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お店ラジオ 2023/06/16 2024/03/14

ソースにこだわるお好み焼き屋

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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を未公開放送分も含めて再編集したものです。

今回のゲストは、バーやお好み焼き屋、テイクアウト&デリバリー、ゴーストレストランなど新しいスタイルでの飲食店を展開されている株式会社祐貴那 代表取締役社長のはるな愛さんです。はるな愛さんが上京して最初のバーを出店されてから子ども食堂を展開されるまでを3回に分けてお送りします。

第1回は、上京からバーの出店、“エアあやや”の誕生までをお送りしました。
第2回は、お好み焼き屋の出店についてお送りします。

 

この記事の目次

  1. 藤原紀香さんとの出会いとお好み焼き屋
  2. ソースにこだわった自分の満足できるお好み焼き屋をつくる
  3. 好きだと思えることをやると、それが好きな人が集まってきてくれる
  4. 東京の単価の高さが理想の材料をそろえる原価の支払を可能にしていた
  5. 立地をカバーするために良い味と空間を提供する

 

藤原紀香さんとの出会いとお好み焼き屋

お店を始めてしばらく経つと、芸能人の方にもご来店いただけるようになっていました。

あるとき、別のお客さんを通じて藤原紀香さんが来てくださいました。最初に紀香さんがいらっしゃったのは、ファッションパーティーの後で、ドレスを着て三軒茶屋のあの雑踏を歩いて来られました。

ドレス姿でお店に入って来られた藤原紀香さんは、「ごめんなぁ、このまま来てもうたから、着替えさせてぇ。」と言ってトイレに入ろうとされました。和式のトイレだと伝えると、「大丈夫、大丈夫。」と言ってトイレに入り、ジーンズとTシャツに着替えて、ドレスを袋に入れて出て来られました。そして、「よろしく紀香です。このお店の話は聞いていたんだよ。」ととても気さくに話してくださいました。

そこから私たちは意気投合して、私を妹のように可愛がってくれるようになったのです。いろいろお話しさせていただく中で、紀香さんは「お好み焼き屋さんを出したら良い、関西の人を連れて味見にいくから」と言ってくださいました。

彼女は本当に面倒見がよく、たくさんのアドバイスをくれました。そういった経緯もあり、その後私は2軒目のお店としてお好み焼き屋を出すことになります。そのお好み焼き屋は、家族で食べに来てもらえる、大阪で両親がやっていたようなお好み焼き屋で、カウンターとボックスが二つの小さなお店でした。

その時、私はまだ芸能人としては無名でしたが、芸能の仕事と飲食の仕事は共通点が多く、やっていることは同じだと感じていました。お客様に楽しんでいただける空間を提供することは、どちらの仕事においても大切なことです。私は気持ちの良い空間づくりを意識するようになりました。

例えば、おしぼりはこまめに変えないと生臭さが出てしまうため、常に清潔なものを提供するようにしましたし、私が嫌だと感じることは、経費がかかってでも徹底的に改善していくことを心がけるようになりました。

 

ソースにこだわった自分の満足できるお好み焼き屋をつくる

お好み焼き屋の出店は、藤原紀香さんからのアドバイスも理由の一つですが、東京に自分が満足できる関西風のお好み焼き屋が無かったというのも大きな理由です。

私自身、両親がお好み焼き屋を経営していたというのもあり、お好み焼きのソースに対しては、強いこだわりを持ってます。

自分のお店を出すのであれば、私自身が美味しいと感じられる、自分の好みに合ったお好み焼きを提供したいと考えました。ですから、私のお店では、一般的な市販のソースではなく、独自のブレンドをしたソースを使うことにしました。ソースの味を決める時には様々なお店に行き、鉄板の前に座って、どのお店がどんなソースを使っているのかを調べました。お店の中にソースの情報がなければ、ゴミ箱の近くでソースの箱を探すこともありました。

ただ、関東や東京ではあまり馴染みの無い関西風の味を提供して、はたしてお客さんが来てくれるのかどうかは心配していましたが、私のバーにはたくさんの関西人が来てくださっていて、お好み焼きの会話をすることが頻繁にあったので、東京にもニーズはあるだろうと考えていました。

 

好きだと思えることをやると、それが好きな人が集まってきてくれる

オープン当初は大変でした。誰も見つけられないような路地裏の店舗だったので、とにかく必死でビラ配りやポスティングをしました。そして、“焼き“についても徹底的に研究し、2ヶ月ぐらいはスタッフと一緒に何度も”焼き“の練習を繰り返しました。

また、関西出身のお客様に集まってもらって、どうしたらいいのかを一緒に考えていただき、たくさんのアドバイスをもらいました。

そうするうちに、徐々に美味しいと言ってくれるファンが増えていき、リピートしていただけるようになったのです。今では、嬉しいことに、結構お好み焼きが美味しいお店として認知していただけています。

バー、そしてお好み焼き屋を始めてみて、やはり自分が「好き」とか「やりたい」と思えることを選ぶこと、やってみることが重要だと感じています。好きだと思えることを続けていると、それが好きな人が集まってきてくれます。また、好きだと思えることに対しては、自身の熱量も高く維持できると思います。

 

東京の単価の高さが理想の材料をそろえる原価の支払を可能にしていた

私には、「どうしてもこの味にしたい」というこだわりがあり、コストはかかるのですが、粉もソースも全て大阪で独自にブレンドして東京まで輸送してもらっています。一般的に粉物は儲かると言われているように、実際の所、原価率が低いので多少の運送コストがプラスでかかったとしてもやっていけています。

原価率の低さ以外にも、この業態が成り立つ理由がもう1つあります。それは、東京の単価の高さです。

大阪では、お好み焼き定食があるように、日常的な食事の感覚でお好み焼きを食べるので、なかなか単価が取れません。東京はそうではありませんので、大阪に比べて比較的客単価は取れます。たとえば、東京のメニューではお酒とつまみを少し入れて、締めをお好みや焼きそばにしてもらうイメージでメニューを作っていて、客単価が2,000円台後半くらいで想定しています。

また、お好み焼き屋のメリットとして、季節要因が他の飲食店に比べて少ないということもあるかもしれません。牛も豚も使いますし、なんでも入れることができるので、具材が高騰しても、他の具材を使う事である程度は調整ができます。

しかし、物価に左右され難いとはいえ、最近は全ての物価が上がっていますから正直大変です。

量で調整することも考えてはみたのですが、丸い鉄板の上で量を少なくしたら余白が広くなってしまい、量で調整したことがわかってしまうのです。ですから、今の料金でいけるところまでは頑張ろうと思っています。

 

立地をカバーするために良い味と空間を提供する

お好み焼き屋は、1店舗目がそれなりにうまくいき、1年ほどして桜新町に2店舗目を出店しました。ちょうど“エアあやや”が広がった時期で、バーがある三軒茶屋から近くて、家族連れや一人暮らしの人が多いエリアを選びました。

物件を選ぶ基準は、路面店であることと家賃です。2店舗目はカウンターがあって、その後ろにテーブル席が2つある程度の広さのお店でした。家賃が安いと暇な時があったとしても、コストを抑えられるだろうと思いました。何が起こるかわからないので、家賃が高いと不安になってしまうんです。

もちろん、家賃が安くなると立地が良くないところになってしまうという問題はありますが、立地が悪くても来るお店には来ますし、私たちも美味しいお店があると、多少立地が悪くても行くと思います。

でも、立地が悪いところでお客さんを惹きつけるためには、味と空間が大切だと思っています。

空間とは、内装だけではなく、サービスも含めてのことです。例えば、ビールを頼まれたとすると、できる限り早くおかわりをお出しするとか、お皿を下げるタイミングなどです。話をさえぎってしまうようなタイミングでお皿を下げないように気をつけるなど、サービスを含めた空間づくりについては細部にまでこだわっています。

やはり、お客様の視点に立ち、何を求められているのかを考えることが大切です。まさにそれが、芸能の仕事と飲食の仕事の共通点だと思っています。

 

第2回は、お好み焼き屋の出店についてお送りしました。
次回は、ゴーストレストランという新しい業態へのチャレンジについてお送りします。

 

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執筆 横山 聡

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