about
「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。
今回のゲストは、ロボットプログラミング教室「ロボ団」を展開する「夢見る株式会社」の代表取締役、重見彰則さんです。重見さんのお話を3回に分けてご紹介します。
第1回目はロボ団の起業についてを中心にお聞きしました。ロボットプログラミングという新しい市場で起業した重見さん。その原体験は子どもの頃のある「おもちゃ」にありました。
子どもの習い事の決定権を握っているのは母親が多いそうですが、実はいまの子どもの親世代にプログラミング経験者は少なく、ニーズがないそうです。第2回目は、そんな親をどう口説くのか、詳しくお聞きしました。
この記事の目次
プログラミング教育のニーズは親世代には存在しない
2020年から小学校でプログラミング教育が必修化され、いろいろな企業がゲームプログラミングやロボットプログラミング教室に参入して、市場が一気に広がっているように見えますが、子どもたちの習い事にプログラミングのニーズはそれほどないと思っています。というのも、子どもに習い事をさせたい親自身に、プログラミングのニーズがないからです。
子どもの習い事を選ぶとき、親は自分の幼少期の経験に引っ張られます。自分が小さい頃に水泳をやっていたので子どもにも水泳をやらせようとか、自分は英語が苦手で苦労したので子どもには英会話教室に通わせようというようにです。
いまの親世代はだれもプログラミング教室には通っていませんから、プログラミングといってもピンときてくれません。
親にとってはプログラミング教室は顕在しているニーズではなく、子どもがやりたいと言ってから見えてくるニーズです。子どもが親に「やりたい」と言い、その親が「子どもの好きなことをやらせたい」「子どもの好きなことを伸ばしたい」親だったら、そのニーズにマッチします。
親も子供にプログラミングをやらせたいと思ってもらうために
我々のターゲットは小学校低学年の子どもですが、多くの親は低学年の間に子どもの可能性を知るためいろいろな習い事にチャレンジさせます。ロボ団の場合、最初は「子供がやりたい、親はそんなにやらせたくない」習い事ですが、親に体験会に来てもらうことで「親もやらせたい」という領域にしようと努力しています。
私たちの集客はウェブやポスティング、チラシなどいろいろなチャネルで行いますが、その中でもっとも反響率が高いのが学校の前でチラシを配る方法です。
学校前で塾のチラシをもらって喜ぶ子どもは少ないでしょうが、私たちがロボットを持っていってチラシを配ると子どもたちは群がってきて、チラシを欲しがるくらいになります。そして、「体験会をやっているから、お母さんにお願いして申し込んでね」というふうに伝えて、親子で体験会に来てもらい教室に入ってもらう、というのがもっとも多い流れです。
プログラミングは算数や理科の知識を活用込みで学べる魅力がある
体験会に来た親は、たいていの人が最初は「レゴで遊ぶだけだろう」と斜に構えています。しかし説明を受けてロボットを動かす過程に含まれる算数や理科の学習要素に気づくと、目の色が変わります。
たとえば円周率です。子どもたちは学校や塾で円周率を学んでも、日常生活で円周率を使うことはありませんから、知識として覚えるだけです。
しかし私たちの教室ではタイヤを使ってロボットを動かしますから、タイヤを何回転させればロボットをどのくらい動かせるかを考えなければいけません。それには円周率を使った計算が必須になります。
多くの親は、活用できない算数の知識に意味があるのかと疑問に思いつつ勉強してきた経験があるため、ロボ団で活用込みの学習ができると聞くと、かなり刺さるのです。
子どもたちとしてもせっかく作ったロボットは動かしたいですから、そのために算数の要素を学ぶ必要があるというと、ゲーム感覚で乗り越えていきます。
子どもたちにとって、理数系の知識はゲームをクリアするために必要な武器であり、その活用は武器の使い方を学ぶことというイメージです。
解約率は驚異の8%! 子どもたちはやめたがらない
ロボ団ではそんな学び方を提供していますから、子どもの方から辞めたいというケースはほぼなく、年間の解約率は8%ぐらいです。私たちのカリキュラムは5年分あり、平均の利用期間は3~5年です。
最初に作るロボットは簡単なもので、プログラミングもコードを書くものではなく、ビジュアルプログラミングというアイコンを組み合わせて作るプログラミングから始めて、プログラミング的思考を身に付けることを学んでもらいます。
そこから徐々にレベルが上がって算数や理科の要素も含まれたものになり、4年目の途中から5年目にかけてはプログラミング言語のpythonを習得できるカリキュラムになります。最後はロボットも使わず、pythonで自分のオリジナルのアプリケーションを作ります。
卒業制作のテーマは、「身の回りの課題を解決するサービスを作る」というものです。
ロボ団で学ぶことの効果は既に実証されている
習い事を選ぶのは、お父さんよりもお母さんが主導権を持つことが多いので、お母さんにどう刺さるかが重要です。そこで私たちはGMOグループに協力してもらい、ロボ団に通っている約1,000人の生徒と、通っていない1,000人の生徒に調査を行いました。
その結果、ロボ団に通っている生徒は通っていない生徒と比べて、1年、2年と経過するうちに算数や理科のテストの点数が良くなっているという結果が出ました。同時に、通っている生徒たちは算数や理科への苦手意識が減少していることもわかりました。
この調査結果は「子どもたちがロボ団の学び方によって理数系の学習に前向きになっていること」を裏付けるものになりましたし、お母さんたちにもかなり刺さるものになりました。
というのも、お母さんたち自身が算数や理科に苦手意識を持っていて、自分の子どもには理数系を好きにさせたいと思っている人が多く、「ロボ団に任せれば子どもが理数系好きになるかもしれない」という発想になるからです。
もうひとつポイントがあります。特に男の子に多い傾向がありますが、小学校低学年の子どもは友達と協力して何かに取り組むことはなかなかできませんし、一つのことにしっかり取り組む集中力もまだありません。そういう子どもたちがロボ団のペアラーニングを続けることで、人と協力して物事を進める力や、集中する力が身に付くのです。
こうしたポイントを親に伝えることができれば、ロボ団はほかの習い事に勝てると思っています。
ロボ団の生徒たちは国内大会、世界大会で実績を残している
高校野球だと甲子園に何回出たかがその学校のブランドになりますが、ロボットプログラミングの世界にも大きな大会があり、ロボ団はそこで実績を残しています。
その大会は「ワールドロボットオリンピアード」というロボットコンテストで、世界大会まで行われています。2021年の日本大会ではロボ団の生徒たちが小学生、中学生の3部門で優勝、世界大会にも日本代表として3年連続で出場していて、21年大会はオンラインでしたが、世界5位に入ったチームがありました。この種の実績は、ロボットプログラミング教室ではロボ団がトップだと思います。
実績はほかの教室と差別化できる部分ではありますが、実はこういう実績が刺さるのは一部の人だけで、多くの親にはあまり刺さりません。というのも、ほとんどの親にとっては、「うちの子はそんなの無理です」となってしまうからです。ちょっとtoo matchな情報なのだろうと思います。
プログラミング教室としての差別化。“子どもの成長が目に見えるアプリ”
他の教室との差別化という意味では、子どもがロボ団でどう成長していくのかを、感覚値ではなく定量的にお伝えすることが大事だと思っています。
しかし、子どもたちがプログラミングをどのぐらい理解できているか、どのぐらい成長したかというのは、普通の親はプログラミングを知りませんから、なかなかわかりません。教室の帰りに、親から「うちの子、最近どうですかね」と聞かれても、たいていの教室は「頑張ってますよ、楽しそうにやってますよ」ということくらいしか言えないのです。
一方で私たちは、プログラミングを知らない親でも子どもたちの成長が見えるようにと、「ロボ団アプリ」というアプリを用意しています。
ロボ団アプリでは教材がすべて見られるようになっていますが、それだけではなく、毎回の授業の最後に子どもたちにアプリ上のクイズをやってもらい、その正解度合いによって子どもたちの理解度や得意領域、不得意領域などが全部可視化できるようになっています。そのアプリを見れば、親も、子どもがプログラミングについてどのくらい理解しているかを定量的にわかるというわけです。
子どもたちの理解度のデータが定量的に見られるのは、指導する私たちにとっても重要です。先生それぞれの感覚で指導するのではなく、データを根拠にした指導ができ、指導の質を保つことができるからです。こういうことができるロボットプログラミング教室はロボ団だけだと思います。
今回のお話はここまでです。ロボ団は起業から間もなくフランチャイズ化をしましたが、全国に店舗が広がる一方、なかなか利益が出ないという苦労があったそうです。
次回はそんなお話をお聞きします。