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お店ラジオ 2024/04/18 2024/04/18

“パン以外”も豊富に扱うパン屋さんの商品戦略と分析手法とは

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「お店ラジオ」は、店舗経営にまつわるトークラジオ番組です。小売店や飲食店など各業界で活躍するゲストをお招きし、インタビュー形式でお届けしています。この記事は、InterFMで毎週日曜日にお送りしている「お店ラジオ」で放送された内容を再編集したものです。

今回のゲストは、東京での挫折から長野へ移住し、将来の店舗展開のためのプロモーションとして移動販売でパン屋を創業、こだわりの商品ラインナップでこだわりのお店を展開し、独自のプロモーション戦略により地域を元気にするお店、わざわざを運営する、株式会社わざわざ 代表取締役 平田はる香さんです。

挫折から長野へ移住し、パン屋を創業、そして実店舗とECサイトを運営。わざわざ独自の値付けと商品ラインナップの戦略。こだわりの商品ラインナップからわざわざ独自の透明なブランディング戦略、大ヒット商品「残糸靴下」、地域へ貢献したいという思いなど、3回に分けてお話しいただきます。

第1回は、長野へ移住しパン屋を創業、丁寧な告知と、商品ラインナップ戦略についてお送りしました。
第2回は、健康志向への転換、県外プロモーション戦略、こだわりの商品ラインナップについてお送りしました。
第3回は、商品ラインナップ、わざわざのABC分析、残糸靴下、地域への貢献についてお送りします。

 

この記事の目次

 

選択肢を広げた商品ラインナップ

私たちは商品を無理に勧めるのではなく、私たちが商品をどのように理解し、どこに魅力を感じているのかをお客様に伝えます。
私たちは決してその商品が1番であるとは考えていませんので、お客様がその商品を気に入らない場合であっても、それ以外の商品を選択できる品揃えが大切だと思っています。

以前、私がとても疲れていた時に、家族のご飯を作らなければなりませんでした。簡単にインスタント食品で良いと思ったのですが、当時のお店には昆布と煮干ししか置かれていませんでした。その時に、とても疲れている今、大切なのは寝ることであるはずなのに、何故出汁を取らなければならないのかと思ったのです。休むことが必要な時くらいはインスタントを選べるような商品構成の方が良いのではないかと思い、商品の選択肢を増やすために、お店に良質なインスタント商品も置くことにしたのです。

また、お客様からリンゴジュースにクエン酸が添加されているという指摘を受けたことがありました。しかし、クエン酸を添加しないとジュースが茶色くなってしまうため、安全性と品質の維持のためにはクエン酸を入れた方が良い場合もあるのです。

食品においては、添加物が入っていると一律に否定されることがありますが、一つ一つの商品を見極める必要があります。TPOに応じて、添加物が必要な場合もあると考えますが、その理解の上でお客様が選択できるようにすることが重要だと考えています。

 

需要と供給のバランス

お店には、約1万5,000点の在庫があります。以前は需要と供給のバランスが悪く、常に何かの在庫が切れている状態が続いていました。大量かつ常時生産可能な商品だけを扱っているわけではなかったため、欠品が多発し、土地も倉庫も不足していたため倉庫の拡張が難しかったためです。

しかし、メディアなどに取り上げられると需要が上昇し、倉庫を拡張することにしたのですが、拡張するごとに売上も増加していきました。

そして、最終的には、自社で倉庫を建設した時に、売上が1億円に達し、初めて需要と供給のバランスが取れた状態になり、在庫が潤沢になりました。そして、それが需要をさらに拡大するきっかけとなりました。特に最近では、コロナ禍によりECの売上が急増し、3億円を超えました。

 

わざわざ独自のABC分析

私たちがABC分析を正しく理解しているかどうかはわかりませんが、私たちなりのABC分析を行っています。

最初に、利益率が最も高いものや、年間の総売上から仕入額を差し引いた純利益が最も大きいものを重視し、1位から150位までの順位を付けました。

また、販売個数が多いものもピックアップしました。販売個数が多いということは、顧客が関心を持っている可能性が高いと考えられます。価格は安いかもしれませんが、その商品を求めて店舗を訪れ、他の商品も購入する可能性があります。そのような購買機会を提供してくれる商品も私たちは重視していて、これらの商品もエースに区分されると考えました。

さらに、エース商品には含まれなかったものの、単純に売上高が高い商品を3つの基準でAクラスと判定しています。ほとんどの場合、Aクラス商品は利益と販売個数、売上で評価しています。

 

わざわざの人気商品は「残糸靴下」

当店の商品の中で、10位以内に入っている商品にお味噌があります。使用頻度が高いため、非常に人気があります。

また、意外なところでは腹巻もあります。当店で販売しているシルクとコットンの腹巻は年間数千枚も売れていて、男性にも女性にも利用されており、特にリピート率が高い商品です。この商品は開店当初から非常に人気がありましたが、毎年しっかりとプッシュすることで、顧客からのより多くの支持を得ています。

今では多くの方々が日常的に使用し、一度使うと肌触りや快適さに満足し、継続して購入してくださっています。

さらに、わざわざで最も人気がある商品が靴下です。靴下は私たちのオリジナル商品の製造でお世話になっている長野県の工場で作っている商品で、この工場の余剰糸を使用した「残糸靴下」というオリジナル商品が大ヒットしているのです。

 

課題から生まれた「残糸靴下」

私たちのオリジナル商品を作っている工場が長野にあり、靴下もそこで作ってもらっています。工場は、アウトドアメーカーの靴下をOEMで製造している会社なのですが、製造している靴下の余剰糸の相談を受けたことがありました。アパレル業界ではシーズンごとに素材が変わるため、余った糸が再利用されにくく、倉庫のスペースを圧迫しているとのことでした。

そこで、私たちは工場の方と一緒に、工場の生産構造を見直し、余剰糸の在庫管理を共有し、定期的な連絡を行うシステムを導入しました。そして、その在庫である“残糸”を活用して、バイカラーの靴下を生産することにしました。

色をAとBで分け、バイカラーの靴下を生産するアイデアは、残糸の在庫量や一部の機械で可能であることから生まれました。結果として、元々マイナスと考えられていた余剰糸を活用した製品は大ヒットしました。

この取り組みにより、年間2万足もの靴下が売れ、工場の倉庫は空になりました。しかし、この成功により、糸の不足という逆の問題が生じてしまいました。

 

地域へ貢献したいという思い

昨年、山の上にあったお店を山の麓に移動させ、「わざマート」というコンビニと直売所型の店舗を展開しました。これは、これまでごく一部の人しか知らなかったわざわざというお店をより多くの方々に知ってもらおうという思いから出店したもので、今後は長野県内に10年で32店舗に増やす計画を立てました。

32店舗という数は、年間で3〜4店舗程度のペースで増やしていく計画を立てており、年間の出店数と地域の選定とを考慮したうえで検討して出た数字になります。現在は、移住者の多い地域や人口減少の少ない地域を重点的に調査し、そこにわざマートを展開していきたいと考えています。

地方では、選択肢が限られることが一般的ですが、日常的に良い買い物ができるかどうかが、移住を考えたり、地域に住んでみたいと思ったりするきっかけになると考えられます。そのため、私たちは地域のために、地域性の高い商品を多く取り扱い、地元の生産者が提供するものを積極的に取り入れることで、地域にお金が循環する構造を作りたいと考えています。

 

小売業における商品の多様性と質の重要性

私たちのこうした取り組みに対して、お客様からの反応は非常に好評です。
旅行客の方々ですと、長野の特産品を手に入れたいと思った際に、当店で手軽に購入できることを高く評価してくださっていますし、地元のユーザーは、全国各地から集まった品揃えに満足しています。

当店の商品ラインナップは非常に独特で、クラフトビールやナチュラルワインなど、全国各地の優れた商品が揃っています。また、お菓子なども様々な地域のものが販売されています。

これらの商品を選定するのは大変ですが、商品の質が魅力であることが小売業において最も重要な要素であると感じています。お客様が楽しめる、新しい商品や体験を提供することが、店舗の魅力を高めるポイントだと考えています。

商品の多様性は仕入れや在庫管理を複雑化させますが、それを克服してチェーン展開を行いたいと考えています。

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