメリカではキャンプ経験者はなんと50%です。そもそもヨーロッパからアメリカ大陸にやってきて、そのままキャンプ生活をして西まで行ったというのが国の成り立ちなので、国民性にキャンプがしっかりと刻み込まれているのです。
キャンプには大きな力があって、キャンプが根付いていけば人々は幸せになり国には活力がみなぎると信じているので、日本にももっとキャンプを広めていくのが我々のモチベーションの一つとなっています。
キャンプ人口を増やすためには、そもそもキャンプに興味のない人に向けてアプローチしていかなくてはなりません。
今はそのために「衣食住働遊」をコンセプトとして、キャンプに関連するアパレルやレストラン、さらには住宅を作ったりしてタッチポイントを増やし、キャンプに興味を持ってもらおうとしています。
アメリカのキャンプに勝機を見出し、拠点を変更!
実は今、アメリカのポートランドに軸足を移そうとしているところです。今はポートランドが世界的に流行っていますが、実はそれよりはるか前の1996年の段階からそこに会社を作っていたんです。
それは単にキャンプとはまた別の趣味であるフライフィッシングをやるのに向いていて気に入ったから、ということでした。
そこでも同じようにキャンプ用品を売っていたのですが、ランタンやコップなどの小物類ばかりが売れるんです。日本のメーカーはソニーを筆頭に小さく軽くするのが得意、というイメージを持たれていたためだと思います。
それでも5億円くらいは売上が出ていましたが、程なくして僕はアメリカ市場に興味を失い、長い間放置していました。
そんな中、5年ほど前に久しぶりにアメリカを訪れて業界の人と話をしていると「どうやら日本で我々がやってきたおしゃれキャンプのニーズがこれから急増するかもしれない」と考えるようになりました。
実は今のアメリカのキャンプシーンは、僕が嫌だったあの30年前の日本のキャンプシーンと全く同じなのです。色々と工夫をしようと思っても、結局は安いテントを持って行って貧しく過ごすことしかできません。
だからここからアメリカで本格的に力を入れて頑張れば、今まで日本でやってきたことと同じようなことができるのではないかと思い、軸足を移す決断をしました。
すでにブランディングも色々と変えたりして、早速結果も出てきていて、去年は15億円くらいの売上になりました。もしかしたら来年・再来年には日本で上場した時くらいの規模にはなっているかもしれません。
コロナが重なってしまって今は日本にいるのですが、落ち着いたら移住して本腰を入れて頑張っていきたいです。