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お店ラジオ 2024/09/05 2024/09/05

大勝ちはないが負けはない

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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。
小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を再編集したものです。

今回のゲストは、厳選素材やトップシェフのメニュー、洗練された空間デザインにこだわった飲食店を展開し、食業界を夢のある業界へと変えていく飲食企業として、様々な業態の飲食店を経営する飲食事業やプロデュース、SNS・インフルエンサーマーケティングなどを行う、株式会社ZOT代表取締役 黒瀬 実寿希さんです。

学生時代から独立を希望し、負けないために飲食業界を選択、男性向け飲食店の激戦区への女性向けビストロの出店から、独自のマーケティング戦略と出店戦略、お客様とのコミュニケーションによるリピート率の向上、コスパと付加価値の魅力向上など、独自の経営戦略などについて、3回に分けてお送りします。

第1回は、ビストロ出店と負けない戦略、リピート率向上やコストについての考え方などについてお送りしました。
第2回は、リピーターを作る会話術や店舗の拡大、クラフトビール店のコスト戦略などについてお送りしました。
第3回は、多様な業態への挑戦やSNSの活用、カメラとデータによるコスパ追求などについてお送りします。

この記事の目次

多様な業態への挑戦

出店については、基本となる戦略がある一方、アプローチは業態によって異なります。

例えば、ラーメン屋であれば主なターゲットは20代前半から30代前半の男性です。そこで私たちは、ラーメン屋を出店する際には、女性をどれだけ取り込むかという点に注力することにしました。

具体的には、湯切りをする姿が見えないようにキッチンを隠し、カウンターが飛んだ汁が目立たないように黒色にし、コーティングするなどの工夫をしました。名前についても、「○○屋」という名前ではなく、可愛らしいキャッチーな名前にしました。

価格設定については、周りのお店を徹底的に調べます。
どのお店に何人入っているかを調査することで、毎週何曜日にどのお店にどれくらいのお客様が入っているかがわかりますし、席数を調べることで回転数がわかります。

さらに、男女比や年齢層まで調べることで、売上を推計することもできます。人気のお店には実際に食べに行き、直接店員さんに聞くこともあります。意外にも、聞けば教えてくれることが多く、その調査結果を元に、そのお店よりも低めの値段設定をする戦略を立てました。

それぞれの業態に合わせて工夫を重ね、ビストロからクラフトビール、ラーメン、そして鰻や餃子と、全く違う業態のお店を出店してきました。

 

リサーチによる鰻屋開業の選択と戦略

コンサルティングをする中で、素人だけれども愛知県で飲食店を開業したいという依頼がありました。私たちは、その依頼者が希望する町で成功している業態を全てリサーチしました。結果、残ったのは鰻屋、ラーメン屋、焼肉屋でした。

そして、初期投資の観点からリスクを評価しました。
焼肉屋は初期投資が大きく、素人には難しいと判断しました。次にラーメン屋を検討しましたが、単価が低く、鰻屋の2倍のお客様を呼ぶ必要があるため、競争に勝つのが難しいと感じました。最終的に、鰻屋を選択しました。

選択理由は他にもあります。ラーメン屋では複数の工程があり、野菜のカット、肉の火入れ、スープ作りなどが必要です。しかし、鰻屋では焼く工程が中心で、シンプルな作業が多いと考えました。

そこで、知り合いの鰻屋に協力を仰ぎ、焼く工程を数値化しました。温度や時間を計測し、数百回の試行の結果、「素人でもいける」という結論に至ったのです。

お店の改修にあたっては、お客様が調理風景を見ないように工夫しました。
誰が焼いているか分からないようにし、価格も周辺の鰻屋の半額に近い価格で提供できるように設定しました。

 

SNSの活用による若い世代へのアプローチ

鰻は通常、夏がメインシーズンであり、売上は夏に向かって上昇し、冬に近づくと下がります。このため、多くのお店は冬の売上をどのように維持するかが課題となり、鰻の価格は高くなりがちです。

私たちは、通年売れるお店を作ることを目指し、鰻を安く提供することで通年売れると判断しました。

鰻屋の客層は主に40代から60代で、若い世代はほとんど来ません。
そこで、若い世代を取り込むために、SNS向けの商品として鰻重を作りました。若い世代向けといっても、鰻が山盛りに乗っているだけです。

しかし、私たちはSNSマーケティングに強みがあり、戦略的にSNSで発信することでバズらせ、若い世代を引き寄せることに成功しました。

こうして、メインの客層に加えて、通常の鰻屋が取り込めない若い世代をも取り込むことができ、結果として、季節的な変動は多少あるものの、個人店の鰻屋に比べて冬でも圧倒的に利益を上げることができました。

 

SNSマーケティングとバズる商品の作り方

SNSが流行り始めた頃、多くの飲食店はSNSを軽視していました。
しかし、SNSを活用することで、遠方からもお客様を引き寄せることができ、マーケットの範囲は広がります。

SNSで受けるために、受けるだろうと思うポイントを文字化し、トライアンドエラーを繰り返しながら仕組み化しました。受けるポイントは時代によって変化するため、常に最新のトレンドを把握し、プロに聞いて対応しています。

私たちは社内に料理開発や広告などの部門を持たず、その分野で強い外部の会社に依頼しています。これにより、各分野の専門家の知識とスキルを活用し、より効果的なマーケティングを行っています。

バズる商品とバズらない商品はジャンルによって明確に分かれます。
例えば、アルコール系の商品は若い層に受けにくいため、ほとんどバズりません。一方で、大盛りや見た目のインパクトがある商品はバズりやすいのです。

SNSマーケティングを成功させるためには、時代のトレンドに敏感であり、プロの意見を取り入れ、バズる商品を意識的に開発することが重要です。

 

コスパの追求とSNS活用

新店舗をオープンする際には、ビラ配りや挨拶回りに加えて、SNSも積極的に活用しています。SNSの活用により、いきなり満員にはならないものの、売れ始めるまでの時間が大幅に短縮され、約半年で軌道に乗り始めるようになりました。

SNSでは観光スポットのように一時的に話題になることが多く、リピーターになりづらいのではないかという懸念があります。

しかし、そもそもお店に価値があればリピーターになってくれると考えています。そのために、私たちは基本的にコスパを追求しています。例えば、ラーメン屋では卓上に海苔や卵を食べ放題で提供し、コスパの良さを実感してもらう工夫をしています。

商品の種類を広げず、ラーメンは1種類のみとしています。
これにより、工程が少なくなり、食材の発注量が多くなるため、価格交渉がしやすくなります。

ラーメンの種類はマーケットボリュームに合わせて決定し、最も需要がある醤油ラーメンを選びました。売れている醤油ラーメンのお店を調査し、売れるポイントを文字化して研究しました。

需要がある商品でコスパを追求することで、大勝ちはしないかもしれませんが、負けはないと考えています。負けないからこそ、そのエリアで1位になれるのです。

 

カメラとデータ分析でオペレーションを最適化

多くの業態を手掛けていると、1店舗にかけられる時間が限られます。

そこで、私たちは店内にカメラを設置し、オペレーションを分析しています。オペレーションが劣化していると感じた場合、その原因が商品の問題なのか、人の問題なのかを特定するため、スタッフの動きをカメラで撮影し、スポーツチームのフォーメーションを分析する会社に依頼して1か月ほど追跡・分析しています。

大手のように各店をマネジメントするスーパーバイザー(SV)を置くのではなく、私たちは機械や外部のプロに頼ることにしています。人は必ずしも強くないという前提でお店を作り、分析も外部に委託し、そのデータを基にお店を改善しています。

改善のためのKPIとして、作業の回数を重視しています。
例えば、テーブルのお皿やグラスを下げる作業の効率化を図ります。料理の提供時間の分析も行い、オーブンで調理するメニューが効率を下げていると判断した場合、オーブンの使用を減らし、他の場所で作れるメニューに変更します。

料理やお店の経営に精通した店長が感覚で行うことを、私たちはカメラを使って科学的に行うことでコスパを追求しています。

このように、データに基づいたオペレーションの最適化を行い、効率的な店舗運営を実現しています。

 

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